生命理工学系 News
令和2年度第4回(通算第83回)蔵前ゼミ印象記
2020年7月17日、ZOOM遠隔講義にて、令和2年度第4回蔵前ゼミ(通算第83回)が開催されました。
蔵前ゼミは同窓生による学生・教職員のための講演会です。日本社会や経済をリードしている先輩が、これから社会に出る大学院生に熱いメッセージを送ります。
卒業後の進路は?実社会が期待する技術者像は?卒業後成功する技術者・研究者とは?など、就職活動(就活)とその後の人生の糧になります。
当日の印象記を、博物館の広瀬茂久特命教授が綴りました。その一部をご紹介します。
かなり前から下足番は見かけなくなったが、人生訓の中では健在のようだ:『下足番を命じられたら、日本一の下足番になってみろ。そうしたら、誰も君を下足番にしておかぬ』(小林一三、阪急・東宝グループ創業者)。中村さんは入社早々、味の素(株)の電子材料部門に配属され、社名でもある商品「味の素®」を作る際の副産物を有効利用するといった合成技術を基盤として、パソコンのマザーボードや半導体パッケージ基板の絶縁体を開発することになった。まず、マザーボード用素材の改良に成功し、売り込みに行ったが全く相手にして貰えなかった。研究としては優れたものだったが、市場ニーズが皆無だったのだ。従来の低収益素材ビジネスから脱却するために、高収益の機能性材料の種を蒔く試みの一つだったのだが、芽が出る可能性がないと判断され、チームは解散となった。わずか入社4年目にしてのリストラ(子会社へ出向)とあって、ショックは大きかった。しかし、「下足番の話」ではないが、上司はよく見てくれていた;「新鮮な素材(テーマ・若者)も、ゴミ箱に入れてしまえば生ゴミになる」といって、進行中だった第二のテーマ「半導体パッケージ基板の層間絶縁フィルム開発」の道を閉ざすまいと奔走し、中村さん一人という超緊縮体制だが、継続できるようにしてくれた。ヤル気スイッチが入って2年、中村さんたちは半導体チップの受け皿として世界を制覇することになる製品『味の素ビルド アップ フィルム®(ABF)』を作り上げた。成功の要因と秘訣は?
印象記の続きは以下のPDFよりご覧ください。
足りないものを補うため、一生勉強で、今年の4月にBOND大学でMBAをおとりになったとのお話には、凄さを感じました。素晴らしいですね。ブレイクスルーは、個人或はピザ2枚(注文すれば足りる程度)の小チームによって成し遂げられるとのお話には、大いに納得致しました。大きく振れるブレイクスルーは、賛成者が少ないことが多いと思いますし、多くの人がそんなことが起こるとは考えられないことが起こるからブレイクスルーになるのだと思うからです。孤独の戦いだと思います。
学生時代は、自分自身の能力を伸ばす努力をし、そして、企業に入って、何らかの機会が与えられたら、好き嫌いをせず、兎に角、先ずは打ち込むことが重要であると考えています。なぜなら、自分自身の適性を正確に掴んでいない可能性もありますし、思いもよらない能力を有している可能性も大いに考えられるからです。そして、課題に対して、自分で考え、あがく、これが出来ないと社会では前に進めないですし、成功がありません。学生には、コロナの影響が大きい現状も、訓練の場としてポジティブに活用し、アイディアをひねり出す訓練をして欲しいと願っています。
今年はZoom講義ということで、大学に出てこられない学生の皆さんは、さびしい思いをしているのではないかと思います。そういう皆さんを励まそうと4人の先輩が熱弁を振るってくれました:(1)逆転人生ともいうべき「ロケットベンチャー」、(2)エンジニアリング クラウドや世界一のスパコン開発、(3)共創ラボでのイノベーションのジレンマとの闘い、そして今回の(4)リストラ寸前の苦境から半導体パッケージ基板の世界標準素材の開発はいずれも、皆さんのキャリアの参考になると思います。講師のキャリアも、大企業の内定をけってベンチャーを選んだ人、大企業から大企業に転職した人、大企業のなかでベンチャー精神を発揮した人、それぞれ違っていますので、幅広い視点で自分自身を見つめなおす機会にもなったのではないかと思います。東工大はリベラルアーツを大事にしてきていますので、この蔵前ゼミも皆さんの視野を広げより良いキャリア形成に役立てば幸いです。
※9月4日10:30 本文中に誤りがあったため、修正しました。