生命理工学系 News

エンジニアという仕事

令和4年度第5回(通算第96回)蔵前ゼミ印象記

  • RSS

2022.12.07

2022年11月4日、ZOOM遠隔講義にて、令和4年度第5回蔵前ゼミ(通算第96回)が開催されました。

蔵前ゼミは同窓生による学生・教職員のための講演会です。日本社会や経済をリードしている先輩が、これから社会に出る大学院生に熱いメッセージを送ります。卒業後の進路は?実社会が期待する技術者像は?

卒業後成功する技術者・研究者とは?など、就職活動(就活)とその後の人生の糧になります。

講師:鴨居 達明 先生

2005年 東京工業大学 工学部 機械宇宙学科卒業

2007年 東京工業大学 大学院理工学研究科 機械宇宙システム専攻 修士課程修了


鴨居達明先生

講師の鴨居達明 先生

当日の印象記を、博物館の広瀬茂久特命教授が綴りました。その一部をご紹介します。

 鴨居さんの話を聞くまでは、優れたエンジニアとは(1)高品質の製品が作れ、(2)問題解決能力に優れ、そして(3)オンリーワンの技術を身に付けた人と思っていたが、これは大いなる勘違いらしい。〔1〕品質・性能に関しては顧客の求める水準に合わせ設計・時間・コストのバランスを最適化することが重要で、〔2〕問題解決能力に関しては、先ず問題を見つけなければ、問題は存在しないのと同じゆえ、問題発見能力が大事になる。さらに、問題を解決した後にその方法を広く共有することも重要である。従って、問題発見力と発信力も必要なのだ。〔3〕オンリーワンの技術に関しては、しばらく前までは、「これは自分にしかできない、自分がいないとこの会社は立ち行かない…」という具合で優越的地位を保てたが、技術革新のスピードが速い現代では一つの技術にあぐらをかいていると、あっという間に時代遅れになってしまう。「新しい知識・技術を取り込み、発展させ、広めていく」というサイクルを生み出せることがエンジニアとしての一番の価値だと教わり納得した。
ロボコンに憧れて東工大に入り、IDCロボコン(International Design Contest)代表の座を射止める傍ら、小中学生に“もの作りの楽しさ”を知って貰うための実験・工作教室『東工大ScienceTechno』を立ち上げ、さらには高校生向けの大学広報誌『TechTech』の初代学生企画室員を務め、就職先としては、個人の守備範囲が広く自由度が高い外資系のSchlumberger社を選び、地下探査機器関連の仕事を続けてきた。容易に想像がつくように、鴨居さんは学生時代から夜遅くまで、しばしば徹夜で、仕事をすることが多かった。会社が22:00以降の勤務を禁じ、子供が生まれて定時に帰宅するようになってみると、働き方が大きく変わったにもかかわらず、“22:00まで”の頃と同等かそれ以上の成果が出せているそうだ。要は、気持ち次第で仕事の能率は驚くほど向上するということだろう。豊かで充実した人生につながる処方箋を貰った気がした学生も多かったに違いない。

印象記の続きは以下のPDFよりご覧ください。

山本恵一蔵前工業会神奈川県副支部長

「2022年度3Q蔵前ゼミを始めるにあたり」

山本恵一(1974電子、1976電気MS)蔵前工業会神奈川県副支部長

 中島支部長(所用のため欠席)に代わって挨拶させていただきます。蔵前ゼミの第3クォーターの基本テーマは「将来を決める君のキャリアデザインは」です。デザインのポイントの1つは、皆さんが“将来の自分の姿を思い浮かべられるか”ではないでしょうか。自分の10年後、20年後、あるいは30年後の姿を想像するのは、結構 難しいことだと思います。

 本日の講師の鴨居さんは卒業後15年で、次回の講師である村上さんは卒後28年になると聞いてます。皆さんが15年後、30年後を想像する上で大きなヒントになると思います。将来の自分の姿を重ねて、講師の経験談を聞くというのも一つの良い方法かと思います。

 それは、『文章を書く力』をつけておくことです。社会に出ると、報告・論文だけではなく、提案・企画書・ビジネスレター、あるいは週報など、色々な面でたくさん文章を書くことになります。皆さんにとって 恐らく一番身近なものは、エントリーシート、次は修論だと思います。この文章を書くということは、よく「センスの有無」と捉えられがちですが、実際は練習で身に付く“テクニック”です。それには3つポイントがあります: (1)書き方を知ってること、(2)言い回し、すなわち文章のパーツをたくさん習得していること、そして(3)たくさん文章を書くこと、この3点に尽きると思います。

 書き方は、学会などの論文作成のマニュアル、あるいは実用的な手引書も多数出版されているので、それらを参考にして下さい。ポイントは“起承転結”です。大変なのは文章のパーツ(言い回し)を身に付けることだと思います。そのためには、たくさんの論文や学会誌を読み込まなければなりません。小説もいいです。たくさん読むには時間がかかりますので、今から始めることをお勧めします。自分の考えや思うことを「簡潔な文章」で相手に伝え、理解してもらえるようになれば、社会人としての基盤は盤石なものになります。

    

 最後に、ちょっとした宣伝です: 神奈川県支部ではLINE公式アカウントによるチャットを始めました。イベント情報はもちろんですが、学生向けに就職情報などの動画を2023年1月末から2月には配信開始予定です。是非、配布資料のQRコードからサイトに入って、友達登録をし、活用してください。

淺川吉章蔵前ゼミ担当チーフ幹事

淺川吉章(1977機械物理、79 MS)蔵前ゼミ担当チーフ幹事からのコメント

 この度は素晴らしい蔵前ゼミをありがとうございました。
出身研究室のOB・OG会メーリングリストで蔵前ゼミの講師を募集した時に、「現役エンジニアである自分からエンジニアという生き方について発信したい。学生に少し先の未来を想像しながら聞いてほしい。」と手を挙げてくれたのが鴨居さんでした。

 テーマはずばり「エンジニアとは」。
シュルンベルジェというオイルフィールドサービス会社に入社して以来、エンジニアとして製品開発の上流から現場までさまざまな部署でのキャリアを通して、また学生時代の経験も踏まえ、鴨居さんが導き出した「答」を、数々のエピソードを交えながら説明してくださいました。

 講義を聞いて印象に残ったことの1つは、問題解決能力を「問題発見」×「問題解決」×「解決策の周知」と定義されたことです。「見つけなければ問題は存在しない」とはまさにその通りで、「常識」と思われていることでもフレッシュな目で見ることで内在する問題を見つけられるのは「新人の特権」というアドバイスは、これから社会に出る学生の皆さんに、是非心に留めておいてほしいと思います。

     

 また、解決策を広めるということは、「知られなければ無いのと同じ」ということと同時に、技術を囲い込まずに誰にでもできるようにすることで、自分に新しいことにチャレンジできる余力が生まれることにも繋がっているのだと納得しました。すなわち、「新しい知識・技術を取り込み、発展させ、広めていく」という「サイクル」を生み出せることこそエンジニアの一番の価値という、鴨居さんの哲学を感じた次第です。

 また、外資系企業では自分から動く必要があるというお話がありましたが、これは外資系に限らずどのような組織にあってもますます重要になる姿勢です。「More active, more free」自由だからアクティブになれるのではなく、自らアクティブになることでより多くの自由が得られる。こんな言葉を思い出しました。

 定刻をオーバーするほど学生から多くの質問が出るような、充実した蔵前ゼミにしていただいたことに、改めて感謝申し上げます。今後ますますのご活躍、ご発展をお祈り申し上げますとともに、引き続き母校と蔵前工業会へのご支援、ご協力をお願い致します。

  • RSS

ページのトップへ

CLOSE

※ 東工大の教育に関連するWebサイトの構成です。

CLOSE