機械系 News
東京工業大学 工学院、物質理工学院、環境・社会理工学院は、国立台湾科技大学(以下、台湾科技大)の工程学院、電資学院、応用科技学院との間で締結されている学生交流プログラムの1つである「キャップストーンデザインプロジェクトコース」を8月10~31日に開催しました。
キャップストーンは「ピラミッドの頂上の石」を意味し、学びの総仕上げとして、実践を伴うプロジェクトです。この交流プログラムは、台湾科技大の全球発展工程学士学位学程(Global Development Engineering Program : GDEP)コースに所属する、入学以来すべての講義を英語で受講している学士課程学生と東工大の学士課程学生との交流を行います。台湾台北市にある台湾科技大に約1ヵ月滞在し、両大学の教員から、対象とするプロジェクトに関する英語講義を受けた後、日台混成チームを構成して、チームワークでプロジェクトの課題を達成するメカトロニクスシステムを設計・試作(デザイン)して競技会を行う(実践)ものです。
2018年から実施しているこのプログラムは、2020年、2021年はコロナ禍で台湾渡航ができず中止となり、2022年もまだ渡航は難しいので、初めての試みとして、すべてオンラインで実施しました。
今回のプロジェクトテーマは「水の電気分解で得られる水素を用いた燃料電池で駆動される模型自動車の製作」と設定され、台湾科技大20名、東工大6名の学生が参加しました。
8月10~16日の間、参加者は燃料電池自動車の基礎とその設計について学ぶ、4人の東工大教員による英語講義各4時間をオンラインで受講しました。
講義プログラム
この後、台湾科技大の江泰槿助教(GDEP)、黃信智助教(GDEP)、黃欣萍講師(工程学院 材料系)と東工大の工学院 機械系の遠藤玄教授による3Dプリンタ試作実習を経て、5~6名のチームを構成し英語コミュニケーションによる検討・設計・試作を行いました。例年どおり台湾で開催されれば日台混成チームを作りますが、オンラインのため日台それぞれで試作することになり、台湾科技大4チーム、東工大1チームという構成となりました。
各チームに燃料電池キットが提供され、水の電気分解モードで蓄える水素と酸素のタンクを搭載できる車体を3D-CADを用いて設計し、3Dプリンタで試作しました。それとともに、燃料電池モードで直流モータにより車輪を駆動する伝達系を設計し、指定された距離を走行できる模型自動車を完成させるプロジェクトとなりました。設計、試作、性能試験、改良にかける時間は12日間でした。
最終競技会は8月31日に、両大学でオンライン同時中継により開催されました。台湾科技大GDEPの副主査である江助教の司会のもとに、全参加学生と関係教員が参加しました。
まず、各チームがそれぞれの設計の要点をプレゼンし、くじ引きにより指定走行距離10~30mが決定されました。その指定走行距離によって水素量を調整して、競技に臨みます。設計要点のプレゼンの出来と車体外観の美しさを参加学生と教員が評価するとともに、指定された走行距離と実際の走行距離の差で得点を定め、それらの総合評価でチームの順位を決定しました。
優勝は、工学院 機械系の山本拓実さん、中村亘さん、蔦伊織さん、羽原大智さん(ともに学士課程4年)、工学院 システム制御系の中村優太さん(学士課程3年)、工学院 機械系のトゥロング・デューイ・アーン(Duy Anh Truong)さん(ハノイ工科大学から東京工業大学への海外交流学生、学士課程4年)の6名からなる東京工業大学チームでした。
競技会終了後には、表彰式と修了式が執り行われ、両大学の学院長署名の修了証が授与されました。また、本プログラムをやり遂げた台湾科技大の学生にはGDEPの正規課程の授業単位が、東工大の学生には、工学院、物質理工学院、環境・社会理工学院の共通授業「国際創造設計プロジェクト」 の単位が付与されます。
本コンテストで1位をとることができたことを大変嬉しく思います。2週間でアイデア出しから完成まで行うという濃密なスケジュールのなかで、専門分野の異なるメンバーが一体となって製作に取り組んだ経験は私を大きく成長させたと思います。特に、駆動系の設計や燃料電池のテストでは初めての経験がほとんどで、走行テスト中に車体がバラバラになってしまうようなこともありました。しかし、失敗に対してたくさんの分野横断的な議論とトライアルアンドエラーを重ねたことで、より優れた機体を完成させることができ、結果につながったと思います。今回の刺激的な経験を今後の学業や研究に活かしていきたいと思います。