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令和4年度第2回(通算第93回)蔵前ゼミ印象記

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2022.08.03

2022年6月3日、ZOOM遠隔講義にて、令和4年度第2回蔵前ゼミ(通算第93回)が開催されました。

蔵前ゼミは同窓生による学生・教職員のための講演会です。日本社会や経済をリードしている先輩が、これから社会に出る大学院生に熱いメッセージを送ります。卒業後の進路は?実社会が期待する技術者像は?

卒業後成功する技術者・研究者とは?など、就職活動(就活)とその後の人生の糧になります。

講師:加藤 万貴 先生

2002年 東京工業大学 工学部 建築学科卒業

2002年 フィンランドのヘルシンキ工科大学に1年間留学

2005年 東京工業大学 大学院理工学研究科 建築学専攻 修士課程修了


加藤万貴先生

講師の加藤万貴 先生

当日の印象記を、博物館の広瀬茂久特命教授が綴りました。その一部をご紹介します。

 PC画面の壁紙(デスクトップの背景画像)にしたいような写真やイラストが満載で、ガイド付きツアーに連れて行ってもらったような心地よいひと時だった。「建築」というと地震や風雪に耐える頑丈な箱モノを連想しがちだが、建築家は強度のみでなく、環境との調和に意を砕き、心地よく 使いやすく 見栄えのいい形に仕上げるべく、チームを組んで努力している。建築家に限ったことではないが、見る人や使う人に期待以上の感動や安らぎを与えたいのだ。聞き終わってみると、加藤さんの講演タイトルに建築家の責任・情熱・誇りが とてもうまく凝縮されていることに感心した。

 職業意識が高まるにつれ、Work-life balance(WLB天秤)の振れ幅の許容範囲が広がり、人間的魅力も増すようだ。加藤さんは、フィンランドに留学するなど、もともと職業意識は高かったが、それに拍車をかけてくれたのが、Facebook社のS. Sandbergさんの著書『Lean In(リーン・イン): 女性、仕事、リーダーへの意欲』だそうだ。もう1冊、加藤さんが働く上で助けてもらった本がある。第1子の産休・育休が明けて、しばらくしてから出版された『子育てしながら建築を仕事にする』だが、すぐには読む気にならなかったようだ。加藤さん自身は、復職したものの、仕事も家庭も中途半端で自信を無くしていた。そんな時だから、その本に飛びついたと思いきや、「身近な人が仕事も家庭も充実して働いている様子を垣間見る気にならず、読んだのは子供が3歳を超え、育児も仕事も軌道に乗ってきたとき」だったそうだ。ヒトの心の綾(あや)をよく表している話だ。私には、このエピソードだけでも今日の講義は十分に価値があったと思える。しかし加藤さんにとっては大事なのはここからだ:「萬玉(まんぎょく)直子さんのエッセイに “子育てと仕事、足して100%になればいいのだと思うようになった”と書かれているのを見つけて、肩の荷が下りた気分になりました」。第2子の産育休明けの超多忙な時期にも関わらず、本セミナーを引き受けて貰えたのも、“足して100%思考”のお陰かもしれない。加藤さんからのメッセージで、大切にしたいのは「家族の笑顔が生活の基盤」だということだ。

印象記の続きは以下のPDFよりご覧ください。

司会:淺川吉章(1977機械物理、79 MS)蔵前ゼミ担当チーフ幹事

 快活でテンポのよい話し方と写真や図面を多用したスライドを用いたご講演に引き込まれました。学生時代の研究生活やフィンランド留学、就職後に経験された(一部は進行中の)業務内容を詳しく紹介され、建築の素人でも具体的なイメージをつかむことができました。そして、思いを形にする、新しいコンセプトやアイディアを様々な技術を組み合わせて具現化するという「ものづくり」の醍醐味が伝わってきました。

 また、個々のプロジェクトの経験をとおして、自分の手を動かして とことん考えることの大切さや、苦手分野を得意分野にするまで取り組んでみることなど、エピソードを交えて紹介してくださいました。

 ワークライフバランス(WLB)の話題は、男女を問わず関心が高かったようで、チャットで寄せられた質問約20件中、仕事と子育ての両立等のWLBに関するものが半数近くありました。時間の関係でごく一部しか実際に質問してもらえなかったのが残念です。しかし、子供が生まれて1年目は試練の年だが2年目になると楽になるといった体験談や、「家族の笑顔が生活の基盤」という加藤さん流のルールは、加藤さんが「子育て+仕事で100%になればよい」という言葉に出会うことで気持ちが楽になったように、受講生が将来子育てと仕事の両立に悩んだ時に思い出してほしいと思いました。

また、希望通りの配属にならなかったとしても、その仕事に取り組んだ経験が将来役に立ち、新たな展開につながるというお話は、これから社会に出る学生たちにとっての貴重なアドバイスだったと思います。充実した蔵前ゼミにしていただいたことに、改めて感謝申し上げます。

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