電気電子系 News

Pham研のHiepさん(D3)の研究成果がFeatured Articleおよびサイエンスハイライトとして米物理協会の学術誌に掲載

Siテクノロジへのスピン機能デバイスの創製に貢献

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2017.12.18

ナノスケールSiバルブデバイスの模型とSEM写真

ナノスケールSiバルブデバイスの模型とSEM写真

近年にSiデバイスの微細がナノスケールまで進み、さらなる性能向上に限界が見えてきます。そこで、Siデバイス技術に付加価値を加えるMore than Mooreという新しい研究が盛んに行われます。その一つはSiデバイスに磁性の不揮発性を加えるSiスピントロニクスに関する研究です。具体的には、磁性体からSi半導体のチャンネルへのスピン注入、チャンネル中のスピン伝送および磁性体によるスピン検出によって、トランジスタ機能と不揮発性メモリ機能を融合し、高密度不揮発性メモり、柔軟で再構成可能な論理回路、ニューロ回路など、新しい機能性を生み出そうとします。

しかしながら、磁性体とSiの間に伝導率が数桁も異なるため、拡散伝導においてSiチャンネルへのスピン注入効率が悪くなる傾向があります。これは「伝導率不整合」と呼ばれています。実際に、先行研究においてSiチャンネルが数µmと長いために、スピン依存伝導による信号が数µV~1mV程度で、印加電圧に対して0.01%~0.1%程度しか信号が得られず、実用的ではありませんでした。そこで、Pham研究室の博士課程のHiepさんが磁性体と半導体チャンネルの間に存在する「伝導率不整合」を根本的に解決するために、極ナノ微細加工技術を駆使し、20nm程度のSi半導体チャンネルおよび分子線エピキタシャル結晶成長技術を用いて作製したFe/MgO/Geの高品質なスピン注入とスピン検出源を有するナノスケールSiスピンバルブデバイスを作製し、バリスティック伝導に近い状態でスピン依存伝導特性を評価しました。その結果、最大で電圧変化率が3%、電圧変化量20mVという世界最高性能を実現しました。また、温度の低下によって、信号の符合が逆になる逆スピンバルブ効果も観測しました。

実際にメモリデバイス等に応用するためには、電圧変化率が10%、電圧変化量100mV以上が必要とされています。今回の成果はこの目標に向けた重要な一歩です。

本研究成果は米国物理協会のフラグシップ学術誌のひとつであるJournal of Applied Physics誌のFeatured Articleとして掲載されました。また、米国物理協会のサイエンスハイライトにも選べられ、解説記事が掲載されました。

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