リベラルアーツ研究教育院 News
東工大恒例の交流イベント「ホームカミングデイ2022」が、2022年5月21日に大岡山キャンパスとオンラインのハイブリッド型で開催されました。
ILAはオンライン講座「リベラルアーツへのいざない」を開催。理工系学生にこそ学んでほしいリベラルアーツの「真髄」について、ILAでコミュニケーション論を担当する高尾隆教授と、未来社会論を担当する治部れんげ准教授によるレクチャーが行われました。
高尾教授は、インプロ(即興演劇)※と吹奏楽の研究が専門。「レクチャーをしない教師」をモットーに、ワークショップや即興演劇を取り入れたユニークな授業を行っています。
今回のレクチャーもデモンストレーションを中心に展開。インプロ俳優の清野里央さん(下記右)をゲストに、いくつかの簡単なゲームを行い、その時に交わされる言葉や表情、身体の動きによって変わるお互いの反応が、次のリアクションにつながっていく様子を紹介しました。
高尾教授は「何もないところから何かを生み出す『創造性』が重視されている今だからこそ、インプロを体験することは意味がある。それでコミュニケーション能力が急上昇するわけじゃないけど、役者同士や観客とコミュニケーションをとる即興演劇は、チームワークやリーダーシップなどの要素もあるため、学んだことをそれぞれの社会活動に生かしていくことができます」とインプロを学ぶ意義を説明。「うまくやろうとせず、オープンになる。そして相手に良い時間を与えるところから、良いパフォーマンスが生まれます。これはインプロの重要なポイントですが、まさに『利他』を考えることにつながるんです」と、さらにインプロの魅力を語りました。
続いて治部准教授は、自身のジャーナリストとしての経験を踏まえながら、専門であるジェンダーについてのレクチャーを実施。世界でジェンダー平等への意識が高まる中「男だから」「女だから」というジェンダーについての無意識な思い込みが、世代が変わってもいまだに日本で根強く存在し、あらゆる選択肢を狭めていることを指摘。議員の男女構成の比率など、ジェンダーギャップ指数ランキングが先進国の中で際立って低い日本の実態を明らかにし、それがさまざまな政策形成にも影響するとしました。
次に機関投資家がジェンダーに着目して投資先を決めることを例に挙げ、今やジェンダー視点を持つことは「経済的インパクト」が大きく、マクロなお金の動きにも影響がある。ジェンダーを考えることは個人だけではなく企業、社会において重要な課題と述べました。
一方で、日本の組織が取り組んでいる男性の育児参加を支援する施策やそれらが上手く活用されていない実態にも触れ、「ケアワークに対する男女ならびに世代意識の差が、依然として日本ではまだ大きい」とし、組織トップの理解や意識改革がその解決に欠かせないと指摘。
そして、ジェンダーバイアスを考える中で政策形成や経済的な意義以上に、「個人の尊厳を大切にすることが最も重要なのではないか」と述べ、「個人が自分の生きたいように生きることを考えるとき、ジェンダーバイアスの押しつけや決めつけをなくすことが何よりも大切」との見解を示しました。
本オンライン講座の様子はYouTubeでご覧いただけます。
高尾隆教授のレクチャー(02:45~)
治部れんげ准教授のレクチャー(01:00:17~)