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リベラルアーツ教養講座「ワーグナー『ニーベルングの指輪』のコスモロジー」第3回開催

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2016.11.14

リベラルアーツ研究教育院の山崎太郎教授による連続講演会の第3回「ライトモチーフ-ワーグナーの音楽技法」が、10月26日(水)、大岡山キャンパス西5号館W541で開催されました。

山崎教授自らの手書きの図による説明

山崎教授自らの手書きの図による説明

第3回は、これまでの講座内容をコンパクトに解説するところからスタート。

山崎教授は、映像と音楽を交えながら、ドラマの展開そのものと、「ライトモチーフ」と呼ばれる音楽技法、登場人物ジークリンデに起きた心理現象「フラッシュバック」についてなどを、詳しく複合的に語っていきます。

ドラマは、ジークリンデとジークムントの愛、歓喜と絶望、狂乱、ブリュンヒルデの自我の目覚め、ジークムントの死、ジークリンデの受胎告知、ジークフリート命名と展開していきます。そこには、ワーグナーの「人は神よりも尊く、人間は神の完成態である」という考えが貫かれていると山崎教授は語ります。

その作品の中で用いられているライトモチーフとは、舞台上にはない事物・人物・観念などを聞き手の意識に呼び起こす、特定のメロディー・リズム・和音とされています。

それは、作品の中に繰り返し現れ、聴き手の無意識の次元に働きかけて、深々としたイメージを作り上げます。

山崎教授は、ライトモチーフの技法があってこそ、ワーグナーの音楽は成立するとし、また、その中でのオーケストラの存在について、「オーケストラは実際の舞台が立脚する硬く凍り付いた動かざる地面をいわば、流れるように柔らかく、感受性に富む、霊気に満ちた水面へと溶解する」(『未来の芸術作品』1849年)という文章を引用し、ワーグナーの最上の文章の一部であると紹介しました。

また、ジークリンデの激しい言動、狂乱について、その時点までに起きてきたことに対する彼女の絶望に、幼児期の体験のフラッシュバックが一気に加わっていったことも説明されていきます。

彼女自身が、自分自身を守るために、心に呼び覚ますことも、言葉にすることさえもなく来た恐怖の体験が、心身の極限状態の中で一気に表出し、彼女を突き動かしたのです。

今回の講座は、ワーグナーファンでなくとも、音楽や心理学の理論としても堪能できる内容で、来聴者は、ワーグナー自身の深層心理からドラマが創出され、音楽作品となり、その音楽が聴き手の深層心理に働きかけること、それによって、聴き手もそれぞれ自分のイメージのなかにワーグナーのドラマ世界を作り上げていくのだということを認識しました。

また、聴き手が、作品をストーリーとして表面的に楽しむだけではなく、心の奥底から揺り動かされ感動し、そのみずみずしい心の動きに身をゆだねることができる、これこそがワーグナーの音楽の魅力であると改めて感じ入りました。

最後の質疑応答の際、ライトモチーフについての山崎教授からの回答を聞いた男性は、「40年以上、ずっと疑問に思っていたことが、今日はっきり理解できました。本当にありがとうございます。」と語っていました。

熱心な来聴者の質問に答える山崎教授

熱心な来聴者の質問に答える山崎教授

次回は、いよいよジークフリートの登場へとストーリーは展開していきます。

開催は、11月16日(水)18:00~21:00予定 (開場 17:30)です。

テーマは「『ジークフリート』-森と世界のトポロジー」となっております。

前後半、90分ずつの2部構成で、講座資料も用意されています。一回ごとに独立した内容で、第4回からでも、お楽しみいただけます。

お問い合わせ先

リベラルアーツ教養講座事務局

E-mail : ila2016@ila.titech.ac.jp

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