生命理工学系 News

【研究室紹介】 中島研究室(~2017.11)

微生物を群集のまま解析して利用する

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2016.12.01

生命理工学系にはライフサイエンスとテクノロジーに関連した様々な研究室があり、基礎科学と工学分野の研究のみならず、医学や薬学、農学等、幅広い分野で最先端の研究が活発に展開されています。

研究室紹介シリーズでは、ひとつの研究室にスポットを当てて研究テーマや研究成果を紹介。今回は、微生物群集のダイナミクスの解明に挑む、中島研究室です。

※中島准教授は2017年12月1日、東工大より転出しました。

准教授 中島信孝

生命理工学コース
准教授 中島信孝

キーワード 微生物代謝工学、RNA工学、遺伝子サイレンシング、有用物質生産、バイオフィルム、メタゲノム、応用微生物学

研究紹介

微生物の言い分に耳を傾け、人間社会との調和を図る

微生物は、土壌、水中、動植物の生体中など、地球上のあらゆる場所で生活しています。おそらく、微生物諸君にあっては現状の生活空間が快適な状態にあるのでしょう。しかし我々人間は、彼らのライフスタイルについて知らなさすぎます。例えば、彼らの多くが、多種類の微生物が密に相互作用しながら生活する「微生物群集」として存在しており、我々が実験室で単離培養できるものはたったの数パーセント程度だと言われています。また、水中に浮遊しているものも、何らかの支持体に固着しているものもありますが(後者の生活状態が大多数だとも言われます)、実験室内で行われる培養は専ら浮遊状態で行われ、固着性微生物の研究は大きく遅れています。

私はまず、微生物の群集としてのライフスタイルを知ることから研究を始めようとしています。身近な例では、台所の流し台にはヌメリのあるスライム状の構造体がよく現れますが、これはバイオフィルムと呼ばれる微生物群集が固着したものです。人間には忌み嫌われますが、彼らには彼らなりの理由があってそこに存在しているはずです。また、人間の体内にも無数の微生物が生活していますが、彼らもヒト細胞や他種微生物と共存することで快適な住環境を構築しているはずです。そして、これらの研究から得た知見を基に、不要な微生物(群集)を除去する技術や、体内の微生物群集を人為的に適正な状態に保つ技術を開発したいと考えています。

どうすればこのようなダイナミックな膜の新生を引き起こすことができるのでしょうか?

さらには、微生物群集から有用な遺伝子を多種多様な微生物から「発掘」し、培養が容易な微生物(大腸菌など)に移入することで、培養の可否にかかわりなくそれら遺伝子を利用可能にすることを目指します。これによって、地球上の遺伝子資源を使い尽くすことができるわけです。

土壌に住む多種多様な微生物は、観察はできても、単利培養ができないものが大多数

土壌に住む多種多様な微生物は、観察はできても、単利培養ができないものが大多数

試験管にできたバイオフィルムとその形成機序。身近なバイオフィルムの例として、歯のプラーク、台所のシンクのぬめりが挙げられる。

試験管にできたバイオフィルムとその形成機序。
身近なバイオフィルムの例として、歯のプラーク、台所のシンクのぬめりが挙げられる。

単離培養できない微生物でも、ゲノムDNAを取得して、培養が簡単な大腸菌に移入し研究することは容易。

単離培養できない微生物でも、ゲノムDNAを取得して、培養が簡単な大腸菌に移入し研究することは容易。

研究成果

代表論文

  • [1] Nakamura, Y., Yamamoto, N., Kino, Y., Yamamoto, N., Kamei, S., Mori, H., Kurokawa, K., and Nakashima, N. (2016) Establishment of a multi-species biofilm model and metatranscriptomic analysis of biofilm and planktonic cell communities. Appl. Microbiol. Biotechnol.100, 7263-7279.
  • [2] Akita, H., Nakashima, N., and Hoshino, T. (2015) Bacterial production of isobutanol without expensive reagents. Appl. Microbiol. Biotechnol.99, 991-999.
  • [3] Nakashima, N., Akita, H., and Hoshino, T. (2014) Establishment of a novel gene expression method, BICES (biomass-inducible chromosome-based expression system), and its application to the production of 2,3-butanediol and acetoin. Metab. Eng. 25, 204-214.
  • [4] Nakashima, N., Ohno, S., Yoshikawa, K., Shimizu, H., and Tamura, T. (2014) A vector library for silencing central carbon-metabolism genes with antisense RNAs in Escherichia coli. Appl. Environ. Microbiol. 80, 564-573.
  • [5] Nakashima, N., and Tamura, T. (2013) Gene silencing in Escherichia coli using antisense RNAs expressed from doxycycline-inducible vectors. Lett. Appl. Microbiol. 56, 436-442.
  • [6] Nakashima, N., and Tamura, T. (2012) A new carbon catabolite repression mutation of Escherichia coli, mlc*, and its use for producing isobutanol. J. Biosci. Bioeng. 114, 38-44.
  • [7] Nakashima, N., Goh, S., Good, L., and Tamura, T. (2012) Multiple-gene silencing using antisense RNAs in Escherichia coli. Meth. Mol. Biol. 815, 307-319.
  • [8] Nakashima, N., Goh, S., and Tamura, T. (2012) Subtracting gene function by gene silencing and disruption in bacteria. Curr. Biotechnol. 9, 166-174.

教員紹介

中島信孝 准教授 博士(理学)

2000年 九州大学 大学院医学系研究科 分子生命科学系専攻 修了
2000 - 2001年 通商産業省 工業技術院 北海道工業技術研究所
2001 - 2014年 独立行政法人産業技術総合研究所
2014年より 現職

※この内容は掲載日時点の情報です。

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