リベラルアーツ研究教育院 News

大学院生による講演会「リベラルアーツはどう人を自由にするのか」第一回を開催

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2025.01.31

開催風景

リベラルアーツ研究教育院は、2024年12月23日に大学院生による連続講演・ワークショップ「リベラルアーツは〈どう〉人を自由にするのか」の第一回を開催しました。

シリーズ初回にあたる今回は「リベラルアーツとしての男性学」と題して、ジェンダー論・男性学を専門とするこうさん(環境・社会理工学院 社会・人間科学系 博士後期課程3年生)が登壇し、「男性学」についての講演を行いました。

本企画※は、学士課程在籍の学生と専門分野を研究する大学院生の交流の場を設け、双方の交流を促すことを目的に企画されました。学生たちが大学院生の研究内容に触れる中で、「人間を自由にする“技”=リベラルアーツ」が人間をどう自由にするのか?という問いを立て、最新の研究に触れることで学生が自主的、主体的に考える機会となることが期待されています。

※本企画は一般財団法人三菱みらい育成財団による助成を受けたものです。

男性学の視点が、ジェンダー問題全体に対する理解を深める

小埜功貴さん

登壇者の小埜功貴さんは、自身の研究分野を「男性たちがポップカルチャーに触れることで、どのように自身の男らしく“ない”部分を承認しているのか?といった研究をしている」と説明しました

今回講義を担当した小埜功貴さんは、社会学の一環として「男性学」を研究しています。「理系の大学にいるので研究内容を説明すると『バネの研究(弾性)ですか?』と勘違いされることもあります(笑)」とその独特な専門性について紹介しながら、「男なのに男性アイドルが好きなの?」と言われた経験や、「男性は幼稚園の先生は目指さないほうが良い」と実習先の園長から高校生当時の将来の夢を否定された経験など、自分が男性であることを意識せざるを得ない状況がこの分野に興味を持ったきっかけになったと説明。大学で非常勤講師として教える立場でもある小埜さんは、「男性学を自分ごととして捉えてほしい。自分の人生にとって社会学や男性学はどういう意味があるのか感じとってもらいたい」と、男性学を学問のひとつとだけに捉えて欲しくないと語りました。

さらに、小埜さんは男性学について「自分は男性学を“リベラルアーツ”として捉えていて、自分のことを理解する学問、幸せになるための学問である」と説明しました。そして、男性学が誕生した背景やその変遷などを含めて、「リベラルアーツとはなにか?」「男性学とはなにか?」「男性学のとらえる『男性問題』」「リベラルアーツ(希望と応用)としての男性学」の四つのカテゴリーで構成された講義が行われました。

非男性性に気づき、承認する

開催状況

まず「リベラルアーツとは何か?」で小埜さんは、「男性学はリベラルアーツである」と捉えているとし、それは「“自分を生きる”ことに役に立つものであるから」と述べました。その理由として、旧東京工業大学学長の益一哉氏が著書『科学で未来を創造する大学へ』に記した「リベラルアーツは自由に考える技であると解釈され、学生が自主的・主体的に考える力を育成することを重視している」という本学の取り組み紹介し、小埜さん自身が男性学を通じて自分のことを理解したという経験から「リベラルアーツは自分が知りたいこと、自分を救ってくれる知見について考えること」だと語りました。そして、リベラルアーツとジェンダーの関係や、女子短大での教育理念としてのジェンダー、韓国で話題となったジェンダー問題を扱った小説を事例とした考察を紹介しました。

スライド

続いて、フェミニズム運動をきっかけに男性学が誕生した時代的・社会的背景や、抑圧層と従属層で分けられるヒエラルキーの存在といった男性を取り巻く問題の存在など、男性学の全体的な概要について詳しく説明。そして、講義の最後に「リベラルアーツ(希望と応用)としての男性学」では、希望としての男性学を提唱したいと述べ、「男性解放の手段のひとつとして、男性の“かわいい”(「男らしさ」にあてはまらないアイデンティティー)をいかに受け入れていくか、承認されていくのかが “カギ” になり、男性の生きやすさにつながるひとつのヒントになるのではないか?」とし、「男らしさ」の抑圧から解放を目指すメンズリブ運動における2000年代以降の衰退を踏まえ、「リベラルアーツ的な見方をする男性学の4期(のムーブメント)を立ち上げたい」と、今後の抱負を語りました。

第2回Science Tokyo 大学院生による連続講演・ワークショップ開催のお知らせ

「非 研究開発職という進路選択とリベラルアーツ(仮)」

日時:2025年3月5日(水) 17:30~19:30
会場:大岡山キャンパス 西9号館2階 ディジタル多目的ホール
対面×オンラインで実施予定。詳細はILAサイト イベントカレンダーに掲載予定

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