生命理工学系 News
令和4年度第4回(通算第95回)蔵前ゼミ印象記
2022年7月15日、ZOOM遠隔講義にて、令和4年度第4回蔵前ゼミ(通算第95回)が開催されました。
蔵前ゼミは同窓生による学生・教職員のための講演会です。日本社会や経済をリードしている先輩が、これから社会に出る大学院生に熱いメッセージを送ります。卒業後の進路は?実社会が期待する技術者像は?
卒業後成功する技術者・研究者とは?など、就職活動(就活)とその後の人生の糧になります。
1996年 東京工業大学 理学部 情報科学科卒業
当日の印象記を、博物館の広瀬茂久特命教授が綴りました。その一部をご紹介します。
「悪いのは私の頭ではない。学習法だ!」という“悟り”を開いてから、綾部さんのキャリアは上昇気流に乗った。この悟りに至るまでの考え方や生き方、そしてその後の戦略的な「学びの革新ビジネス」を軌道に乗せるまでの過程がとても分かり易く説明された。Zoomの画面越しだったにもかかわらず、綾部さんの魔法にかかり、自分の“潜在能力”を呼び覚まされた学生も多いだろう。要点は、学習すべき事柄を百科事典のように単に網羅的に丸暗記するのではなく、関連事項を幹・枝・葉のように紐づけた系統樹として整理し、知識の全体像を把握しやすくすることだ。綾部さん流にいえば「学習マップ」の作成だが、本でいえば、「目次を放射状に広げ、見える化する」ことによる「知識の体系化」といえる。体系化されたものは私たちの記憶に残りやすい。
綾部さんが、IT等の先端技術を取り込んで、“起業”するに至る萌芽は少年時代に既に現れていたようだ。小学6年生の時、遊びに行った友達の家で何か見慣れない機械に出会った。それに触っているうちに何だか無性に欲しくなって、譲ってもらう交渉を始めたのだ。友達の方は 親から買い与えられたはいいが 持て余し気味だったので、それならばということで お年玉貯金をはたいて手に入れた。説明書をよく読むとNECの最新型PCでプログラムも出来る優れものだった。これが伏線で、実際の話は(i)自己紹介/事業紹介、(ii)起業までのストーリー、(iii)起業のストーリー、(iv)事業成長のストーリーの順に進んだ。起業の基本は内発的動機と可能性を信じることだが、「起業のポイント」として指摘された“Fail Fast”(仮説検証を素早く回すこと)は大学の研究にも通じるポイントだ。
印象記の続きは以下のPDFよりご覧ください。
中島 肇(1977 化工) 蔵前工業会神奈川県支部長からのコメント
世間一般では、起業の成功率はあまり高くないといわれる中、綾部さんが独自の“学習マップ”法を考案し、各種の資格取得を支援する「eラーニング教材」の会社を立ち上げ、苦労しながらも上場にこぎつけられた話は、学生に非常にポジティブに響いたと思います。蔵前ゼミの今期は、綾部さんを含め4名の先輩方からそれぞれのキャリアで積み重ねた貴重な経験を披露していただきました。
学生の皆さんの多くはM1だと思います。これからインターンシップや就活イベントへの参加など、目先のことに気を取られがちになるかと思いますが、就活の先にある時間軸はとてつもなく長く、可能性に満ちていますので、是非、蔵前ゼミのスローガン「就職はゴールではない」を頭の片隅において、先輩方からの期待を込めた熱いメッセージを参考に、日本や世界の発展に貢献して欲しいと思います。
あと10年もすれば皆さんの時代は必ず訪れます。研究者や技術者あるいは経営者として活躍するキャリアを思い描き、そこに向けて与えられた時間の価値をそれぞれの立場で高めるべく努力してください。
淺川吉章(1977機械物理、79 MS)蔵前ゼミ担当チーフ幹事からのコメント
過剰な情報を詰め込まず、簡潔にして要点を押さえた説明と各セクションに配されたまとめにより、講演内容が無理なく頭に入ってきました。さすがは教育をビジネスとして立ち上げた綾部さんならではと思いましたが、実はもともとは他人に説明するのは得意ではなかったというお話はちょっと意外でした。
起業の原点は小学生の時にパソコンに出会って入手したことであり、今までなかったことを創造するのが趣味になり、それがいつかは新しい事業を創り出す(起業)という目標につながったということが印象的でした。起業には会社員時代の経験が役立ったとのことですが、たとえば説明するスキルを身に付けるために研修講師に志願するなど、自ら積極的に取り組む、与えられた仕事でもベストを尽くす、周りの人を巻き込む、先人の知恵・知見を活用するといったことは、起業に限らずこれから社会に出る受講生にとって、貴重な指針となったに違いありません。
また、起業のストーリーでは綾部さんの経験に基づくノウハウやヒントが多数示されており、起業を(選択肢の一つとして)考える受講生にとって、極めて実践的な内容だったと思います。例えば、ややもすればアイディア先行になりがちになるところ、お金を払ってくれる人、すなわちマーケットがあることが事業として必須であることやスピーディーな仮説検証の重要性などを説かれていました。事業成長のストーリーでも多講座展開がうまくいかないという課題を解決した道筋が示され、世の中の変化を取り込みタイムリーに実装することやそのための準備について示されました。
質疑応答ではできるだけ多くの質問を取り上げるようにしましたが積み残しがあったことからも、受講生の関心の高さがうかがわれました。
パネルディスカッションでは各パネラーの実現したいことに対して他のパネラーが質問したりアイディアを出したりするように誘導してくださり、どのように実現するかという具体性が高まるプロセスを見ることができました。これはワークショップ的であり、パネラーだけでなく全受講生にとっても貴重な経験になったと思います。充実した蔵前ゼミにしていただいたことに、改めて感謝申し上げます。