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令和5年度第4回(通算第101回)蔵前ゼミ印象記

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2023.08.21

2023年7月14日、ZOOM遠隔講義にて、令和5年度第4回蔵前ゼミ(通算第101回)が開催されました。

蔵前ゼミは同窓生による学生・教職員のための講演会です。日本社会や経済をリードしている先輩が、これから社会に出る大学院生に熱いメッセージを送ります。卒業後の進路は?実社会が期待する技術者像は?

卒業後成功する技術者・研究者とは?など、就職活動(就活)とその後の人生の糧になります。

講師:竹下 真由 先生

2005年 東京工業大学 工学部 経営システム工学科卒業

2007年 東京工業大学 大学院理工学研究科 経営工学専攻 修士課程修了


竹下真由先生

講師の竹下真由 先生

当日の印象記を、博物館の広瀬茂久特命教授が綴りました。その一部をご紹介します。

 外国から出島経由で入ってくる「貴重な砂糖」の通り道だったSugar Road(長崎--佐賀--小倉)(図1)沿いの地域では菓子作りが盛んだった。佐賀に住んでいた竹下さんの先祖もこの“地の利”を生かして菓子業を始めた。120年以上も前のことだ。当時のお菓子屋さんの悩みは、夏場になると売れなくなることだった;うだるような暑さの中では、甘ったるい菓子は敬遠されてしまうから夏枯れは避け難いのだが、それでは雇用を維持できない。そこで3代目は、当時出始めたIce candyも手掛けることにし、小豆のアイスバーを作って細々と商いを続けた。転機が訪れたのは今から60年ほど前に、3代目が経済視察団の一員としてヨーロッパを巡回した時のことだ。フランスのシャモニーからアルプス山脈の最高峰“モンブラン”(Mont Blanc)を望んだとき、「あの白い山にチョコレートをかけて食べたらさぞ美味しいだろう!」と着想を得た。帰国後、商品化したのが『ブラック モンブラン』で 大ヒット商品となり現在に至っている。

 講師の竹下さんは、本学の修士課程修了後に、外資系企業に4年間勤めた後、2011年に家業を継ぐべく佐賀に戻り、2016年に竹下製菓の社長に就任した。その間に3児の母となったが、伴侶の見つけ方も参考になったのではないだろうか(こういう話はめったに聞けない; 若い受講生には最高のプレゼントだったに違いない)。2023年には、(1)ブラック モンブランの製菓会社を事業承継 及び(2)M & Aなどの多角化経営で売上を200%超にアップした業績が評価され、「ウーマン・オブ・ザ・イヤー2023」別窓に選ばれている。

 小学校5年生の時に本学の募集要項を取り寄せ、第4類を目指すことにしたいきさつもユニークだった。「熱しやすく、冷めにくい」性格の持ち主と思いきや、竹下さん自身は「自分は怠け者なので、そうでない人たちがいる所に身を置くように心がけ、目標を口に出して言うようにしているのも自分の弱い性格から逃げないため」だそうだ。この他に、初志貫徹型の頑張り屋さんは えてしてオーバーヒートして体調を崩しがちだが、これを避けるために自分の「分身」を置き、客観的な目で(分身を通して)我が身をコントロールすることも心掛けているそうだ。

印象記の続きは以下のPDFよりご覧ください。

浜辺順彦、蔵前工業会神奈川県支部 副支部長

「2023年度1Q2Q 蔵前ゼミを終えるにあたり」浜辺順彦(はまべ よしひこ、1969制御) 蔵前工業会神奈川県支部 副支部長

 この蔵前ゼミも4月から始まった前期(1Q2Q)の4回は本日で終了いたします。前回が通算100回、そして今回が次の100回に向けた第1回目で、今期は蔵前ゼミの節目に当たっていましたが、皆さんは受講してどのような感想を持たれたでしょうか。2008年7月に始まって丁度15年、講師を務められた先輩方の熱い思いが受け継がれて今日に至っています。

 今期の講師4名は、創薬ベンチャー社長の加藤珠蘭さん、下町ロケットに登場する神谷弁護士のモデルでもある鮫島正洋さん、グーグルマップの開発を牽引している後藤正徳さん、そして本日の竹下製菓社長で蔵前工業会佐賀県支部長でもある竹下真由さんと、各分野で活躍されている方々です。さらに全員が大学を出た後に、一旦大企業に就職され、その後 転身されている点でも時代を先取りしてきた皆さんだといえると思います。

 これまで講師を務められた方の多くは、「自分が学生だった時にこのような授業があればよかった」と異口同音に言われています。受講された皆さんには先輩方の経験や知見をこれからのキャリア構築に活かして欲しいと思います。私が学生時代の時にも民間企業人が講師を務める授業が半年間1コマありましたがそれは最先端の専門科目でした。私の所属は制御工学科でしたが、日立中央研究所から毎回講師が代わってこられて、当時はコンピュータのはしりの時期でしたから、ハードウエアやソフトウエアの説明に深く聞き入っていたのを思い出しています。

 もちろんある年齢や立場になって初めて自分のこととして理解できることもあると思いますが、そんな時に蔵前ゼミで先輩たちが話されたことを思い出して役立ててもらえれば、主催者として大変うれしく思います。是非学生生活そして社会に出てからの人生を充実したものにして下さい。

 最後になりましたが、蔵前ゼミの開催に際し、多大なご支援ご協力を賜りました「企業社会論」担当の大窪章寛先生を始めとする大学関係の皆様に感謝申し上げます。

淺川吉章副支部長、蔵前ゼミ担当チーフ幹事

淺川吉章(1977機械物理、79 MS)副支部長、蔵前ゼミ担当チーフ幹事からのコメント

 この度は素晴らしい蔵前ゼミをありがとうございました。快活でテンポの良い語り口に惹き込まれ、45分のご講演があっという間でした。また、親しみやすいイラストを多用したスライドも効果的だったと思います。

 竹下さんは小学生の時にテレビでIDCロボコンを見たことがきっかけで東工大を目指し、実際にロボコンに出場して夢を叶えました。家業を継ぐことは決めていたものの、大学院修了後はアクセンチュアに入社されました。すぐに実家に戻ると「跡取りだから」と思われるのが嫌だったという理由もあったようですが、同社では将来の経営に役立てるためにグローバル企業を知ると同時に、家業でのビジネスパートナーとなる伴侶を見つけるというミッションもありました。そして見事にそれも実現され、34歳で事業を継承されました。

 大変ポジティブな生き方ですが、「目標は口に出して言う」ことの大切さを認識し、それを実践してこられたという点に興味を持ちました。私事で恐縮ですが、私が勤務していた企業では「有言実行」を重視しており、たとえできなかったとしても「有言不実行」は日本では美徳とされる「不言実行」に勝ると言われていました。竹下さんは、目標を口に出す(言葉にする)ことでその目標がクリアになり、周りの人も認知して協力してくれたり、自分が目標に近づくためのモチベーション向上につながったり、また、たとえ失敗しても次につながるように前向きに転ぶことができると仰っていましたが、「有言実行」の本質もまさにそこにあると再認識しました。

 竹下製菓の歴史や商品開発への想い、自分の子供が事業を継ぎたいと思えるような会社にするための取り組み(コミュニケーションやワークライフバランスなど)についても、興味深く聞かせていただきました。

 質疑応答では、自分の体調を守るには、自分を分身として他の人の体調を気遣うのと同じようにすればよいという、誰にでもすぐに実践できるようなアドバイスもいただきました。

 また、パネルディスカッションのテーマ「地方都市の可能性について」を最初に見たときには、やや唐突な印象を受けましたが、ご講演を聞いて関連が分かりました。時間の制約で、パネラーの発言は最初の論点の「地方都市に住みたいですか?」についてのみとなりましたが、パネラーの皆さんの率直な発言にハッとするようなこともあり、多様な考えの一端を知ることができて有意義でした。

 この度はお忙しい中、また豪雨の影響によるご苦労もある中で、素晴らしい蔵前ゼミにしていただいたことに、改めて感謝致します。今後ますますのご活躍と貴社のご発展をお祈り申し上げますとともに、引き続き東工大と蔵前工業会へのご支援、ご協力をお願い申し上げます。

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