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リベラルアーツ教養講座 「ワーグナー『ニーベルングの指輪』のコスモロジー」第4回開催

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2016.11.21

リベラルアーツ研究教育院の山崎太郎教授による連続講演会の第4回「『ジークフリート』―森と世界のトポロジー」が、11月16日(水)、大岡山キャンパス西5号館W541で開催されました。

4回連続での来聴者も含め、数多くの方を迎えての講座となりました。

私が演出家ならばとアイディアを語る山崎教授

私が演出家ならばとアイディアを語る山崎教授

ジークフリートは、ニーベルングの指輪の中では難しいと思われがちな作品でありながらも独自の魅力を持つこと、また、英雄が悪者を倒し美女と結ばれるという単純な“メルヘン”ではなく、むしろ、主人公の内面的成長を追う教養小説の枠組を兼ね備えていること、これをベースに講座が始まりました。

この作品が、「森と世界」「闇と光」「眠りと目覚め」の3つの対立軸から構成されていること、森(Wald)は世界(Welt)の一部ではなく、世界と対立する概念として描かれていることが講座の中で語られます。

また、ニーベルングの指輪を4つの独立した作品であるとして、別々の演出家によって上演された舞台なども紹介され、山崎教授の何層にも重なる説明とともに、来聴者は、ますますワーグナーの世界に奥深く入って行きます。

第3回までと同様、ワーグナーに詳しいファンにもそれ以外の聴講生にも充分に内容を堪能できるものとなりました。

この作品の中で、主人公の少年ジークフリートは太陽としてイメージされ、彼の育ての親であるミーメは光をいやがる闇の世界住む一族と設定されています。

その対立にジークフリートはいらだち、不満を募らせていきます。

暗く幽閉されたように感じられる森の世界から外に出ていきたいと思い始めるのです。

自分はどこから来て、どこへ行くのか、自分は一体何者なのか?

そして、彼は眠りから目覚め、森から世界へ、闇から光へ、地底から天上の高みへと向かいます。

ミーメは、言葉を教えることなく森の中でジークフリートを育てました。

これは、ある種の虐待であり、それによって、ジークフリートは暴力的にふるまうことでしか自己表現出来ない存在となっていったのだと山崎教授は説明します。

ミーメは、決して善意の存在ではなく、また、教養小説にしばしば登場して、主人公を教え導く年長の賢者でもありませんでした。

「言葉を使うことだって、悪党のお前に無理強いして、掠め取るようにして、覚えたんだ!」というジークフリートのミーメへの言葉は来聴者に強烈な印象を残しました。

そのミーメは、ジークフリートに殺害されることになります。

ジークフリートが指輪を守る大蛇を殺すことではなく、育ての親であるミーメを殺してしまうこと、さらに、そこから生まれる彼の複雑な感情こそ、大きなポイントだと山崎教授は強調します。

また、嘘を重ねる矛盾に満ちた表現を求められるミーメ役には、“性格的テノール”として究極の演技力が求められると説明します。

舞台上のミーメの演技は圧巻です。

そして、世界へ出て行ったジークフリートは、炎の岩山の頂の眠れる美女であるブリュンヒルデを、接吻によって目覚めさせます。

目覚めからハッピーエンドに向かっていく彼女の錯綜した感情が表現されていき、愛の喜びを歌い上げるふたりの長い二重唱で、今回の講座は締めくくられました。

ある聴講者は「最後の目覚めのシーンは圧巻でした。歓喜の表現は“極上”という言葉がぴったりでした」と、また別の聴講者は「この作品が20世紀音楽を思わせる先進性を持っているという点も興味深かったです」と語っていました。

講座後に笑顔で語り合う来聴者と山崎教授

講座後に笑顔で語り合う来聴者と山崎教授

次回は第5回、いよいよグランドフィナーレです。

山崎教授のどのような演出が待っているでしょうか。

開催は11月24日(木)18:00 - 21:00予定(開場 17:30)です。

テーマは「『神々の黄昏』―末世の諸相~救済のパラドクス」となっております。

開講は、第4回とは異なり、木曜日ですので、ご注意ください。

お問い合わせ先

リベラルアーツ教養講座事務局

E-mail : ila2016@ila.titech.ac.jp

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