生命理工学系 News
令和4年度第6回(通算第97回)蔵前ゼミ印象記
2022年11月11日、ZOOM遠隔講義にて、令和4年度第6回蔵前ゼミ(通算第97回)が開催されました。
蔵前ゼミは同窓生による学生・教職員のための講演会です。日本社会や経済をリードしている先輩が、これから社会に出る大学院生に熱いメッセージを送ります。卒業後の進路は?実社会が期待する技術者像は?
卒業後成功する技術者・研究者とは?など、就職活動(就活)とその後の人生の糧になります。
1994年 東京工業大学 工学部 建築学科卒業
当日の印象記を、博物館の広瀬茂久特命教授が綴りました。その一部をご紹介します。
村上さんは、「編集者の子育て」という本を書いてみたくなるようなキャリアの持ち主だ。続編は「編集者の娘の育児」だろうか。村上さんの父は本や雑誌の編集者で、作家やコンテンツの力を最大限に引き出す裏方として、読者の心を動かす作品の誕生に関わってきた。この上手に人を操るという父の特質が子育てでもいかんなく発揮され、現在の“村上まり子”が誕生した。高校生の時に東工大の6類を目指し、公務員として社会貢献するキャリアを選び、秘伝の技である『余白の美』をマスターし、それを生かして分かりやすく美しい文章・ポンチ絵・PowerPointスライドを作成し、周囲から頼りにされているのは父の助言のお陰だ。村上さんのキャリアの危機は、長男の育休が終わって仕事に復帰する時だった。保育園が見つからず退職という暗雲が立ち込めたのだ。そんな時、9:00からの幼児向け英語音楽教室を見つけ、拝み倒して8:00から預かってもらうことにし、難を逃れた。村上さんが「やるじゃん 横浜市!」と感動したのは、市が次世代育成支援法に基づく行動計画の中で女性活躍時代の実現のために一番大切な事として、“責任職の意識改革”を挙げたことだった。 講演では、(1)自己紹介に続いて、(2)横浜市の紹介、(3)これまでに携わった建築・まちづくり、(4)公務員×技術職×女性の順で紹介されたが、本稿ではキャリアに焦点をあて、順序を一部入れ替えてお伝えする。
印象記の続きは以下のPDFよりご覧ください。
「2022年度3Q 蔵前ゼミを終えるにあたり」
中島 肇(1977 化工)蔵前工業会神奈川県支部長
まずは、講師の村上先生、有り難うございました。私も横浜市民ですので、非常に興味深くお話を聞かせていただきました。第3Qの蔵前ゼミは、和泉章先生(イノベーション人材養成機構)がご担当の講義『修士キャリア構築基礎C』に組み込んで頂き、2回開催しました。いかがだったでしょうか。キャリアを考える上で貴重な参考例になったのではないかと思います。
冒頭で和泉先生がお話しされたように、将来の皆さんのキャリアは個々別々で人によって全く違うものになるでしょう。従って、皆さんが自身のキャリア作りにあたっては、決して受け身的・義務的に考えるのではなく、皆さんが持つ重要な権利として、前向き主体的に取り組んでもらいたいと思います。ただ皆さんがその権利を行使するにあたっては、情報量の多寡で、結果が大きく左右されることは明らかですので、過去の蔵前ゼミも参照してください。これまでの97回分が、大学ホームページにアーカイブされています(https://www.bio.titech.ac.jp/event/kuramae.html)
そして学生の皆さんは、現在すでにキャリアづくりのスタートラインに立っているという意識を持って、残りの大学院生活を有意義に過ごすようにして下さい。最後に和泉先生、それから2名の講師の方々、及び熱心に受講してくれた学生の皆さんに感謝し、閉講の挨拶とします。
淺川吉章(1977機械物理、79 MS)蔵前ゼミ担当チーフ幹事からのコメント
この度は素晴らしい蔵前ゼミをありがとうございました。背筋を伸ばして、明るく、はきはきとお話しされているのが印象的でした。
都市づくり、まちづくりの観点に重点を置いた横浜市の紹介から、これまでに担当された業務のトピックスを通して、ご講演のテーマにある「市民に近い」という意味が大変よく分かりました。また、行政という立場でのかかわり方も興味深かったです。
たとえば、郊外住宅地における住民と建物の高齢化といった社会状況の変化に対応して、持続可能なまちへの再生事業では、当時としては画期的な、行政と企業が協定を締結して産学公民連携による住民参加型・課題解決型プロジェクトとして推進されたことが挙げられます。また、行政にしかできないことの例として紹介された空家条例の制定では、市民の命を守るという観点から、所有者がいない空家に対しては行政が応急的に危険回避措置を行えるようにする一方、法律では努力規定である所有者による適切な管理を条例では義務とするなど、適切なバランスを取ることの重要性が分かりました。
ご自身のキャリアについてお話しされたときには、「運を味方につける」という言葉が頭に浮かびました。もしご長男が保育園に入れなかったら仕事を辞めるしかなかったと話されていましたが、それまで村上さんが何事にも常に前向きに努力して取り組んでこられたからこそ、道が開けたのではないかと思います。早朝に勉強して係長試験に合格されたこともしかりです。
実はご講演が始まってすぐに分かりやすいプレゼンだなと感じたのですが、最後に受講生に伝授された「資料を分かりやすく伝えるコツ」を見て納得しました。
入庁間もないころに担当されたクイーンズスクエア開発事業において、困難に直面しても当時の上司の方たちが信念をもって前向きに仕事に取り組まれていたことが村上さんの心に残っているように、今回の蔵前ゼミが、「技術を持って 社会の要請に応えるために 行動する」というエールとともに、受講生の心に残ったのではないでしょうか。
本年度最後の蔵前ゼミに相応しい、素晴らしい授業をしていただいたことに、改めて感謝申し上げます。今後ますますのご活躍、ご発展をお祈り申し上げますとともに、 引き続き母校と蔵前工業会へのご支援、ご協力をお願い致します。