生命理工学系 News
令和2年度第2回(通算第81回)蔵前ゼミ印象記
2020年6月26日、ZOOM遠隔講義にて、令和2年度第2回蔵前ゼミ(通算第81回)が開催されました。
蔵前ゼミは同窓生による学生・教職員のための講演会です。日本社会や経済をリードしている先輩が、これから社会に出る大学院生に熱いメッセージを送ります。
卒業後の進路は?実社会が期待する技術者像は?卒業後成功する技術者・研究者とは?など、就職活動(就活)とその後の人生の糧になります。
当日の印象記を、博物館の広瀬茂久特命教授が綴りました。その一部をご紹介します。
宮澤さんの出身地はホタルの里として有名だ。技術革新と共に歩んだ宮澤さんの40年に及ぶ足跡はホタルの舞のように学生の心をとらえたに違いない。「人生の節目〃で、それまでの経験を通して学んだことや身につけた行動原則・考え方を、たとえZOOMを通してでも、後輩に伝え、参考にして貰うことができれば幸せだ」という宮澤さんの気持ちが伝わってきた。昨年、宮澤さんが富士通グループを無事、卒業したと同時にTechMate・Miyaを設立し技術コンサルタントを始めたのもうなずける。(1)ストップウォッチを片手に製造現場の効率化に3年、転職せずによく耐えたというタイミングで、(2)ロボット活用プロジェクトがスタートしメンバーに抜擢、製造現場から開発の現場へ、(3)ここで「コストの作り込みは設計で決まる」ことを実感し、製品の低コスト化につながるDFM(Design For Manufacturing)を追求し成果を上げるとともに、(4)製品の作り易さをコンピュータ上の3次元画像によって事前検証する技術開発に関わり、VPS(Virtual Product Simulator)というソフトウエア商品を開発した。これは、今や製品開発の“共通基盤プラットフォーム”として稼ぎ頭の1つとなっている。(5)1980~90年代の超円高時代を他社より一歩先を行く“らくらく携帯”や“防水スマートフォン”でしのぎつつ、(6)世界の頂点を目指し、スパコンの中央演算処理装置CPU(Central Processing Unit)用冷却技術や高密度の回路/実装技術を開発し、日本のスパコン「京」や「富岳」の性能世界一獲得に貢献した。“世界一達成”はプロジェクトメンバーを大きく成長させてくれたそうだ。
学生からの質問「1980年代は時価総額で世界のトップ10に入る日本の会社が7社もあり、Japan as No.1といわれたのに、現在ではトヨタの35位が日本勢で最高位とのことですが、その原因は?」に対する答えが印象深かった。日本では製品は“壊れてはいけない”とされ、それだけの高い技術力を有するが、海外勢は「壊れないに越したことはないが、壊れたら交換すればいい」と割り切っている。作る側も使う側も『許容範囲』を広げる意識改革が必要ではないかというのだ。コロナ後の世界では、「コストと性能バランス」、「オ-プンとクローズ戦略」を考えつつ、最後に宮澤さんが強調した「DX(Digital Transformation)を上手に使い“時間”を稼ぐ」スピード戦略に注力するのが良さそうだ。
印象記の続きは以下のPDFよりご覧ください。
宮澤さんは長野県辰野のご出身ですか。私は、隣町の伊那市の出身です。何となく、空気感が近い方だなと思ってお話を伺っていましたが、これで納得です。県歌「信濃の国」が歌える仲間なのですね。
さて、宮澤さんの「アートとサイエンス」、美意識に基づいた判断については、大いに共感致しました。学生も、是非とも美しいアイディア創造、美しい製品構築に向けて感性を磨いていってほしいと思いました。アートは美しいセンス(感性)、美しい説明、美しい製品、魅力ある製品を作るのために不可欠であり、非常に重要と私も常々考えていました。ノーベル賞受賞者である北里大学の大村 智先生とは、お話をしたことがありますが、山梨県に素晴らしい美術館をお持ちです。アートに造詣が深い科学者、経営者は多いですよね。
私も、美的センスを鍛錬するため、絵画を見たり、美しい景色を見に行ったり、宝塚歌劇を見たり、楽しみながら、勉強もしました。どの程度、役立ったかは分かりませんが。何を作るにしても、何を考えるにしても、それを美しく仕上げることが重要で、成功のカギを握っていると思います。
また、「常に挑戦者であれ、どの時代でもベンチャースピリッツを忘れるな。」とのモットーは、素晴らしいと思いますし、若々しいお考えで、学生も心を揺さぶられて欲しいものです。有益なご講演、活発なパネルディスカッション、まことに有難うございました。