リベラルアーツ研究教育院 News
~教えるより学ぶ場を作った、東工大ライフの7年半を振り返る~
2023年3月末で東京工業大学を定年退職する、リベラルアーツ研究教育院の中野民夫教授の最終公演(ライブ)が、2023年2月28日に開催されました。
「ボクは講義したことがないから」と語る、参加型授業の実践者中野先生らしく、歌あり踊りありの「トーク&ライブ」は、対面とオンラインのハイブリッドで開催され、総勢400人ほどの大盛り上がりの公演(ライブ)になりました。
オープニングは、中野先生のオリジナルソング「美しく生きるヒント」から。ところが歌いだした途端、マイクが入っていないというハプニング。「格好良く始めようと思ったのに…」という中野先生のボヤきに会場が湧き、歌に大きく手拍子を合わせ“タミオ・ワールド”が始まりました。
「みんなで歌って踊りましょう。最後まで待たずに、ガンガン入ってきてね」
さてライブ公演は、中野先生自身のキャリアの振り返りから始まりました。「大学を卒業して博報堂に入社し30年、大学で11年、40数年間自分でもよく働いてきたと思います。リベラルアーツ研究教育院(以下、ILA)の初代院長の上田紀行さんとは大学時代のゼミ仲間で、同志社時代に東工大の教員ワークショップを頼まれた縁から公募に応募し、東工大に7年半勤務。参加型授業を通じて人と人をつなぐファシリテーションを行ってきました」
特にファシリテーターの第一人者としての中野先生の東工大での多彩な活動は、学内にもさまざまな影響をもたらしました。例えば、講義室で講義を聞くという教師と学生が“縦”につながる従来の授業スタイルから、参加者同士が“横”につながり、学生自身が主体的に考えながら“横”につながるスタイルの導入。何もないフラットな教室に目的に合わせて椅子や机をレイアウトするなど、中野先生が目指す「教えるより学びあう場づくり」が展開。理系の専門性の向上だけでなく、社会性・人間性・創造性を育むリベラルアーツの理念を実現するアクションに取り組んできました。そして、コロナ禍でも試行錯誤しながらオンラインでも参加型授業を進行し、学生がイキイキ参加できる場づくりで、東工大に貢献してきました。
「東工大生は優秀で課題は必ずやってくるし、それをシェアし合うと高いレベルでガンガン学び始める。教員は教えるよりサポートを。ただ同僚性(collegiality)という言葉があって、質の高い教育を提供するには、教員同士がちゃんとつながって創造的じゃないとね」
みんなでWork!
中野先生の授業ではおなじみのグループワーク。あるテーマについて参加者たちが話し合って、それぞれの思いを分かち合うという活動です。
今回の最終公演(ライブ)でも会場とオンラインでグループワークを実施。自己紹介や自身の自然の体験、自分にとっての至福を考えて共有するワークは、ワイワイ、ガヤガヤ、初めて会う参加者同士がつながりあう機会をつくりました。
退職後は旅、屋久島、東京を、それぞれ1年の3分の1ずつ過ごしたいと夢見る中野先生。自然と人がつながっていることを体感できる絶好の場として、17年前に拠点本然庵を作った屋久島には学生も多く訪れています。島で過ごす中で生まれたオリジナル曲「水の旅の終わり」などをコーラス隊と一緒に披露。ヨーガや瞑想などとの出会い、環境教育へとつながるご自身の海外での経験、東工大のリーダーシップ教育院(ToTAL)でも教えているマインドフルネスなど、自身のライフワークのベースについて語りました。
「大人も自然の中で遊びましょう。みんな地球の子どもなんだから」
時間厳守が鉄則のファシリテーター中野先生らしからぬ、大幅に時間がオーバーした最終公演(ライブ)も終盤に。最後は会場とZOOMからの参加者が一体となり踊って歌って、中野先生らしいステージが繰り広げられました。
♬生きているうちに、精一杯、がんばろう、楽しもう、歩こうよ、学ぼうよ。たとえ明日旅立とうと、たとえ世界滅びようと、わたしだけにできる一人分の仕事やろう♬ みんなが共感するフレーズにあふれている「生きているうちに」を大合唱し、東工大で最後で最高の3時間を共有。
そして、ILAを代表して伊藤亜紗先生と、初代ILA院長で中野先生の盟友である上田紀行先生から中野先生に贈るスピーチが披露され、最終公演を締めくくりました。
中野民夫先生、長い間ありがとうござました。