生命理工学系 News
私たちの研究分野は一括りにすれば「システム生命学」と呼ぶことができます。個々の具体的研究対象は広範にわたっております。これは「生命」を見る立ち位置と、研究を担当する学生の適正から自然に分かれてきたものです。「生命を対象としたシステム科学」というメタな学問としては、ひとまとまりのものと考えています。この「システム生命学」を私たちは3つの領域に捕らえています。
それぞれの側面はお互いに強く関連しています。「生命に学ぶ」と「生命を知る」は、手法・基礎と応用の関係にあります。また、「生命に学ぶ」と「生命を創る」は設計モデルと実験・実装の関係、「生命を知る」と「生命を創る」は理学と工学の関係にあります。 私たちの研究室では、システム科学というメタな学問を通じて新しい領域を切り開くという局面の性格と、テーマと学生のマッチングという教育上の方針から、特定の対象について集中することはあえて避けるようにしています。具体的なテーマとして、これまでどんなことが研究され、現在どんなことを研究しているかについては、それぞれの紹介をご覧ください。
キーワード | システム生命学、合成生物学、人工生命、人工知能、システム科学 |
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Webサイト | 山村研究室 |
生命は長い年月をかけ、より環境に適応するように様々な進化をしてきました。その結果、多種多様な生命が生まれ、独自の特性を持ち合わせています。環境に適応するために最適化された形態・構造・行動様式の中には、目を見張るような複雑で高度な仕組みが多く存在します。これらの生命の持つ仕組みを理解し、そこから学ぶことで、今まで解決できなかった問題へアプローチすることが出来るようになります。
生命は私たちにとって最も身近なものでありながら、その仕組みについてはまだ何も知られていないに等しいといえます。生命の謎に迫るための鍵は情報とシステムです。単に、生命を構成する元素は何かといえば、それについてはすでによく知られています。しかし、これらを個別に扱っても生命は理解できません。生命はこれらを複雑に構成し、全体として成り立っているのです。生命が織り成す情報とシステムを読み解くことこそが、生命の本質を知ることだといえます。
研究者が所望する特性を持った生命システムを、設計し"つくる"研究が近年行われています。生体分子による化学反応の自律制御を利用した計算機をつくる"分子コンピューティング"、生体分子から成る構造物やアクチュエータをつくる"分子ロボティクス"、人工の生体分子ネットワークを組み込むことにより所望の特性を生物に持たせる"合成生物学"を当研究室では研究しております。これらの研究には、生命システムの原理の理解という理学目的や、分子ロボットや細胞をシャーシとした生物ロボットを医学・工学的に役立てる目的があります。
生命理工学コース(情報工学系 知能情報コース 主担当)
教授 山村雅幸
1989 | 東京工業大学総合理工学研究科後期博士課程 満期退学 |
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1990 | 工学博士(東京工業大学) |
1989- | 東京工業大学総合理工学研究科 助手 |
1996- | 同 助教授 |
2004- | 同 教授 |
2016- | 東京工業大学情報理工学院 教授(現在に至る) |
1999 | ニューヨーク州立大学ビンガムトン校 客員助教授 |
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2003- | 東京医科歯科大学大学院疾患生命科学研究部・生命情報科学教育部 客員准教授 |
2009- | 同 客員教授(2012まで) |
山村研究室の成果は以下のWebページを御覧ください
伝統的な大学教育の理想は、豊かな教養と深い専門性の「Τ型」人材育成です。現代では専門を二つ以上持つ「Π型」になれと言われます。実際に自ら勉強し、学生に教育してみると、ものすごく難しいのです。特に、短期間で同時に複数の専門を学ぶと、どちらも不十分な小文字の「π型」になってしまう危険性があります。私は、自分の主専門を確立して「Τ型」となった後に、他分野の良質の基礎を学んで「Γ型」となり、ゆっくり時間をかけて「Π型」に育ててゆくのが良いと考えています。挑戦はするが無理はしないのがモットーです。
※この内容は掲載日時点の情報です。最新の研究内容については研究室サイトをご覧ください。