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東京工業大学の学生衛星開発チームが、米国電気電子学会(IEEE)マイクロ波ソサイエティの衛星用無線機のコンペティション「エムティティ・サット・チャレンジ(MTT-Sat Challenge)」でファイナリストに選出されました。
「エムティティ・サット・チャレンジ」は、小型衛星用の無線機の設計および実装を競う大学生および大学院生のチームを対象とした世界規模のコンテストです。2020年の「フェーズ(Phase)1」では11件に、2021年の「フェーズ(Phase)2」では7件に絞られ、「フェーズ(Phase)3」では3件が採択されました。本コンペティションには、ジョージア工科大学、テキサス大学等の学生チームが参加しており、東工大のチームは世界の一流校と競い合いながらの選出となりました。また、東工大のチームは新型コロナウイルス感染拡大の影響により出席がかないませんでしたが、ファイナリスト達は1月18日(現地時間)にアメリカのラスベガスで行われた宇宙のハードウェアと無線に関する国際会議(2022 IEEE Space Hardware and Radio Conference : SHaRC 2022)において、表彰を受けました。
フェーズ3では開発費として33,000ドルの交付金が入賞チームに与えられ、衛星用無線機開発がサポートされます。最終となる「フェーズ(Phase)4」では、最も有望な提案を行ったチームに実際に無線機を搭載した小型衛星を軌道への打ち上げるチャンスが与えられます。
本学開発チームのメンバーは以下のとおりです。
本学生チームは、衛星によってあらゆる場所がつながる次世代の高速無線通信に向けて、超小型衛星に搭載可能な小型軽量の展開型フェーズドアレイ※無線機を提案しています。従来の展開型フェーズドアレイ無線機では、アンテナ搭載面を平面にするために、重く大型の展開構造が必要でした。学生チームの提案する無線機は、電気系と機械系の学生が分野を超えてコラボレーションすることで、機械的な非平面を電気的に補償し、飛躍的な小型軽量化を実現します。チームの提案は、実際のプロトタイプ無線機が示す実現性、未来を切り拓く革新性、そして学生開発チームの熱意により、世界の有名大学からの多数の応募のなかファイナリストに選ばれました。
衛星通信は、5G(第5世代移動通信システム)の次世代の高速無線通信として脚光を浴びていて活発に研究されている分野です。「エムティティ・サット・チャレンジ」の募集を見て、自分の衛星を実際に宇宙に打ち上げたいと思い申し込みました。研究を始める際は、色々苦労がありましたが、衛星の研究において経験が豊富な機械系の坂本研究室との合同チームになってから研究が急速に進むようになりました。研究分野が違う2つの研究室がコラボレーションすることで予想以上に大きいシナジー効果があり、より完成度の高い無線機の開発が可能になりました。自分の専門だけではなく衛星関連の勉強もでき、今回の「エムティティ・サット・チャレンジ」はかけがえのない経験となっています。今回ファイナリストに選ばれたことは、この研究を支えてくれた先生たちの助言、そして学生メンバーの仲間のたゆみない努力がなかったら成就できなかったと思います。この「エムティティ・サット・チャレンジ」により宇宙産業の開発や研究がもっと活発に行われるきっかけになると良いと思います。