生命理工学系 News
生命理工学系にはライフサイエンスとテクノロジーに関連した様々な研究室があり、基礎科学と工学分野の研究のみならず、医学や薬学、農学等、幅広い分野で最先端の研究が活発に展開されています。研究室紹介シリーズでは、ひとつの研究室にスポットを当てて研究テーマや研究成果を紹介。今回は、新しい核酸医薬の開発と、その細胞内送達技術(DDS)について研究する、山吉研究室です。
ライフエンジニアリングコース
教授 山吉 麻子
キーワード | 核酸医薬、DDS、光操作、エクソソーム、物質共生 |
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WEBサイト | 山吉研究室 |
細胞外小胞をハイジャックする新しい薬物送達システムの構築
細胞は『エクソソーム』と呼ばれる小胞を放出し、他の細胞に情報を伝達しています。近年、がん細胞が分泌するエクソソームに、がんの転移や増殖に重要な役割を果たす様々な分子が搭載されていることが明らかになりました。とりわけエクソソームに含まれる小さな遺伝子(microRNA:exosomal-miRNA)は、新たな治療標的として注目されています。我々はエクソソームに随伴して取り込まれ、exosomal-miRNAの機能を阻害する新しい抗体結合型核酸の開発に成功しました。現在、この技術を基盤とした「エクソソーム・ハイジャック型薬物送達システム」の社会実装を目指して研究を進めています。
日経バイオテク:https://bio.nikkeibp.co.jp/atcl/news/p1/17/08/26/03130/
光を用いた遺伝子制御技術の開発
核酸医薬は標的遺伝子に対して配列特異的に結合する性質から、副作用の少ない高度医薬品として注目を集めていますが、我々は光を用いて核酸医薬の薬効を制御する新しい人工核酸の開発に取り組んでいます。この人工核酸を用いることで、細胞内非コードRNAの機能制御や、遺伝子に施される小さな目印(メチル化)を特異的に検出することに成功しております。またさらに、この技術を応用することで、遺伝情報を書き換える「ゲノム編集」へと展開しようと奮闘しております。
医薬経済ONLINE:https://iyakukeizai.com/iyakukeizaiweb/detail/177661
物質共生を可能とする人工核酸の開発
高度に最適化された抗体医薬や核酸医薬をはじめ、多くのバイオ医薬品において免疫原性が認められ、これを回避するのは現状ではほぼ不可能と言えます。我々は、これらの機能性分子、特に人工核酸が「なぜ免疫原性を示すのか?」について、分子レベルで解明することにより、生体との共生(物質共生)を可能とする可能な新しい核酸医薬の創製を目指しています。
文部科学省科学研究費補助金 学術変革領域(A)「マテリアル・シンバイオシスのための生命物理化学」(領域略称:物質共生):https://material-symbiosis.jp
Recent Advancements in Development and Therapeutic Applications of Genome-Targeting Triplex-Forming Oligonucleotides and Peptide Nucleic Acids
Yu Mikame*, Asako Yamayoshi*
Pharmaceutics, 15(10), 2515 (2023).
DOI: 10.3390/pharmaceutics15102515
Exosome-hijacking drug delivery system with branched arginine linker effectively deliver antisense oligonucleotides into lung adeno-carcinoma cells.
Shota Oyama, Mao Tomita, Moeka Hata, Yu Mikame, Tsuyoshi Yamamoto, Eishi Ashihara and Asako Yamayoshi*
Chem. Pharm. Bull., 71(11), 819-823 (2023).
DOI: 10.1248/cpb.c23-00430
Selected as a "Front Cover"
Selected as a "Highlighted paper selected by Editor-in-Chief" and "Featured Article"
Unique Crosslinking Properties of Psoralen-conjugated Oligonucleotides developed by Novel Psoralen N-Hydroxysuccinimide Esters
Juki Nakao, Yu Mikame, Honoka Eshima, Tsuyoshi Yamamoto, Chikara Dohno, Takehiko Wada and Asako Yamayoshi*
ChemBioChem., e202200789.
DOI: 10.1002/cbic.202200789
Selected as a "Front Cover"
Selected as a "ChemBioTalents 2022/23"
プレスリリース:https://www.nagasaki-u.ac.jp/ja/science/science316.html
Selective Photo-Cross-Linking Detection of Methylated Cytosine in DNA Duplex Aided by a Cationic Comb-Type Copolymer
Atsuhiro Kojima, Juki Nakao, Naohiko Shimada, Naoki Yoshida, Yota Abe, Yu Mikame, Tsuyoshi Yamamoto, Takehiko Wada, Atsushi Maruyama and Asako Yamayoshi*
ACS Biomaterials Science & Engineering, 8(5), 1799-1805 (2022).
DOI: 10.1021/acsbiomaterials.2c00048
Selected as a "Front Cover"
日本経済新聞:https://www.nikkei.com/article/DGXZRSP628053_Q2A310C2000000/?au=0
プレスリリース:https://www.jst.go.jp/pr/announce/20220310/index.html
Development of Antibody-Oligonucleotide Complexes for targeting Exosomal microRNA
Asako Yamayoshi*, Shota Oyama, Yusuke Kishimoto, Ryo Konishi, Tsuyoshi Yamamoto, Akio Kobori, Hiroshi Harada, Eishi Ashihara, Hiroshi Sugiyama and Akira Murakami
Pharmaceutics, 12(6), 545.
DOI: 10.3390/pharmaceutics12060545 (2020)
プレスリリース:https://research-er.jp/articles/view/89689
2000年 | 京都工芸繊維大学繊維学部 卒業 |
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2003年 | 京都工芸繊維大学大学院工芸科学研究科後期博士課程 修了 博士(学術)を取得 |
2003年 - 2005年 | 九州大学生体防御医学研究所 学術研究員 |
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2005年 - 2007年 | 九州大学先導物質化学研究所 特任助手 |
2007年 - 2015年 | 京都工芸繊維大学大学院工芸科学研究科 助手・助教 |
2015年 - 2018年 | 京都大学白眉センター 特定准教授 |
2017年 - 2020年 | (兼任)JSTさきがけ研究者 |
2018年 - 2024年 | 長崎大学大学院医歯薬学総合研究科(薬学系) 教授 |
2024年 - | 現職 |
2010年 | 稲盛財団・KIT若手研究者支援プロジェクト賞受賞 |
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2021年 | 長崎大学未来に羽ばたく女性研究者賞 優秀女性研究者賞受賞 |
2022年 | 日本核酸医薬学会 学術賞受賞 |
「副作用の無い薬をつくりたい!」と思ったことが、私が研究者を志したキッカケでした。その中で、当時かなり新しいコンセプトであった「核酸医薬」に出会い、今でもライフワークになっております。学生時代、特に研究室配属されてからの様々な出会いや学びが、皆さんの人生の舵を大きく切ることがあります。何でもいいので、皆さんが「これは面白い!これがやりたい!!」と思えるようなことに出会えるよう、皆さんのその夢を応援することができるよう、一緒に頑張っていきたいと思っています。2024年5月からスタートした新しい研究室です。ご興味ある方、研究室見学はいつでも大歓迎です!
※この内容は掲載日時点の情報です。最新の研究内容については研究室サイトをご覧ください。