生命理工学系 News
令和4年度第3回(通算第94回)蔵前ゼミ印象記
2022年6月24日、ZOOM遠隔講義にて、令和4年度第3回蔵前ゼミ(通算第94回)が開催されました。
蔵前ゼミは同窓生による学生・教職員のための講演会です。日本社会や経済をリードしている先輩が、これから社会に出る大学院生に熱いメッセージを送ります。卒業後の進路は?実社会が期待する技術者像は?
卒業後成功する技術者・研究者とは?など、就職活動(就活)とその後の人生の糧になります。
1988年 東京工業大学 工学部 電気・電子工学科卒業
1990年 東京工業大学 大学院理工学研究科 電気・電子工学専攻 修士課程修了
当日の印象記を、博物館の広瀬茂久特命教授が綴りました。その一部をご紹介します。
講師の秋山さんは、本ゼミの兄弟版『蔵前立志セミナー』(第19回、2021.12.15)に登壇し、聴衆の心を鷲づかみにした。いや、それ以前から本学のキャリア科目「修士キャリアデザイン」や留学生向けの英語による授業 “Japanese Culture & Business” などで旋風を起こしていた。それなら是非「本ゼミ」でもということで、「雑談タイム」付きでの開催となった。これからの時代は、予測が難しく誰も正解を導き出せない乱流状態が続く。そのような状況下においても、現状を客観的かつ徹底的に分析した上で、身の処し方を決める必要がある。電気電子工学から金融・経営分野に転じ、英語をガリ勉してMITでMBAを取得した後、アメリカの投資銀行を経て、ヨーロッパの投資銀行にヘッドハントされ、その後、複数のベンチャーキャピタル(VC)ファンドの経営に参画し、起業家の発掘・育成を行うスタートアップ・アクセラレータとして活躍するまでの秋山さんのキャリア自体もVUCAの時代を生き抜く参考になりそうだ(実体験のバトンパス)。
秋山さんによれば、高輪ゲートウェイ駅で働く “AIさくら” さんは、ほぼ無限の記憶力と超速回転の頭脳を持ち、多言語を使いこなし、24時間365日 笑顔を絶やさず働き、当然ながら福利厚生も求めない。私たち人間は、AIが得意とする土俵で無理して戦うのではなく、人間ならではの分野を開拓していくことを勧めたいとのことだった。
また、他国との比較で見ると、日本は直近の約30年間、世界の中で唯一、経済成長がほとんどなく、賃金の上昇もなく、大半の経済指標で順位を落とし、このままでは遠くない将来に“先進国としてのステータス”を失うところまで来ている。大学のランキングやイノベーション率も先進国の中では低位に甘んじたままだ。結論として、これまで頼れた“日本国”、“日本企業”、“日本の大学”という肩書きだけでは、もはや世界は相手にしてくれない。従って、「個人の能力を徹底的に磨き上げ、国籍や所属組織の肩書に頼らず、自分ブランドで生きて行く」必要があるのだ。
印象記の続きは以下のPDFよりご覧ください。
司会:淺川吉章(1977機械物理、79 MS)蔵前ゼミ担当チーフ幹事
「一昨日、3日前の夕食に何を食べたかチャットで送ってください。」 冒頭から、一方的になりがちなオンライン授業でも、受講者との双方向コミュニケーションを図り、参画意識を高めるインターラクティヴなスタイルの蔵前ゼミでした。
講演テーマは「誰も正解を知らない“VUCA”の時代の生き方を考える」。我々の世代の多くにとっては今世界で起きていることは予想もしなかった「想定外」のことだと思いがちですが、これからは”VUCA”が常態になるということを認識しなくてはならないとの思いを強くしました。また、副題に「まずは現状を客観的に把握しよう」とあったように、日本の国力や企業・大学ランキングなどの推移を示され、目を背けることなく事実を直視して冷静に受け止めた上で、一人一人がどうすべきかを考えさせる授業でした。
授業で印象に残ったことの1つはSerendipity。秋山さんは学生時代に竹内弘高先生と出会ったことで、その後の目指す方向が決まったわけですが、「成功確率が高い選択肢を選ぶAIだったらこういう選択はしなかっただろう」というお話は大変示唆的だと思いました。
また、質問した学生が顔出し出来ない設定にしていたことに対し、「社会に出たらそれは許されない。アウトですよ」と明確に言ってくださったことからも、学生を思う気持ちが伝わってきました。
パネルディスカッションは「上司や組織から不正を指示されたらどうするか?」というテーマでしたが、パネラーの発言についてコメントするだけでなく、他のパネラーにこの意見をどう思うかと振るなど、名モデレーターぶりを発揮されました。
最後は、自分の能力を磨き上げるために一生勉強する、肩書に頼るのではなく自分が所属組織を引っ張っていく、そのためには一歩踏み出す(半歩、その場で足踏みでもいい)という行動を起こすことで道は開ける、というアドバイスで締めていただきました。
授業終了後には、蔵前ゼミがオンライン授業になってから初めての試みとして、希望者が講師と自由に話ができる雑談タイムを設けていただき、30分以上ご対応いただきました。エキサイティングな蔵前ゼミにしていただいたことに、改めて感謝申し上げます。