電気電子系 News
文部科学省は、去る4月7日に科学技術に関する研究開発、理解増進等において顕著な成果を収めた者として、令和5年度科学技術分野の文部科学大臣表彰の受賞者を発表し、東京工業大学 工学院の波多野睦子教授(エネルギーコース 主担当)と岩﨑孝之准教授(電気電子コース 主担当)が科学技術賞(研究部門)を、荒井慧悟准教授(電気電子コース 主担当)が若手科学者賞をそれぞれ受賞しました。
表彰式は、4月19日に文部科学省(東京都千代田区)において行われ、波多野睦子教授が科学技術賞(研究部門)の代表者として永岡桂子文部科学大臣より表彰状を授与されました。
科学技術賞(研究部門)は、我が国の科学技術の発展等に寄与する可能性の高い独創的な研究又は開発を行った者を対象とし、令和5年度は50件(62名)が受賞しました。
若手科学者賞は、萌芽的な研究、独創的視点に立った研究等、高度な研究開発能力を示す顕著な研究業績をあげた40歳未満(出産・育児により研究に専念できない期間があった場合は、42歳未満)の若手研究者を対象とし、令和5年度は101名が受賞しました。
東京工業大学関係者の令和5年度科学技術分野の文部科学大臣表彰受賞者は、科学技術賞(研究部門)が波多野睦子教授、岩崎孝之准教授を含む教員4名、若手科学者賞が荒井慧悟准教授1名の5名でした。
東京工業大学の受賞者については、 東工大ニュース「東工大関係者5名が令和5年度科学技術分野の文部科学大臣表彰を受賞」をご覧ください。
ホール素子などの古典センサには感度および空間分解能に限界があり、超伝導量子干渉素子に代表されるこれまでの量子センサには、動作温度・ダイナミックレンジ・マルチモダル性などの課題がありました。これらの課題を解決できる高性能センサシステムの構築が求められていました。本研究では、ダイヤモンド中のスピン量子ビットである窒素-空孔センタを用いた室温動作固体量子センサにおいて、センサ材料の高度制御形成手法および広ダイナミックレンジ・マルチモダルな量子計測技術を構築しました。本研究により、電気自動車の実走行距離延伸につながる電流と温度の高精度同時モニタリング、高機能診断に貢献する生体磁場や細胞などの高空間分解能な磁場イメージング、さらに故障予測につながるパワーデバイス内部の電場計測などを実現しました。本成果が、量子技術の発展、物性および生命現象の解明などの基礎研究の重層化につながるとともに、カーボンニュートラル、安心・安全社会を実現するためのグローバルな社会課題の解決に寄与できるよう、更に尽力して参りたいと存じます。
今回受賞対象となりました研究は、2011年度から研究室を立ち上げ、学生の皆さん、産官学の共同研究者、支援者など多くの方々のご協力の基に得られた成果であり、関係者各位に心より御礼申し上げます。
物理量を計測して定量化をするセンサは、私たちの社会を支える基盤技術です。数多あるセンサのなかでも、ダイヤモンドを用いた量子センサは、核スピン検出や細胞イメージングなどのミクロスケールから、電池の電流計測や哺乳類の生体磁場計測などのマクロスケールに至るまで、さまざまな応用が期待されています。ところが、これらの応用の実現には、感度、空間分解能、視野、ダイナミックレンジの性能向上が避けて通れません。本研究では、磁気共鳴の原理や幾何学的位相、圧縮センシングといった他分野のソフト・ハード技術を当該分野へ複合的に適用し、上記の4性能を大幅に改善しました。その結果、細胞や心磁を扱う生物学に強力なイメージング・ツールを提供し、さらには量子計測と幾何学、情報科学との融合領域を開拓するに至りました。以上の一連の成果は、国内外の多くの共同研究者、協力者の皆さまのご支援・ご尽力の賜物です。この場をお借りして、衷心より拝謝申し上げます。今後は、生体磁場を介した医療用イメージングや社会インフラ・産業機器の高度モニタリングなど、幅広い分野において次世代センシング技術の創出につなげられるよう、研究に邁進する所存です。