生命理工学系 News
生命理工学系にはライフサイエンスとテクノロジーに関連した様々な研究室があり、基礎科学と工学分野の研究のみならず、医学や薬学、農学等、幅広い分野で最先端の研究が活発に展開されています。
研究室紹介シリーズでは、ひとつの研究室にスポットを当てて研究テーマや研究成果を紹介。今回は、生体分子設計で拓く医用応用・ソフトマテリアル・分子センシングに取り組む、澤田研究室です。

主担当 人間医療科学技術コース
副担当 生命理工学コース/応用化学系応用化学コース
教授 澤田 敏樹![]()
| キーワード | ペプチド化学・工学、生体高分子科学、医用応用・ソフトマテリアル、データ駆動分子設計 |
|---|---|
| WEBサイト | 澤田研究室 |
澤田研究室では、ペプチドや繊維状ファージなどの生体分子を設計し、分子認識・自己集合・構造制御を通じて、診断、薬物送達、分子センシング、機能性ソフトマテリアルへ展開する研究に取り組んでいます。生体分子を、観察するだけの対象ではなく、配列や構造を設計し、組み上げることで新しい機能や物性を生み出せる分子システムとして捉えています。
研究で大切にしているのは、実験で得られた結果から次の問いをつくることです。予想通りの結果だけでなく、思い通りにならないデータも手がかりにし、統計解析や機械学習も用いながら、分子・構造・機能の関係を読み解き、次の設計へつなげます。

ペプチドとファージを基盤とする生体分子設計の全体像
繊維状M13ファージは、長さ約1 µm、直径数nmの細長いウイルス粒子であり、表面に多数のタンパク質が規則的に配置されたナノ構造体です。遺伝子改変によりファージ表層のアミノ酸配列を変えることで、分子間相互作用、集合構造、機能物性を制御できます。
私たちは、遺伝子改変ファージの集合構造を利用して、ゲル、膜、熱輸送材料、分子放出制御系などの機能性ソフトマテリアルや分子システムを設計しています。さらに、アルツハイマー病アミロイドβペプチドの凝集制御、抗菌・殺菌応用、細胞や生体分子を標的とする機能化など、医用応用につながる展開にも取り組んでいます。
これらの研究では、ファージ表層の配列、集合構造、機能物性の関係を実験的に調べるとともに、統計解析や機械学習を活用して高機能な候補を効率的に探索しています。予測に基づく実験検証と解釈を通じて、配列・集合構造・機能物性の関係を読み解き、さらなる高機能化へとつながる設計指針の獲得を目指しています。
ペプチドは、アミノ酸配列を変えることで多様な分子認識能や機能を設計できる生体分子です。私たちは、標的分子や材料表面、精密オリゴマー、分子集合体に結合するペプチドを探索・設計し、その相互作用を利用した分子ツールの開発を進めています。
これらの分子認識ペプチドを利用して、診断や薬物送達などの医用応用への展開を目指しています。特に、標的分子や精密オリゴマーに選択的に結合するペプチドを利用し、分子の担持、配置、放出、応答を制御する技術の開発に取り組んでいます。こうした分子認識技術を基に、生体分子の機能化や、精密オリゴマーの診断や薬物送達などの医用応用への展開を目指しています。
また、蛍光応答、多変量解析、機械学習を組み合わせることで、さまざまな分子や材料の違いを読み取り、識別・分類するデータ駆動型センシングにも取り組んでいます。分子認識を「結合する分子を見つける」だけで終わらせず、化学情報を読み出す分子ツールへ展開することを目指しています。

ペプチド設計・遺伝子改変ファージ・データ駆動分子設計の流れ
私たちは、機械学習を研究の主役ではなく、実験から得られる複雑なデータを読み解くための加速器として位置づけています。高機能化につながる配列や分子構造、集合条件を予測して探索を効率化するだけでなく、寄与解析や物理化学的な解釈を通じて、分子・構造・機能の関係を説明できる知見として回収することを重視しています。思い通りにならない実験結果も、次の仮説や設計につながる重要な情報です。結果をよく観察し、議論を重ね、仮説を更新しながら研究を進めることを大切にしています。
researchmap(https://researchmap.jp/7000018144/published_papers?limit=20&start=1
)
| 2005年 | 芝浦工業大学工学部 卒業 |
|---|---|
| 2010年 | 東京工業大学大学院生命理工学研究科後期博士課程 修了 博士(工学)を取得 |
| 2010年-2012年 | 東京大学駒場オープンラボラトリー 助教 |
|---|---|
| 2012年-2016年 | 東京工業大学大学院理工学研究科 助教 |
| 2016年-2018年 | 東京工業大学物質理工学院 助教(改組による) |
| 2017年-2021年 | 科学技術振興機構 さきがけ研究者(兼任) |
| 2018年-2021年 | 東京工業大学物質理工学院 テニュアトラック助教 |
| 2021年-2024年 | 東京工業大学物質理工学院 准教授 |
| 2024年-2026年 | 東京科学大学物質理工学院 准教授(大学統合による) |
| 2026年- | 現職 |
| 2015年 | 高分子学会高分子研究奨励賞 |
|---|---|
| 2017年 | 繊維学会奨励賞 |
| 2018年 | 東工大挑戦的研究賞 |
| 2019年 | 日本化学会若い世代の特別講演会講演証 |
| 2020年 | 日本ペプチド学会奨励賞 |
| 2021年 | 文部科学大臣表彰若手科学者賞 |
| 2024年 | 東京工業大学物質理工学院創生研究奨励賞 |
| 2026年 | UBE学術振興財団学術奨励賞 |
日本化学会・高分子学会・日本ペプチド学会・繊維学会・日本MRS・アメリカ化学会
澤田研究室は、2026年6月に発足しました。研究テーマだけでなく、研究の進め方や研究室の文化も、メンバーとの対話を重ねながらかたちづくっています。
研究では、思い通りにならない結果も大切な手がかりです。結果をよく観察し、議論し、仮説を更新しながら次の設計へ進む。その過程を通じて、自分で問いを立て、実験を組み立て、結果を解釈し、研究を進める力を育てたいと考えています。
生命、化学、材料、情報など、それぞれの背景を生かしながら、生体分子から新しい機能を生み出す研究に挑戦したい方を歓迎します。
※この内容は掲載日時点の情報です。最新の研究内容については研究室サイト
をご覧ください。