機械系 News
東工大生チームが2022年11月12日に東京都中央区日本橋でハイブリッド開催された第30回衛星設計コンテスト最終審査会にオンラインで参加し、『軌道上クレープ調理実証機「すぺ~ぷ」』の提案により奨励賞を受賞しました。
東工大生チームはISS内でクレープの調理を行うことを想定した『軌道上クレープ調理実証機「すぺ~ぷ」』を提案しました。ISS内でトルティーヤの硬い生地の上にフルーツやチョコソースをトッピングしてクレープ調理した事例はすでにありますが、「すぺ~ぷ」で提案された手法ではフワモチ食感の、スイーツのクレープとしてより適した生地を調理することができます。軌道上でのクレープ調理は重力が無い為に地上と同じ手法を利用することができません。提案された調理手法は射出成型の原理を応用しており、重力の無い軌道上でも利用することができます。加えてチームでは、提案手法によって本当にフワモチのクレープが調理可能か検証するために地上での実証実験を行うとともに、食感の定量的な評価手法であるTPAを応用しフワモチ食感の定量化にも取り組みました。
衛星設計コンテストにおいて、アイデア部門では、主に、人工衛星を利用したミッションアイデア、設計の部では、ミッションアイデアとそれを実現するための衛星の概念設計の内容を主に評価されます。審査員が理学、工学、宇宙機関を背景にしているので、その専門分野が評価される傾向にあり、各学会による受賞対象もそれに準じます。今回、アイデア部門に提出した東工大の作品は、宇宙飛行士の食事の質の向上、さらには、将来の宇宙観光や宇宙食品ビジネスの発展を視野に入れて、焼き立てでおいしいクレープを宇宙軌道上にある有人施設内で安全を確保しながら、どう実現すればよいかを、物理的原理、数値シミュレーションおよび簡易実験による解析結果を踏まえ、おいしさの定量評価法を含めた工学技術対象として、正面から捉えて、技術的に成立し得る概念提案をしたことに意義があると考えています。
栄誉ある賞をいただくことができ大変嬉しく思います。無重力下でクレープを焼くという一見馬鹿馬鹿しいことでも、チームで真剣に検討し実際に提案手法でクレープを焼き上げるところまで練り上げた熱意と説得力が評価された結果だと考えています。このアイデアにおいて最も頭を悩ませたことは、食感という感覚的なものをどう評価するかでした。授業という限られた時間の中、チームで話し合い東工大内の研究室のご協力によってTPAによって工学的に定量化することができました。宇宙工学の垣根を越えて他分野の手法を利用し私たちの提案の実現性を評価したことは、専門とする分野にかかわらずさまざまな知識を活用することの大切さを実感することができました。
「宇宙システムイニシアティブ」(旧名:宇宙システムプロジェクト)では、衛星システムとロケットシステムの2大分野をテーマとする修士課程学生向けの授業(担当教員:工学院 機械系の松永三郎教授、他)です。
衛星システムでは、「小型衛星システムとミッションアイデア」または「宇宙機のダイナミクスおよび制御」について、学生自らの発表や提案、検討を軸に、必要な知識や参考資料を随時提供しながら講義を進めています。衛星設計コンテスト、宇宙機制御コンテスト、きぼうロボットプログラミング競技会などに実際に参加して作品を製作、提出することを1つの目標としています。
ロケットシステムでは、巨大システム設計の象徴であるロケットの設計、開発および打上げ運用の概要と、エンジン開発燃焼試験、ロケット打上げ作業を、映像等を交えながら紹介します。システム設計手法、ロケットサイジング基礎、誘導制御/構造/電気/推進等の各系統について、一連のロケット設計の概念と基礎を習得することを目的としています。