生命理工学系 News
生命理工学院 生命理工学系の星野歩子准教授が第18回(令和3(2021)年度)日本学術振興会賞を受賞しました。
日本の学術研究の水準を世界のトップレベルにおいて発展させるために、創造性に富み優れた研究を進めている若手研究者を見い出し、早い段階から顕彰してその研究意欲を高め、独創的、先駆的な研究を支援することを目的に2004年に創設された賞です。
受賞対象者は、人文・社会科学及び自然科学の全分野において、原則45歳未満で博士又は博士と同等以上の学術研究能力を有する者のうち、論文等の研究業績により学術上特に優れた成果をあげている研究者となっています。 受賞者には賞状、賞牌及び副賞として研究奨励金110万円が贈呈されます。
記念受賞式は2月3日に日本学士院にて開催される予定でしたが、新型コロナウイルス感染拡大により東京都を含めまん延防止等重点措置が適用されたことを踏まえ、中止となりました。
「腫瘍関連エクソソームによる転移機構の解明」
(Elucidation of Mechanism of Exosome-Mediated Metastasis in Cancer)
がん転移に臓器特異性があることは130年以上前から知られていましたが(seed and soil theory)、がん細胞がどの臓器へ転移するのかを規定する因子が何であるかは不明でした。
今回受賞対象となった研究では、がん細胞が分泌するエクソソーム(細胞外小胞の一種)を解析し、エクソソーム表面の特定のタンパク質を介して、遠隔臓器の特異的な細胞系列にエクソソームが取り込まれることを見いだしました。その結果、転移を誘導する前転移ニッチが形成され、がん細胞が臓器選択的に転移する機序を明らかにしました。さらに、血中に循環するがん細胞由来エクソソームのプロテオーム解析を用いて、がんの有無やがん種の同定ができることを見いだしました。
これらの成果は、前転移ニッチを標的としてがん転移を阻止する治療の開発や、がんの新規診断マーカーへの応用に発展する可能性が考えられます。
この度は日本学術振興会賞を賜りまして、大変光栄に存じます。コロナ禍ということで、残念ながら授賞式はキャンセルとなってしまいましたが、秋篠宮さまからのメッセージが添えられた記念品をいただき、受賞の喜びを感じております。今後もエクソソーム研究へ精進を重ね、邁進していく所存です。この場をお借りして、推薦いただいた日本女性科学者の会(SJWS)の皆様、そして日頃から私の研究生活を支えてくださっている多くの先生方や研究室の皆さんに、心より感謝申し上げます。