生命理工学系 News
東京工業大学は、修士課程修了までに全学生が留学などの国際経験を積むことを推奨しています。国際的な活動を行う際に不可欠なのが語学力です。
海外短期語学学習(TASTE Tokyo Tech Abroad Short-Term Education) は語学力を上げたい学生を支援するプログラムです。対象となる海外の大学が実施するプログラムに個人で申し込む東工大生に対し、東工大が単位の付与と奨学金の支給をし、申請などの手続きをサポートします。2019年度の夏期プログラムは6月から12月まで7か国・地域の12大学、春期プログラムは2、3月に4か国・地域の5大学を対象としています。
このプログラムに参加した学生はその後に長期留学に挑戦することも多く、将来の海外赴任など国際的キャリアを視野に入れるきっかけにもなっています。対象コースは英語のみならず、第二外国語(ドイツ語、フランス語、中国語)もあり、修了した学生には語学選択科目の単位が付与されます。
TASTEの2019年夏期プログラムには20名の学生が参加しました。そのうち3名の留学体験を紹介します。
中筋勇人さん(生命理工学院 生命理工学系 学士課程2年)
自分で行動しなければ始まらない
「英語力を向上させたい」、「夏休みを充実させたい」という2つの思いから、The University of Queensland (UQ)で1ヶ月間の英語のプログラムに参加しました。
発展的な英語力を身に付けることができましたが、それだけでなく「積極的に行動することの大切さ」も学ぶことができました。私はオーストラリアに来たのだから何もしないのはもったいないと思い、週末や平日の授業後にケアンズ、シドニーなど様々な所に行ったり、UQのクラブ活動に参加したり、専門の講義を調べて出席したりしました。
日本では大学に行って(どんなに主体的に授業に参加しても)座っているだけで時間が過ぎていくような生活をしていたのに対し、オーストラリアでは全て自分で考えて行動しなければ何も始まらない生活でした。そして、「なるほど、『生きる』ってこういうことだな。」と、毎日新しい経験をして何かを学ぶ充実した生活を過ごすことが大切だと気付くことができました。日本に帰ってからも、ワークショップやセミナーに参加したり、新たな活動を始めたりと、単調な生活に満足せず積極的に一歩踏み出すことを心がけています。
オーストラリアで1ヶ月過ごすにはお金もかかるし、失敗したり恥をかいたりもするし、たくさんの小さなトラブルが起きたりもします。それでも上で述べたような大切なことを学ぶことができたし、二度とできない経験をすることができました。もし留学などにチャレンジしようか迷っているなら、「やらない」と選択をするのは簡単だと思いますが、あえて一歩踏み出してみることが大切だと思います。
小林莉華さん(情報理工学院 情報工学系 学士課程3年)
母国語でない言語で臨機応変に話す
私は元々、海外で一定期間生活をすることに不安や抵抗がありました。しかし、大学生活を送る中で英語の必要性を実感し、留学を決意しました。
参加したプログラムは理工系大学生向けのもので、1日に50分×4コマの授業を月曜日から金曜日まで、4週間受けていました。中にはニュース記事を読み、その内容に関してディスカッションする授業や、アメリカ人にインタビューを行う課題などもあり、自分の意見を英語で表現し、相手が話すことに臨機応変に対応する必要がありました。そのため、母国語でない言語を用いてコミュニケーションをする難しさを強く実感しました。しかし、どの先生も親切で熱心に教えてくれたため、楽しく学ぶことができました。また、不自由ながらも積極的に発言するクラスメートに刺激を受け、成長することができました。
1ヶ月間アメリカで過ごし、ホームステイでアメリカ人の家庭で生活をしたことで、文化や国民性、食生活、気候などにおける日本との違いを体感することができ、価値観が広がりました。不安だった海外での生活も、アメリカ人のおおらかな性格や、乾燥していて暑くても過ごしやすい気候など、日本と比べて好きだと思える点がたくさんあり、苦労なく馴染むことができました。
また、この留学がきっかけで、より長期間の留学にも興味を持つようになりました。海外に行かなければできないような多くの経験を得ることができて、とても充実した1ヶ月間でした。
玉置千智さん(工学院 機械系 学士課程3年)
世界が広がった第二外国語の勉強
ハノーバー大学で1ヶ月間の夏のドイツ語コース(Sommerakademie am Fachsprachzentrum der Leibniz Universität in Hannover) を受けてきました。
このコースは、ハノーバー大学が実施している外国人向けのドイツ語講座で、生徒のレベルに合わせたいくつかのクラスがあります。私はドイツ語の資格であるTestDaFとDSHの対策コースに参加しました。問題の解法のレクチャーの後、多くの練習問題を解き、丁寧な解説を受けました。TestDaF等は記述式のテストのために、絶対的な解が存在しません。そのため、解説の時間では、自分を含め皆で積極的に議論しました。また、このコースの大きな特徴は、多くの任意参加の課外活動が、授業後や土日に企画されていることです。無料で他の街への遠足やスポーツに参加でき、他の国の学生と交流することができました。
ここまでは一般的な留学の説明ですが、第二外国語を本気で勉強する意味について述べたいと思います。
言語とは、学校の教科ではなく、会話のためのツールです。そして、人の思考の基盤であり、考え方そのものです。英語を勉強した際に、「日本語の〇〇は英語でなんと言うんだろう?」と疑問を持ったことがあると思います。そして、その全てに一対一の訳はありません。別の言い方をしたり、そもそも、その概念が無かったりします。もちろん、日本語にはない概念が外国語にはあります。
第二外国語を勉強することは、世界を広めるだけでなく、新たな物事の考え方を得ることができます。これは思考の多様化を導き、新たな視点を得ることに繋がります。
東京工業大学という、理工系に特化した大学ですが、第二外国語をやる意味は十分にあると思います。新たにドイツ語を始めたい人、今のドイツ語力を上げたい人に、このコースをお勧めしたいと思います。
TASTEは、大学がすべてお膳立てしたプログラムに参加するのではなく、留学に関わる手配の大半を学生自身で行うことを特徴としています。協定校等のウェブサイトを読み進め、希望するコースを選択・参加申込を行い、航空券、宿舎、ビザの手配も自分で行います。ほとんどの学生にとって海外に一人で行くのは初めての経験であり、これらの手続きは一見ハードルが高く思えますが、渡航前にこれをやり遂げることで結果的に自信がつきます。また、英語のウェブサイトでの申請につまづいてしまった時は、留学情報館スタッフが一緒に画面を見ながら手伝います。
帰国後は、報告書のほか、語学試験を受けてスコアを提出し、留学の効果を確認しています。
参加学生の多くは、派遣先大学の部活に参加したり、ホストファミリーと交流を深めたりと活動的に過ごしてきました。参加のきっかけは、派遣交換留学前の語学力向上から、とにかく海外で暮らしたいというものまでさまざまですが、知らない街で大学寮やホストファミリー宅に滞在し、現地の人として暮らす経験は、ほかに代えがたいものとなっています。
東工大留学情報館では、今後も新たな一歩を踏み出す東工大生を支援していきます。