未来

新しいモデルの考案・改良作業は 試行錯誤の連続で知的に充実

工学院 機械系 機械コース
修士課程1年(2019年度)

山口 大輝 さん

山口 大輝さん

研究テーマを教えてください。
高分子添加溶液の直接数値計算によるシミュレーションの研究です。
研究内容を教えてください。
乱流中に少量の高分子を添加すると抵抗低減に繋がることは実験的に知られており、これはToms効果と呼ばれています。Toms効果は工業的には石油パイプラインなどに用いられていますが、そのメカニズムは未だ明らかになっておらず、今なお多くの研究者たちによって研究が続けられています。
一方で、Virkは実験から高分子添加による抵抗低減効果には限界値が存在することを指摘しました。しかし、近年ではDNA添加溶液や界面活性剤の添加でその限界値を上回る抵抗低減が得られることが報告されています。これは高濃度の界面活性剤がrod状のミセルを作り、流体の流れに非追随性を示すためと考えられます。高分子添加溶液でも引き伸ばされた高分子の形状はrod状に近くなり、非追随性を示す可能性があります。しかし、現在使用されている汎用モデルでは非追随性までは考慮されておらず、その修正が求められます。そこで非追随性を可変とした高分子添加溶液の直接数値計算によるシミュレーションの研究が行われてきました。
先行研究ではBDS-DNSという手法を用いた非追随性可変型モデルの研究が行われていましたが、BDS-DNSでは多大な計算時間が必要になってしまうことから、構成方程式というより計算時間の少ない手法で非追随性可変型モデルを考案することが私の研究です。
その研究の楽しさ・魅力を教えてください。
新しいモデルを考案するということで、毎日が試行錯誤の連続でした。上手くいったことよりも上手くいかなかったことの方が遥かに多かったと思います。その度に計算条件を変更したり、先行研究の論文に立ち返ったりしながら、モデルに改良を加えていく作業は知的に充実していました。
その研究の先にある未来・あなたが抱く夢を教えてください。
私の研究では粘弾性流体の一つの可能性を示しました。この理論通り非追随性を変化させるような高分子が発見されれば、現在最大とされている抵抗低減の限界値よりも効率よくエネルギーを輸送することが可能となります。次の目標としましては、実験と化学的な観点から高分子添加溶液の研究を行い、実際の高分子での挙動を確認できればと思っています。

※記事の内容は取材当時のものです

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