リベラルアーツ研究教育院 News
~「第28回蔵前立志セミナー」医歯・理工の学生が若きOBから志のヒントを得る~

2026年4月27日、東京科学大学リベラルアーツ研究教育院(以下、ILA)は一般社団法人 蔵前工業会東京支部と共催で「蔵前立志セミナー」(第28回)を開催しました。今回は「若手社会人が語る学生時代と未来」をテーマに、医歯系・理工系の3名のOBが登壇。医歯系と理工系の全1年生が大岡山キャンパスで学ぶ「大岡山Day」※に合わせて開催されました。
※ 大岡山Dayは、学士課程新入生が共通の必修科目「立志プロジェクト」を学び、学院・学部の垣根を超えた相互交流を図ることを目的に実施されています
蔵前立志セミナーは、在学生と卒業生が知的刺激に富んだ交流を行う場として、蔵前工業会東京支部とILAが共催する課外セミナーです。今回は、医療系ベンチャー、ものづくり系ベンチャー、大企業エンジニアというそれぞれ異なるキャリアを歩む3名の若手OBが、学生時代の経験と現在の仕事について語りました。
講演1:歯科医師が発明した「しゃべれるマウスピース」 ― 医療とものづくりの越境 ─
山田大志氏(東京医科歯科大学大学院卒・東京医歯学総合研究所 代表取締役)

山田氏は、摂食嚥下リハビリを専門とする大学院在学中に、声を失った患者向けのマウスピース型人工喉頭「ボイスレット」を発明し、その後起業するに至った経緯を紹介しました。研究資金の確保が困難な中、クラウドファンディングで約2,000万円を調達。「クローズドイノベーション」の限界を越え、国内大手メーカーや医療機器メーカー、全国の歯科医院と連携するオープンイノベーションによって製品化を実現し、2024年2月には内閣府主催「日本オープンイノベーション大賞」内閣総理大臣賞を受賞しました。「工学部出身の方が、それとは異なる分野の趣味や特技を持っていれば、それはオンリーワンの強みになり得る。学生のうちに、人とは少し違う経験を積んでほしい」と学生にメッセージを送りました。
講演2:ロボット競技をスポーツ文化に ― 個人の夢をビジネスへ ─
関根史人氏(東京科学大学(旧東工大)工学院経営工学系卒・株式会社ロボットスポーツゲームズ 代表取締役)

関根氏は、入学直後から大学内にある「ものづくりセンター」に通い詰め、卓上工作機械の開発から展示会出展、経産省「未踏IT人材育成事業」採択、そしてロボット競技チームの運営と、在学中に多彩な活動を展開した経験を語りました。卒業後は一時、株式会社NTTドコモでロボット遠隔操作の研究開発に携わり、現在は自ら「ロボットスポーツ」という新たなスポーツ文化の普及を目指す会社を起業、経営しています。「Science Tokyoは学生個人への支援制度が充実している。強い思いを持って動けば、応援してくれる環境がある。まず学内で形にして、そこから学外に出てみてほしい」と後輩へのエールを贈りました。
講演3:大企業エンジニアのリアル ― 原子力分野を歩んだ15年 ─
和田将樹氏(東京科学大学(旧東工大)工学院電気電子系修士卒・中部電力株式会社)

和田氏は、東日本大震災を契機に原子力の道を志し、株式会社日立製作所と中部電力株式会社で原子炉材料の試験評価の技術開発や浜岡原子力発電所の廃炉手続きに関わってきた経験を紹介。大企業の信用力や、チームで仕事をするメリットなどを率直に語る一方で、学生時代に蔵前工業会 会員部会 学生分科会の初期メンバーとして活動した経験が人脈づくりに生きていることも振り返りました。「仲間は大切にしてほしい。同窓の仲間は、社会に出てから最も相談しやすい存在になる。また、実学だけでなく、学生時代にしか経験できないことに広く触れてほしい」と締めくくりました。
講演後のパネルディスカッションでは、「起業と大企業に就職することの、それぞれのメリットは何か」「特許はどのように学んだか」「10年後のビジョンは」といった学生からの質問に、それぞれが実体験を交えて回答。大企業を経験することで内部の意思決定プロセスが理解でき、それが起業後の交渉にも生きるという気づきや、特許は「必要に迫られて学んだ」という率直な声など、学生に響くエピソードが共有されました。