生命理工学系 News
12月10日はアルフレッド・ノーベルの命日であり、ノーベル平和賞を除く各賞の授賞式がスウェーデンで行われます。12月6日から12日は「ノーベルウィーク」と呼ばれ、ストックホルムを中心に各地でノーベル賞を祝う様々なイベントが行われます。大隅良典栄誉教授のノーベル生理学・医学賞受賞決定を受け、ノーベルウィークに合わせて学長をはじめ、本学教職員が現地に同行しました。
ノーベルウィーク前半の様子は生命理工学系 News「Tokyo Tech ストックホルム通信(ノーベルウィーク随行レポート)12月6日~8日」をご覧ください。
ノーベルウィークも4日目となりました。
大隅夫妻は朝食時、時折、2人のテーブルに訪れる研究仲間などと言葉を交わしながら、ゆったりとした時間を過ごしていました。
午前中には、三島良直学長がノーベル博物館を訪れました。昨日、大隅栄誉教授がノーベル博物館を訪れた際にお土産の日本酒をお渡しすることができず、三島学長からお渡しすることとなったためです。博物館長はあいにく不在でしたが、博物館のスタッフにお渡しし、笑顔で受け取っていただきました。
昼には、三島学長がNHKの単独インタビューに応じました。三島学長はインタビューの中で、「今回の大隅栄誉教授のノーベル賞受賞を受け、東京工業大学としても若手研究者を支援し大隅栄誉教授のような研究者を育てていく土壌づくりを進めたい」などと話しました。
夜には、ノーベル財団とスウェーデン王立アカデミーが主催する夕食会がノルディック博物館にて開かれました。大隅栄誉教授は笑顔でグランドホテルを出発し、華やかな夕食会を楽しみました。
いよいよ本日、ノーベル賞授賞式と晩餐会が行われます。
午前中、大隅栄誉教授は授賞式のリハーサルのため、会場となるストックホルム市内のコンサートホールに向かいました。天気はあいにくの雪でしたが、大隅栄誉教授はリラックスされているように見えました。
お昼を過ぎるとグランドホテルのロビーには、三島学長をはじめ、授賞式・晩餐会に招待されたゲストが燕尾服や華やかなドレス姿で現れ、会場へ向かうバスの出発を待っていました。ゲストが出発した後、大隅夫妻はホテルを出て、授賞式の会場となるコンサートホールに向かいました。
授賞式の壇上にスウェーデン王立科学アカデミーなどの方々が揃う中、オーケストラの演奏に導かれながらスウェーデン国王をはじめとする王室の方々が入場し、続いてモーツアルトの音楽が流れる中、ステージ中央からゆっくりとノーベル賞受賞者が入場しました。大隅栄誉教授は11月に授与された文化勲章を胸にかけ、微笑みながらの入場です。
ノーベル財団チェアマンによる英語での挨拶の後、大隅栄誉教授は物理学賞、化学賞に次いで3番目にメダルと賞状を受け取ります。ノーベル財団の担当者からスウェーデン語でオートファジーにかかる業績が紹介され、いよいよ英語で大隅栄誉教授の名前が呼ばれました。大隅栄誉教授はステージ中央に進み、スウェーデンのカール16世グスタフ国王からノーベル生理学・医学賞のメダルと賞状を感慨深い表情で受け取り、握手を交わしました。
その後、パティ・スミス氏がギターとオーケストラの演奏をバックに、授賞式を欠席した文学賞受賞者のボブ・ディラン氏の名曲「はげしい雨が降る」を感情を込めて歌いました。経済学賞の授与を最後に、スウェーデン国歌の演奏の中、1時間15分ほどにわたる荘厳な授賞式が幕を閉じました。
授賞式後は、会場をストックホルム市庁舎の青の間に移して晩餐会が行われました。
晩餐会はトランペットのファンファーレでスタートし、王室の方々に続いてノーベル賞受賞者が夫婦揃ってフラワーアレンジメントに彩られた階段を下り、会場中央のテーブルに着席しました。ノーベル財団チェアマンによるスウェーデン国王陛下を称える乾杯の挨拶に続いて、スウェーデン国王によるアルフレッド・ノーベルを称える乾杯挨拶があり、歓談、食事へと進みました。途中、ダンスや歌、クラリネットやフルートの掛け合いなどが織り交ぜられたオーケストラの演奏を含めたエンターテイメント性の高いショーが、晩餐会を盛り上げていました。
ノーベル賞受賞者からのスピーチもあり、大隅栄誉教授は、司会者のスウェーデン語、日本語、英語による紹介を受けて階段上部に設置された講壇から、3分ほどのスピーチ※を行いました。自身が日本酒などのお酒を含めて酵母から様々な恩恵を受けていると話すと、会場は和やかな笑いで満たされました。また今後のオートファジー研究の発展や、共同研究者やご家族からのこれまでの多大なるサポートに対する感謝を述べてスピーチを終えました。
三島学長や共同研究者はもちろん、1,300名を超えるゲストも、この日のために準備された料理や食事の合間のコーラスなどを楽しみ、ノーベル賞受賞者を祝福しました。
※晩餐会での大隅栄誉教授のスピーチはノーベル財団サイトをご覧ください。
授賞式、晩餐会の様子は、生命理工学系 News「大隅良典栄誉教授がノーベル賞授賞式・晩餐会に出席」をご覧ください。
約4時間の晩餐会を終えた大隅栄誉教授は、午後11時半頃、グランドホテルに戻って来ました。長く、特別な一日が終わり、ホッとされた表情で部屋に戻りました。
ノーベル賞授賞式と晩餐会を終えて一夜明けましたが、この日も大隅栄誉教授は、朝から報道機関の取材を受けるなど忙しく過ごしました。
午前中、ストックホルム市内にある日本人補習校を訪問しました。大隅栄誉教授は、現地の子ども達を前に疑問を持ち続けることの重要性などを話し、「観る眼 知る喜び」と書いた色紙を日本人補習校に贈りました。
補習校で学ぶ生徒へ講演する大隅栄誉教授
続いて大隅栄誉教授は、松野博一文部科学大臣が主催する昼食懇談会に出席しました。萬里子夫人から「研究生活は決して楽なものではなく、一時は大隅の両親が大変心配した時期もあった。両親は大隅の研究生活が軌道に乗った頃に他界されたが、もし存命だったら、今回の受賞を誰より喜んだであろうと思うと、授賞式では心に迫るものがあった」というお話が印象的でした。
午後、三島学長が報道各社からのインタビューに応じ、大隅栄誉教授がたびたび発言している若手研究者への支援について、東工大の基金の枠組みを活用して、新たに大隅基金(仮称)の設立を検討していることを明らかにしました。
夕方からは王宮での晩餐会に出席するため、昨日に引き続き、大隅栄誉教授は燕尾服、萬里子夫人も着物で向かいました。
ノーベルウィークの最終日も、大隅栄誉教授は朝からスケジュールが詰まっていました。
朝には報道各社によるインタビューが行われ、大隅栄誉教授は「若い研究者を支援する基金のようなものを設立したい」と話しました。その後、ノーベルメダルと賞状の受け取りや、歴代受賞者によるサイン帳へのサイン等のため、ノーベル財団へと向かいました。
ノーベル財団が所有する1952年以降の歴代受賞者のサイン帳に名を記す
© Nobel Media AB 2016 Photo: Alexander Mahmoud
午前中、三島学長はストックホルム市内にあるアルフレッド・ノーベルの墓参りをしました。昨日まで降り積もった雪をかき分け、ノーベルの石碑の前に立った三島学長は、「今年は大隅栄誉教授にノーベル賞受賞をもたらしていただき、ありがとうございました。」とお礼を述べたそうです。
三島学長は続いて、東工大からスウェーデン王立工科大学(KTH)に留学中の小塚さん(工学院機械系 修士1年)と金森さん(生命理工学院生命理工学系 修士1年)と懇談し、留学生活を激励しました。2名とも今夏から留学しており、現地で奮闘する様子を話してくれました。
三島学長がKTH留学中の小塚さん(左)、金森さん(右)を激励
お昼には、大隅栄誉教授は、カロリンスカ研究所の副所長と昼食を共にしました。夕方には、再びノーベル財団を訪れ、ノーベルウィーク最後のイベントとなるレセプションに参加しました。
長いようで短かったノーベルウィークが終わりました。大隅栄誉教授も「何泊したっけ?」と言うほど、駆け足でしたが濃密な期間を過ごしました。グランドホテルに滞在していた多くのゲストも徐々に帰国していきました。
最後に本学の現地同行者が、大変お世話になったノーベルデスクのソフィアさんに挨拶に行きました。
大隅栄誉教授は羽田空港に到着後、萬里子夫人とともに帰国後の記者会見を行いました(ノーベル賞特設ページのノーベルレポート:帰国後の記者会見 会見録をご覧ください)。
大隅良典栄誉教授が「オートファジーの仕組みの解明」により、2016年ノーベル生理学・医学賞を受賞しました。受賞決定後の動き、研究概要をまとめた特設ページをオープンしました。