生命理工学系 News

偉人たちの名言に学ぶ「プロティアンキャリア」の楽しみ方~ Like a Rolling Stone ~

令和5年度第6回(通算第103回)蔵前ゼミ印象記

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2023.12.20

2023年11月10日、ZOOM遠隔講義にて、令和5年度第6回蔵前ゼミ(通算第103回)が開催されました。

蔵前ゼミは同窓生による学生・教職員のための講演会です。日本社会や経済をリードしている先輩が、これから社会に出る大学院生に熱いメッセージを送ります。卒業後の進路は?実社会が期待する技術者像は?

卒業後成功する技術者・研究者とは?など、就職活動(就活)とその後の人生の糧になります。

講師:釜 剛史 先生

1999年 東京工業大学 工学部 機械宇宙学科卒業

2001年 東京工業大学 大学院理工学研究科 機械物理工学専攻 修士課程修了


釜剛史先生

講師の釜 剛史 先生

当日の印象記を、博物館の広瀬茂久特命教授が綴りました。その一部をご紹介します。

 ギリシア神話のプロテウスが登場する わかり易い話だった。プロテウスは海の神ポセイドンに仕えた予言の神で、予言する時にさまざまな姿に変身することから、世の中の変化に対応して、自らの意思で、転職等を繰り返しながら新しい仕事に挑戦し続ける人たちの生き方を『プロティアン・キャリア』(Protean career)と言うそうだ。これまでは「大企業に入社して定年まで勤め上げる」のが標準で、現在も主流ではあるが、それだけがキャリアではないことを知って欲しいというのが今回の趣旨だった。釜さんは、本学の修士課程修了後、富士写真フイルム(現富士フイルム)、トヨタ自動車を経てフリーター、フリーランス、そして会社経営者というように、その時々の自らの好奇心に従い、自分の意志でキャリアを変えてきた。「会社等の組織自体には関心がなく、仕事の内容にのみこだわった結果」というから、釜さんは生来のプロティアンのようだ。第三者としては一番知りたい“変身時の心の動き”も赤裸々に紹介されたので、学生には自分事として考えやすかったに違いない。

 講義では軽く触れられただけだが、私には次の点も印象深かった:(1)本学の大学院に所属するポテンシャルがあれば、キャリアの選択肢は多い; 何をやろうとそれなりのことはできるはずという自信はキャリア形成に大事。(2)プロティアン・キャリアは決して気楽な稼業ではなく、歩む道は“学習”で舗装されている。万年受験生とまではいかないにしても、“万年勉強”は必須。(3)モチベーション無き転職はNGのようだ。イヤな現状から逃れるためだけに職場を代えたとしても、そこには程度の差こそあれパワハラ上司や“出る杭”どころか“出そうな杭”までを打つ人が必ずいるからだ(語弊のある表現だがニュアンスは分かってもらえるだろう)。

印象記の続きは以下のPDFよりご覧ください。

淺川吉章副支部長、蔵前ゼミ担当チーフ幹事

「2023年度3Q 蔵前ゼミを終えるにあたり」淺川吉章(1977機械物理、79 MS)副支部長

 蔵前ゼミは大学と蔵前工業会の神奈川県支部が共同で年間6回実施していますが、本日が今年度の最終回となりますので、支部から一言ご挨拶を申し上げます。

 「修士キャリア構築基礎C」の中の2回を受講されたわけですが、皆さんどのような感想を持たれたでしょうか?(1)前回は人工衛星の開発や衛星データーの利活用という体験を通して、大企業とスタートアップ さらに本業とは別に自分の居場所をもう一つ作るという意味での副業についての話しでした。そして、(2)今回は プロティアンキャリアという非常に柔軟なキャリア形成について、多くの具体例を入れて興味深いお話をしていただきました。

 今日の講演の中にもあったように、キャリア構築には唯一の正解はなく、1人1人異なるものです。先輩の事例を知ることで選択肢が広がり、皆さんの今後の人生において何らかのヒントになれば、蔵前ゼミを企画するものとしても大変うれしく思います。今日の話にあったように、仕事が自分に合う合わないという状況に誰もが直面すると思います。そんな時に本ゼミを思い出して頂きたいのです。蔵前ゼミが15年前に始まって、今回通算103回目となりますが、毎回、広瀬茂久先生が「印象記」としてゼミの内容をまとめて、生命理工学院のWebサイトに掲載されています。URL*を皆さんにお送りしましたので、過去にどんな先輩がどんな話をされたか、その中には自分の考えに近く参考になるものもたくさんあると思いますので是非ご覧ください。

* 蔵前ゼミ | 東京工業大学 生命理工学院 生命理工学系 詳細情報 (titech.ac.jp)別窓

 最後に、皆さんのご活躍、輝かしい未来を祈念して閉講の挨拶とさせて頂きます。

「蔵前ゼミ担当チーフ幹事からのコメント」淺川吉章(1977機械物理、79 MS)副支部長

 この度は素晴らしい蔵前ゼミをありがとうございました。

釜さんには早くから講師に手を挙げていただいたにも拘わらず、こちらの都合で大分お待たせしてしまい、まさに満を持してのご登壇となりましたが、聞き手を前向きにさせる力のある快活で分かりやすいご講演が印象的でした。

 私が蔵前ゼミを担当するようになって相当経ちますが、「プロティアンキャリア」を前面に出した蔵前ゼミは初めてではないかと思います。その時々で興味があること、好きなことを追求し、実践してキャリアを積み上げられれば楽しいだろうなと思う反面、なかなか難しそうだと感じたのも正直なところです。しかし、好きなことをやると言っても、それなりの覚悟、準備が「根拠ある楽観性」に繋がっているというお話に、なるほどと思いました。

 巨人K社の凋落を見た体験、VUCAの時代にあって「今から20年間のキャリアパスが描けるか」という問いかけ、将来の目標は詳細に定義するのではなく(概念的な)ラフプロットの方が柔軟に対応できて目標を達成する可能性が高まるというアドバイスなど、印象に残るお話が多々ありました。

 また、「面白そうなことがあればなぜ飛びつかないのか」という問いかけと、釜さん自身は「組織自体にはそもそも関心がなかった」という点も、以前からよく言われる「就職」といいながら「就社」ではないかという指摘に対する一つの解のようにも思えました。

 お話しの根底にあるのはポジティブシンキングであり、一歩踏み出す行動力と発信力とが相まってチャンスをつかむ原動力となっているということがよく分かりました。前回と今回のアンケートでも明らかになったように、依然大企業志向、安定志向が顕著な東工大生ですが、現時点では「プロティアンキャリア」は自分に向かないと思っていたとしても、将来人生の分岐点に立った時に、今回の蔵前ゼミでのお話が彼らの背中を押すことがあるのではないでしょうか。

 釜さんは来月、「世界を愉快にする」を旗印に「あくるひ」の社長になられますが、それがゴールではなく、次にどんなことにチャレンジされるのかが楽しみです。今後ますますのご活躍、ご発展をお祈り申し上げますとともに、引き続き東工大と蔵前工業会へのご支援、ご協力をお願い申し上げます。

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