生命理工学系 News

【研究室紹介】 朝倉研究室

光のエネルギーで酵素を動かし水素をつくる

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2017.01.23

生命理工学系にはライフサイエンスとテクノロジーに関連した様々な研究室があり、基礎科学と工学分野の研究のみならず、医学や薬学、農学等、幅広い分野で最先端の研究が活発に展開されています。

研究室紹介シリーズでは、ひとつの研究室にスポットを当てて研究テーマや研究成果を紹介。今回は、光駆動型反応デバイスの開発を行う、朝倉研究室です。

講師 朝倉則行

生命理工学コース
講師 朝倉則行別窓

キーワード 生物電気化学、光励起電子移動、光水素発生反応、バイオ電池
Webサイト 朝倉研究室別窓

研究紹介

生物の電子移動化学 ~光と電気のバイオテクノロジー~

  • 光と電気と生物

光と電気と生物

生物と電気(電子の流れ)にはどんな関係があるのか?私たちの体の中では、たくさんの電気が流れています。私たちのからだのエネルギーは、細胞内での燃料電池によって作られています。食べたグルコース(糖)が二酸化炭素になる反応と呼吸で得た酸素が水になる反応を組み合わせた約1 Vの電池です。

生物においての光化学反応の代表は光合成です。「糖と酸素の燃料電池」の逆向きの反応を光のエネルギーを使って進行させています。ここでは、太陽光のエネルギーを電気に変換し、さらには、物質に変換する反応が進行しています。

  • 光と電気とバイオを融合した物質生産デバイス

生物のエネルギー生産の仕組みを利用し、光を使って物質を作る反応を研究しています。「光 → 電子 → 物質」の変換において、タンパク質を利用すると電気の流れに有利になり、また、物質変換に酵素を利用すると、反応が速いので、光のエネルギーを有効に利用できます。これらを使って、光と電気とバイオを融合させた光駆動型反応デバイスの開発をしています。

水から水素を生産する酵素を利用して、光水素発生の反応系をガラスの表面構築したデバイスを作っています。光を吸収する分子、電気を流す分子、酵素を規則正しくガラス表面に並べることによって、電気がスムーズに流れて効率の良い水素発生反応が進行します。

また、タンパク質内部の電気の流れを調べる新しい方法を開発しています。タンパク質に電気が流れる時の電流の向きや電気抵抗、電気容量を知ることによって、今後、戦略的に光駆動型反応デバイスを開発することができると考えています。

光と電気とバイオを融合した物質生産デバイス

研究成果

代表論文

  • [1] Shaw Nishizawa, and Noriyuki Asakura. Intramolecular electron transfer of [Ni-Fe]-hydrogenase monitored by spectroelectrochemistry with a porphyrin indicator. Chemistry Letters *2014 *43, 524-526
  • [2] Sim Sanghoon Noriyuki Asakura. Analysis of a high redox potential heme in tetraheme cytochrome c3 by direct electrochemistry. Electrochemistry Communications, 2013, 34, 161-164
  • [3] Eisuke Kobayashi Yo Hirose, Toshiaki Kamachi, Kenji Tabata, Ichiro Okura, and Noriyuki Asakura. Investigation of the key heme in cytchrome c3 to the electron pool effect by highly sensitive EQCM technique. Electrochemisty 2012 80 (5) 312
  • [4] Noriyuki Asakura, Ryohei Goto Toshiaki Kamachi, Ichiro Okura. Electron transfer from hydrophobic porphyrin to hydrophilic viologen via the photoexcited singlet electron transfer. Chem. Let., 38, 2009, 1200-1201
  • [5] Shin Iida, Noriyuki Asakura, Kenji Tabata, Ichiro Okura and Toshiaki Kamachi. Role of positive charge of lysine residue on cytochrome c3 for electrostatic interaction with hydrogenase. Journal of Porphyrins and Phthalocyanines, 11(1), 2007, 66
  • [6] Shin Iida, Noriyuki Asakura, Kenji Tabata, Ichiro Okura, and Toshiaki Kamachi. Incorporation of unnatural amino acid into cytochrome c3 and specific viologen binding to the unnatural amino acid. ChemBioChem, 7, 2006, 1853-5
  • [7] Noriyuki Asakura, Kara Mochizuki, Toshiaki Kamachi, and Ichiro Okura. Development of novel optical oxygen sensing system based on stationary T-T absorption. Measurement Science and Technology 17(6) 2006 1237-1241
  • [8] Noriyuki Asakura, Toshiaki Kamachi, and Ichiro Okura. Motion of redox molecule in solution monitored by highly sensitive EQCM technique. Research on Chemical Intermediates 32(3-4), 2006, 341-355
  • [9] Noriyuki Asakura, Toshiaki Kamachi, Ichiro Okura. "Direct monitoring of the electron pool effect of cytochrome c3 by highly sensitive EQCM measurements" J. Biol. Inorg. Chem, 9, 2004, 1007-1016.
  • [10] Noriyuki Asakura, Toshiaki Kamachi, Ichiro Okura. Application of electrochemical quartz crystal microbalance technique on direct monitoring of cytochrome c3 function as the electron pool during intermolecular electron transfer. Analytical Biochemistry, 314, 2003, 153-157.

主な日本語総説

  • [1] 朝倉則行 次世代のバイオ水素エネルギー開発 CSJカレントレビュー
    エネルギーから理解するバイオ水素生産 2014年 印刷中
  • [2] 朝倉則行・大倉一郎 酵素ヒドロゲナーゼを用いた光水素発生反応
    月刊機能材料 2012年1月号
  • [3] 南後守・朝倉則行 光合成の基礎 CSJカレントレビュー
    人工光合成と有機系太陽電池 2010年 7月5 7
  • [4] 朝倉則行・大倉一郎 電子移動の秩序を守るタンパク質:
    化学2007, Vol.62 化学同人: 64-65

著書

  • [1] 「生物物理化学」朝倉則行・蒲池利章・大倉一郎 化学同人 2008年

教員紹介

朝倉則行 講師 博士(工学)

2002年 日本学術振興会 特別研究員DC
2003年4月 東京工業大学 大学院生命理工学研究科 博士課程 修了
2003 - 2004年 オックスフォード大学 化学科 博士研究員
2004 - 2005年 筑波大学 大学院人間総合科学研究科 博士研究員
2005 - 2007年 東京工業大学 大学院生命理工学研究科 助手
2007年12月より 現職
教育活動
学部:物理化学第二、生物物理化学、酵素工学
大学院:生物物理学
所属学会
日本化学会、電気化学会

教員からのメッセージ

朝倉講師より

新しい測定法をつくり、今まで見えなかった生命現象を知る楽しさを感じてみませんか。

エネルギーの面から生命を眺め、よく理解し、よく使う。新たなバイオの可能性を探索しよう。

チームワークとコミュニケーションを大切にしながら、笑顔で研究しましょう。

お問い合わせ先

講師 朝倉則行
大岡山キャンパス 緑が丘6号館 301C号室
E-mail : nasakura@bio.titech.ac.jp

※この内容は掲載日時点の情報です。最新の研究内容については研究室サイト別窓をご覧ください。

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