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【研究室紹介】 長田研究室

嗅覚受容体を使った化学物質のセンサー開発

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2018.08.22

生命理工学系にはライフサイエンスとテクノロジーに関連した様々な研究室があり、基礎科学と工学分野の研究のみならず、医学や薬学、農学等、幅広い分野で最先端の研究が活発に展開されています。

研究室紹介シリーズでは、ひとつの研究室にスポットを当てて研究テーマや研究成果を紹介。今回は、嗅覚受容体などのGPCRを使った化学物質のセンサー開発を行っている、長田研究室です。

准教授 長田俊哉

生命理工学コース
准教授 長田俊哉別窓

キーワード 嗅覚受容体、フェロモン受容体、分裂酵母、GPCR

研究紹介

1. 研究概要

  • Gタンパク質共役型受容体(GPCR)は、生体内の幅広い生理機能で重要な役割を果たしている。
  • ヒトでは、GPCRは約800あると言われているが、リガンドの特定されているものは約250にとどまっている。
  • オーファンGPCRのリガンドを特定することは、生理機能を理解することや、創薬、バイオセンサーなどへの応用に欠かせない。
  • 分裂酵母は、遺伝子操作が容易であり、タンパク質の翻訳後修飾が哺乳類に近いといった特徴を持っている。

    分裂酵母を用いて、より簡単なGPCRのリガンド探索のためのアッセイ系の構築を目指す。

2. 利用しているMam2リガンドアッセイ系

S.Pombe内在のGPCR…Mam2
Mam2のリガンド…P-factor

シグナル経路の下流でGFPを発現

蛍光強度を光度計で測定することでシグナルの強弱を定量的に求める

3. 目指しているところ

  • オーファン受容体のリガンド検索を効率的に行えるアッセイ系を確立し、創薬開発への広範囲な応用を目指す。
  • 既知のリガンドに対するバイオセンサーとして働きうるアッセイ系を確立することで、フェロモンや匂いなどの化合物の検出を行う。

研究成果

  • [1] Hidaka S, Nikaido O, Kiyosaki S, Ikai A, and Osada T. (2013) Interaction between peptide pheromone or its truncated derivatives and pheromone receptor of the fission yeast Schizosaccharomyces pombe examined by a force spectroscopy study and a GFP reporter assay, Journal of Surface Engineered Materials and Advanced Technology 3 36-42.
  • [2] Sasuga S, Hidaka S, Ohkura S, Okamura H, and Osada T (2013) Gene expression of bovine vomeronasal receptors, EJBS Article ID 7-05
  • [3] Sasuga S and Osada T (2012) The reporter system for GPCR assay with the fission yeast Schizosaccharomyces pombe. Scientifica 2012: Article ID 674256
  • [4] Sasuga S, Abe R, Nikaido O, Kiyosaki S, Sekiguchi H, Ikai A and Osada T (2012) Interaction between pheromone and its receptor of the fission yeast Schizosaccharomyces pombe examined by a force spectroscopy study, Journal of Biomedicine and Biotechnology 2012:Article ID 804793
  • [5] Hakari T, Sekiguchi H, Osada T, Kishimoto K, Afrin R, and Ikai A (2011) Non-linear displacement of ventral stress fibers under externally applied lateral force by an atomic force microscope, Cytoskeleton 68:628-638
  • [6] Lesoil C, Nonaka T, Sekiguchi H, Osada T, Miyata M, Afrin R, Ikai A. (2010) Molecular shape and binding force of Mycoplasma mobile's leg protein Gli349 revealed by an AFM study. Biochem Biophys Res Commun. 391 1312-1317
  • [7] Sekiguchi H, Hidaka A, Shiga Y, Ikai A, Osada T.(2009) High-sensitivity detection of proteins using gel electrophoresis and atomic force microscopy. Ultramicroscopy 109 916–922
  • [8] Uehara H, Ikai A, Osada T.(2009) Detection of mRNA in Single Living Cells Using AFM Nanoprobes. Methods Mol Biol. 544:599-608.
  • [9] Mahichi F, Synnott AJ, Yamamichi K, Osada T, Tanji Y. (2009) Site-specific recombination of T2 phage using IP008 long tail fiber genes provides a targeted method for expanding host range while retaining lytic activity. 295 211-217

教員紹介

長田俊哉 准教授 博士(理学)

1988年 東京大学大学院 理学系研究科 生物化学専攻 博士課程修了(理学博士)
1988年 日本学術振興会 特別研究員
1989年 東京工業大学 理学部 助手
2003年 東京工業大学大学院 生命理工学研究科 分子生命科学専攻 准教授
所属学会
日本神経科学会、日本味と匂学会、日本生化学会

教員からのメッセージ

長田准教授より

研究室では匂いやフェロモンセンサーの開発をしています。匂い物質は7回膜貫通型のG 蛋白質共役型の受容体により認識されます。匂い受容体は人間では約400 種類、マウスでは1,000 種類以上の受容体がみつかっています。匂い受容体は複数の匂い分子を認識し、匂い分子も複数の嗅覚受容体によって認識されます。いわゆる多対多対応で、一種類の匂い分子に活性化された受容体の組み合わせで匂いの識別が行われています。原理的には、一つ一つの匂い分子について、どの受容体と相互作用するかを測定していけば、匂いの客観的な評価が可能となります。組み合わせを調べるといっても大変な数で、ヒトが匂いとして識別できる有機化合物は数10万種以上あると言われていて、4,000万通り以上の組み合わせを調べないといけません。さらに厄介なことに匂い物質は濃度により、受容体との相互作用が変化し、その結果濃度によって活性化される受容体の組み合わせも変化します。適度な濃度の心地よい香水もつけすぎると不快感を与える場合があるのは、香水の濃度をあげると、低い濃度では反応しなかった受容体が活性化され違う匂いとして認識されるためです。そこで我々の研究室では哺乳類の匂い受容体やフェロモン受容体を酵母で発現させ、匂い物質が酵母表面の受容体に認識されると酵母の細胞内情報伝達系を活性化して最終的に蛍光タンパク質であるGFP を発現させる系を開発中です。いわゆる酵母を用いた匂いセンサーの開発をしています。これにより、香水や食品などの匂いの客観的な評価が可能となり、病気特有な匂い検出などにより、病気の診断などへの応用も可能になります。匂いや匂いセンサーに興味のある学生の方々是非一緒に研究をしましょう。

お問い合わせ先

長田俊哉 准教授
すずかけ台キャンパス
B2棟 9階 921号室
E-mail : tosada@bio.titech.ac.jp

※この内容は掲載日時点の情報です。

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