生命理工学系 News
一般財団法人バイオインダストリー協会は7月15日、第4回「バイオインダストリー奨励賞」の受賞者に東京工業大学 生命理工学院 生命理工学系の藤枝俊宣講師(生命理工学コース主担当)と情報理工学院 情報工学系の小宮健助教を選んだと発表しました。
藤枝講師は「生体接着性オプトエレクトロニクスによる革新的光がん治療システムの創製」により、また、小宮助教は「がんから感染症まで、誰もが高精度な診断を受けられる高感度核酸検出法の開発」によりそれぞれ受賞しました。二人とも本学としては初の受賞者です。
バイオインダストリー協会によると、「バイオインダストリー奨励賞」は、2017年、同協会が30周年を迎えるのを機に、"最先端の研究が世界を創る—バイオテクノロジーの新時代—"をスローガンにスタートしました。バイオサイエンス、バイオテクノロジーに関連する応用を指向した研究に携わる有望な若手研究者とその業績を表彰しています。45歳未満の研究者個人が対象です。
贈呈式・受賞記念講演会は10月14日、国際的なバイオイベント"BioJapan 2020"で行われる予定です。
バイオインダストリー協会はバイオインダストリー分野の研究開発と産業発展を、産・学・官による連携によって、総合的に推進する組織です。
バイオインダストリー協会が発表した受賞者の研究テーマと選評、および受賞者のコメントは次の通りです。
生体接着性オプトエレクトロニクスによる革新的光がん治療システムの創製
生体接着性ナノ薄膜で被覆された、柔軟性に富む無線給電式・埋め込み型マイクロ発光デバイスを開発した。脳や肝臓、膵臓のような重要な血管や神経を巻き込む組織、構造的に脆弱な組織のがんを対象としたマイクロ光線力学療法への本デバイスの応用を企業と連携して進めており、今後も活躍が期待できる研究者である。
この度は大変名誉ある「バイオインダストリー奨励賞」を賜り誠に光栄に存じます。本研究は、医工連携体制のもと取り組んだ内容であり、様々な研究者の努力が詰まった研究成果を評価頂けたことを大変嬉しく思います。この場を借りて、共同研究者の先生方や研究室の学生の皆様に厚く御礼を申し上げます。
本研究では、体内埋め込み型の発光デバイスを開発し、新しい光がん治療システムを世界に先駆けて実証しました。特に、生体組織に安定に発光デバイスを固定するための生体接着技術を開発したことがブレイクスルーとなり、生体内に埋め込んだ発光デバイスを無線給電にて作動させることで、光増感剤(抗がん剤の一種)を持続的に活性化させることに成功しました。本研究成果は、すでに日本でも保険適用されている光線力学療法の用途を拡大させる先進的な医療技術として期待されます。
今後は、産学共同研究を強化することで、本技術の社会実装を目指す所存です。がんと闘う患者様やその御家族、また、医療従事者の方々に本技術を一日も早く届けられるよう引き続き研究開発に尽力して参ります。
がんから感染症まで、誰もが高精度な診断を受けられる高感度核酸検出法の開発
DNA、短鎖RNAなどの標的核酸を感知して、シグナルとして別の配列を持つDNAを37℃の等温条件下で高効率かつ特異的に増幅することによって、標的核酸を高感度に検出する独創的な技術を開発した。独自性の高い研究と応用への創造力は秀でており、この分野を牽引しうる研究者として活躍が期待される。
一般財団法人バイオインダストリー協会よりバイオインダストリー奨励賞を賜り、大変光栄に存じます。
DNAが生命のソフトウェアである遺伝情報を保存することはよく知られていますが、遺伝情報が処理されて生物が生きていくプロセスを理解するには、DNAのハードウェアとしての性質を解明する必要があります。バイオ情報をコンピュータで処理するのとは逆に、バイオ反応でコンピュータを創る、そのような分野融合的な視点で研究するなかで、PCRなどの増幅法が医療現場で抱える問題点を克服する、核酸検査用の等温DNA増幅反応(L-TEAM)を開発しました。
この度の受賞に際しては、自由に学際研究をさせていただいた山村雅幸教授はじめ共同研究者の方々、Tokyo Tech Research Festivalで激励いただきました渡辺治理事・副学長(研究担当)、そして産学連携をご支援いただきました学内の各部門の皆さまに、深く感謝いたします。今後も学術と産業応用の好循環を生み出すべく精進して参ります。