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電気電子系 論文発表会 「能動制御軸数を削減したベアリングレスモータの受動安定方向の振動低減 に関する研究」

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日程
平成30年3月9日(水)
時間
15:00 - 16:30
場所
大岡山キャンパス 大岡山南4号館2階421号室別窓
参加費
無料
講師
杉元紘也
参加のお申し込み
申し込み不要
お問い合わせ先
司会 : 千葉明 教授、補佐員 : 時岡

E-mail : ei@belm.ee.titech.ac.jp

背景

 ベアリングレスモータは、磁気軸受機能が磁気的に一体化されたモータであり、回転軸を非接触で磁気支持すると同時に、トルクを発生させることができる。したがって、無摩擦・無摩耗、潤滑油不要、長寿命・メンテナンスフリー、高効率・省エネルギーという特長がある。これまで、半導体製造装置用の超純水や化学薬液を搬送する遠心ポンプ、補助人工心臓用遠心ポンプ、バイオリアクタ用撹拌機、プロセスチャンバ用回転テーブル、フライホイール、コンプレッサ、冷却ファンへの応用が検討されている。

ベアリングレスモータ

ベアリングレスモータは、能動的に磁気支持制御を行う軸数で分類することができる。5軸制御形ベアリングレスモータは、z軸周りの回転軸を除く、回転子の半径方向の2自由度、傾き方向の2自由度、軸方向の1自由度の計5自由度を能動的に磁気支持制御する方式であり、大出力、高信頼性が要求される用途に向いている。一般的に2台のベアリングレスモータと1台のスラスト磁気軸受で構成されるため、体格は比較的大形である。また、半径方向と傾き方向の磁気支持制御のために三相インバータが2台、モータ駆動用に三相インバータが1台、軸方向の磁気支持制御のために単相インバータが1台必要であり、少なくとも4台のインバータが必要となる。さらに回転子の変位検出用センサは少なくとも5台必要となるため高コストである。したがって、5軸制御形ベアリングレスモータの研究開発は、大形・大出力のポンプやコンプレッサ向けが多い傾向がある。

4軸制御形ベアリングレスモータは、スラスト磁気軸受を除いて、半径方向と傾き方向の4自由度を能動的に磁気支持制御する方式である。軸方向は、永久磁石の吸引力を利用して、受動安定する構造である。半径方向と傾き方向の磁気支持制御のために三相インバータが2台、モータ駆動用に三相インバータが1台必要であり、少なくとも3台のインバータが必要となる。4軸制御形は、スラスト負荷が小さく、スラスト磁気軸受が必要のない場合に有効である。

3軸制御形ベアリングレスモータは、傾き方向と軸方向を能動的に磁気支持制御する方式である。半径方向は受動安定となるため、アキシャルギャップ構造である。傾き方向の磁気支持制御のために三相インバータが1台必要であり、さらに軸方向と回転速度制御のため、少なくとも三相インバータが1台必要となる。3軸制御形は、半径方向の外乱が小さい場合に有効である。

一方、小形で低コストが要求されるファンやブロアへの応用には、能動的な制御軸数が少ない2軸制御形ベアリングレスモータや1軸制御形ベアリングレスモータが適している。2軸制御形ベアリングレスモータは、半径方向のみを能動的に磁気支持するため、1台のベアリングレスモータのみで構成されるため、モータ構造はベアリングレスモータの中で最もシンプルである。また、三相インバータは、半径方向の磁気支持制御用に1台、モータ駆動用に1台必要であり、回転子の変位検出用センサは2台であるため、5軸、4軸及び3軸制御形ベアリングレスモータと比較して低コストである。一方、回転子の軸方向及び傾き方向は、永久磁石の吸引力を利用した受動安定であり、外乱により振動が発生し、危険速度で振動が増加するため、振動抑制方法に関する研究が近年盛んに行われている。

1軸制御形ベアリングレスモータ及び磁気軸受モータは、z軸方向のみを能動的に磁気支持する形式であり、現在最も能動制御軸数の少ないベアリングレスモータである。従来、磁気支持制御用とモータ駆動用に、それぞれ単相インバータ1台と三相インバータ1台が必要であったが、シングルドライブベアリングレスモータのコンセプトが提案され、三相インバータ1台のみで実現可能となった。したがって、回転子の変位検出用センサを1台追加すれば、三相インバータでベアリングレスモータを駆動することが可能であるため、2軸制御形ベアリングレスモータと比較して、さらにシステム全体を小形・低コスト化することができる。

課題

1軸制御形ベアリングレスモータの重要課題の一つは、2軸制御形ベアリングレスモータと同様に、受動安定方向の振動を如何に低減するかである。受動形磁気軸受はバネ力のみ発生し、ダンピング力は発生しないため、共振時に振動が発生し、最悪の場合、危険速度でタッチダウンする。特に、冷却ファンへの応用を考慮し軸長を短くした場合、傾き方向の剛性が低下し、外乱に対する回転子の振動は大きくなるため、振動を低減するための研究が行われている。

目的

本論文では、2軸制御形及び1軸制御形ベアリングレスモータの受動安定方向の振動低減を目的とする。2軸制御形ベアリングレスモータについては、試作機の傾き方向の振動発生要因を明らかにし、半径方向の磁気支持制御用PIDコントローラの積分ゲインの調整による振動低減法を提案する。また、1軸制御形ベアリングレスモータについては、半径方向の振動発生要因を分析し、回転角度検出誤差低減による振動低減法を提案する。両者共に、実機試験を行い、提案方法の有効性を示す。さらに、受動安定方向の剛性を向上した新しい1軸制御形シングルドライブベアリングレスモータを提案し、実機検証により有効性を明らかにする。

更新日:2018.03.05

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