リベラルアーツ研究教育院 News
~リベラルアーツ研究教育院の授業を紹介します~
リベラルアーツ研究教育院が担当する東工大の教養科目は、多岐にわたる文系選択科目で構成され、次の3つのカテゴリーに分かれています。
・哲学や文学など、人間や文化について探求する「人文学系科目」
・法学や政治学など、社会のしくみに関わる「社会科学系」
・科学史や統計学など、文理融合的な「融合系科目」
具体的にどのような授業が行われているのか、今回は「社会科学系」の科目である「未来社会論」での授業の様子を少し紹介します。
2022年の年末に行われた「未来社会論」では、男性の育児参加の実態や仕事と育児の両立などについて考える授業が行われていました。この日は特別に積水ハウス株式会社(以下、積水ハウス)の方々をお招きし、「男性社員1カ月以上の育児休業(育休)完全取得」を推進する同社の狙いや、実際に育児休業を取得した男性社員から体験談を聞くなど、企業の育児支援の取り組みや各国の育児支援制度、仕事と育児の両立のリアルな実態などについて学びました。
「未来社会論」の授業を担当する治部れんげ准教授は、今回の授業の狙いについて、次のように説明しました。 「家事・育児・介護などの無償ケア労働を男女で公平に分担することは、ジェンダーの問題を考える上で非常に重要です。大学生のうちに、男性も家庭参加しながら働くことが当たり前な職場があることを、東工大生に知ってもらいたいと思い、積水ハウスさんをゲストにお招きしました」
学生たちは、事前に積水ハウスの制度についての説明や育児休業を取得した2人の社員の詳細な体験談をあらかじめビデオで視聴。この日は、準備してきた疑問・質問を直接本人に聞く機会を得ました。
子育てからイメージする男女の役割分担や、仕事への影響、育休中にどのくらいの給与が支給されるといったことから育休を取得して得られた気づきなど、企業の具体的な活動を見聞きする中で、学生達は働いて家庭を持つという自らの将来を想像しながら、ディスカッションに参加し、自らの意見を述べていきます。
また、積水ハウスの先進事例とは異なる日本の育児環境や、ジェンダーに関する親世代との意識ギャップの実態、国際機関の調査が示す世界の育児休暇取得事情など、“子育て”から見えてくる働き方事情を学ぶ中で、改めて現状維持バイアスが根強く残る現状に気づくことも。
「男性の育休取得率100%」という積水ハウスの取り組みは、他の賛同企業を巻き込みながら共にダイバーシティ推進の実現を目指す啓蒙活動へと結びついています。
仕事と生活・子育てのバランス良い両立を模索する時代から、仕事も生活の一部としてとらえ、双方が充実して効果を高め合えるような時代へ。「楽しさと大変さが混在する」子育て経験談から得たさまざまな情報は、学生たちの「未来社会」に、どう生かされるのでしょうか?