生命理工学系 News
生命理工学コース
教授 瀧ノ上 正浩
キーワード | 人工細胞・人工細胞核、DNAナノテクノロジー、生物物理、ソフトマター、分子ロボティクス、合成生物学、マイクロ流体工学 |
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WEBサイト | 瀧ノ上 研究室 |
生命システムは我々の宇宙の中で最も複雑なシステムの一つです。生命システムには、非生命の単純な物質システムにはないダイナミックな自律性、思いもよらない機能の創発、さらには知性(情報処理)など、興味深い豊かで複雑な時空間秩序現象が見られます。生命システムは複雑ではあるけれども、非生命の物質システムと同様に分子などの通常の物質系からできており、材料的には本質的な違いはありません。それでは、非常に多様な種類の分子を混ぜて、小さな容器の中に閉じ込めたら、それは生命システムになるのでしょうか。おそらく、部分的には生命システムの持つ機能を再現することができますが、これだけでは生命システムそのものにはならないでしょう。その違いは何なのか、両者の境界は何なのか、ということを明らかにしていくこと、および、その過程で得られた原理を応用して新しい科学技術を生み出していくことが当研究室の研究テーマの根底にあります。
現在、生命システムに見られる自己組織化や自律性を備えた複雑な現象の原理を解読し、それらの機能を取り入れた人工分子システムを構築することは、基礎科学的にも工学的にも究極的な目標の一つです。このような観点から、当研究室は、生命システムのような非平衡下で動的に自己組織化するシステムの構築原理の解明と、設計・構築・制御手法の構築をめざして研究を進めています。
具体的には、生体高分子やソフトマターを材料として生命システムのような複雑な生体分子システム(人工細胞、人工細胞核)や分子情報デバイス(DNAメモリ、DNAコンピュータ、分子ロボット)を創成しています。このような研究を通して、生命とは何か探求したり、生命システムを情報学的・物理学的な視点で考えたり、また、創り出された分子システムの応用により、他の分野への貢献を目指したりしています。このような分子システムを創り、理解するための手法として、近年、非常に発展しているDNA/RNAナノテクノロジーや、超精密科学を支えている微細機械工学(MEMS、マイクロ流体工学)、および、ソフトマターの生物物理学を利用しています。近年の研究成果には以下のようなものがあります。
本研究では、Y字型のDNAナノ構造をネットワーク状に会合させてDNAでできたゲルを構築しています。今までの研究で、DNAゲルは液滴のような振る舞いを見せることが分かってきました。近年、実際の細胞の中で、核酸やタンパク質の相分離の研究が進展し、生命機能に深く関わっていることが分かってきました。本研究では、DNAゲルをそのモデル系として探求するとともに、人工細胞や人工細胞核・人工染色体への応用を目指しています。(オリジナル論文[1])
DNAオリガミは、長鎖の一本鎖DNAを多数の短鎖の一本鎖DNAのハイブリダイゼーションによって、クリップ留めするようにフォールドさせて、約 100 nm × 100 nm のサイズの様々なDNAナノ構造を自由に構築する技術です。この研究では、DNAオリガミを利用した分子ナノテクノロジーや、界面のソフトマター物理学の研究を行っています。この技術を利用し、DNAオリガミを膜とする人工細胞膜の構築を行っています。膜がDNAナノ構造でできているので、DNAナノ構造の形状や機能をデザインするだけで、膜カプセル自体の性質をコントロールすることができるため、機能性カプセルの開発や細胞型の分子ロボットの構築に利用できると考えています。(オリジナル論文[2])
人工細胞を頑強にする DNA 人工細胞骨格:我々の体を構成する細胞は、細胞骨格と呼ばれるネットワーク構造により非常に安定になっています。リポソームは薬の輸送用カプセルや化粧品の材料として使われてきましたが、細胞骨格のような構造が無いため、わずかな刺激により壊れてしまう問題がありました。本研究では、DNAナノテクノロジーによってDNAゲルでできた人工的な細胞骨格を作製し、リポソームの裏打ち構造として利用しました。この人工細胞骨格を持つリポソームは、従来の骨格を持たないリポソームが壊れてしまうような刺激に対しても崩壊せず、その形を維持しました。リポソームの耐久性を高めることは、薬用カプセルや化粧品などへ応用する上での最も大きな課題でしたが、今回の成果によりこの問題が克服される可能性があります。(オリジナル論文[3])
マイクロ流体システムによる細胞サイズの非平衡開放系微小反応リアクタを構築しました。細胞サイズの体積(∼ピコリットル)の反応溶液で、物質の供給と散逸をコンピュータで動的に制御できる、より細胞システムに近い非平衡状態を実現しました。分子反応制御とコンピュータ制御によるハイブリッド型人工細胞の構築も目指しています。(オリジナル論文[4])
2002年 | 東京大学理学部物理学科 卒業 |
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2007年 | 東京大学大学院理学系研究科物理学専攻 修了 博士(理学)取得 |
2007-2008年 | 日本学術振興会特別研究員(PD) |
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2008-2009年 | 京都大学大学院理学研究科物理学第一教室 博士研究員 |
2009-2011年 | 東京大学生産技術研究所 特任助教 |
2011-2015年 | 東京工業大学大学院総合理工学研究科知能システム科学専攻 講師 |
2015-2016年 | 同専攻 准教授 |
2016年-現在 | 東京工業大学情報理工学院情報工学系 准教授(現職) |
2018年-現在 | 同大生命理工学院生命理工学系 副担当 |
2011-2015年 | JSTさきがけ「細胞機能の構成的な理解と制御」 研究者(兼任) |
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2013年 | お茶の水女子大学理学部非常勤講師(兼任) |
2018年 | École Normale Supérieure, Paris, France 招聘教授(兼任) |
2013年 | 平成25年度「東工大挑戦的研究賞」学長特別賞受賞 |
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2017年 | 平成28年度「東工大の星」授与 |
2017年 | 平成29年度 文部科学大臣表彰 若手科学者賞受賞 |
※この内容は掲載日時点の情報です。最新の研究内容については研究室サイトをご覧ください。