生命理工学系 News

なぜ,どのようにして,一介の金属材料研究者が弁理士/弁護士への道を歩んだのか—限界を設定することなく 夢を持ち続けることの重要性—

令和5年度第2回(通算第99回)蔵前ゼミ印象記

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2023.06.12

2023年5月26日、ZOOM遠隔講義にて、令和5年度第2回蔵前ゼミ(通算第99回)が開催されました。

蔵前ゼミは同窓生による学生・教職員のための講演会です。日本社会や経済をリードしている先輩が、これから社会に出る大学院生に熱いメッセージを送ります。卒業後の進路は?実社会が期待する技術者像は?

卒業後成功する技術者・研究者とは?など、就職活動(就活)とその後の人生の糧になります。

講師:鮫島 正洋 先生

1985年 東京工業大学 工学部 金属工学科卒業


鮫島正洋先生

講師の鮫島正洋 先生

当日の印象記を、博物館の広瀬茂久特命教授が綴りました。その一部をご紹介します。

 物事の予期せぬ展開で,人生が狂ったり好転したりすることがある。鮫島さんにも運命の出会いがあった。ある異分野交流会で,まだ駆け出しの作家だった池井戸 潤(いけいど じゅん)と たまたま隣り合わせになり,名刺交換をした。小説の世界は鮫島さんにとっては全くの別世界だったので,それまで池井戸さんの存在を知る由もなく,「変わった苗字ですね」というのが第一印象だった。お互いに「庶民目線」という点で意気投合したのだろう,その後も二人でよく飲みに行くようになった。あるとき池井戸さんが「中小企業が絡む特許訴訟を扱った小説を書こうと思っている」というので,鮫島さんは 池井戸さんに自分たちの事務所に来てもらって 具体例を挙げながら説明した。しばらく時が流れたある日,新刊書『下町ロケット』(小学館,2010)が送られてきた。付箋には「お世話になった鮫島さんのこと 書いておきました」とあった。翌年,その本が直木賞に決まると,鮫島さんは「直木賞作品に登場する弁護士のモデルになった人」として一躍有名になり,講演依頼が殺到するようになった。ドラマ化され日曜日のゴールデンタイムに放映され始めると,ますます引っ張りだこの売れっ子となり,多い時は,年に100回近くも講演をこなしたそうだ。

 多忙の中,「本職の方は?」と心配になるが,そこは 事務所のスタッフが30名ほどに増え,頼りになる若手が育ってきて仕事を回してくれているので,安心なようだ。逆に,「先生,不祥事だけは絶対にダメですよ!うちの事務所に来るお客さんは,『下町ロケット』の“神谷弁護士”に会いに来ているのですから」とプレッシャーをかけられている。演劇ならばともかく,一生を通して神谷弁護士を演じ続けるのは大変だが,そういう運命と受け止め,逆にその知名度を利用して,鮫島さんたちの大目標『技術法務で日本の競争力に貢献する』に邁進している。中小企業やベンチャー絡みの政府系の各種委員会の座長を積極的に引き受けているのも,国を動かして日本の競争力を高めたいからだ。一介の法律事務所の努力より,国の施策の方が効果的に違いない。それには,真のオープン イノベーションがカギになると鮫島さんは考えている。

 本稿の前半では,自分の適性に関して苦悩し,日干しになりかけた鮫島さんが,いかにして上述のように「水を得た魚(うお)」になり得たかについて紹介したい。

印象記の続きは以下のPDFよりご覧ください。

淺川吉章副支部長、蔵前ゼミ担当チーフ幹事

淺川吉章(1977機械物理、79 MS)副支部長、蔵前ゼミ担当チーフ幹事からのコメント

 この度は素晴らしい蔵前ゼミをありがとうございました。鮫島さんの熱い思いのこもったメッセージは、学生のみならず、聴講させていただいたOB・OGの心にも強く響きました。

 事前に送っていただいたプレゼン資料はメッセージ性が高く、どんな話をしてくださるのだろうかと、大変楽しみでした。ゼミ当日は予想通り大変熱心に熱く語られ、3部構成のうち第2部までで予定の時間が迫りました。通常、蔵前ゼミに限ったことではありませんが、講師の方に「○○分で」とお願いしても長くなることが多く、切り上げていただくのに苦労するのですが、今回は逆に第3部のさわりだけでもお話しいただければと、「あと5分延長できます」とダイレクトメッセージをお送りしました。しかし、決められた時間になったので、とお話を切り上げられた姿勢に「プロフェッショナル」を感じると同時に、あのようなメッセージを送ったことを恥ずかしく思った次第です。

 今回のご講演やパネルディスカッションを通して、特に印象に残ったことを、順不同に挙げさせていただきます。

 ¶ 初めからできないだろうと自らに限界を設定することなく、何でもできるという前提で努力する。

 ¶ 夢と目標を持って、5年後の自分の姿をイメージして努力すれば、その夢が実現する。(夢を持つことで、劣等感から解放され、人より一歩先んじていると思えた。)

 ¶ 間違った方面(分野)で努力していると思ったら、すぐに方向転換する。

 ¶ (学生の今)自分にどんな才能があるかは分からない。学生時代の成績と、社会に出てからの成功は ほぼ相関がない。

 ¶ 技術を収益化するための要件をしっかり認識する。個人でも組織でも、プロダクトアウトよりもマーケットインのマインドを持つと、成功確率が格段に上がる。そして、

 ¶ 人生を幸せに生きることが、日本の競争力の向上につながる。

 質疑応答では、実際に質問できた件数の倍以上の積み残しがあり、フリートークセッションで質問した学生も複数いましたように、関心の高さが窺われました。

 この度は、メッセージがまっすぐ伝わる、熱のこもった蔵前ゼミにしていただきましたことに、改めて感謝致します。今後益々のご活躍、ご発展をお祈り申し上げますとともに、引き続き東工大と蔵前工業会へのご支援、ご協力をお願い申し上げます。

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