リベラルアーツ研究教育院 News
東京工業大学が、特に優れた業績をあげた東工大関係者と大学院課程学生に贈る2022年度(令和4年度)手島精一研究記念賞の授与式を2023年3月14日に行い、リベラルアーツ研究教育院でメディア論を担当する柳瀬博一教授が『国道16号線「日本」を創った道』(新潮社)で、著述賞を受賞しました。
受賞した著書『国道16号線 -「日本」を創った道-』は、2020年に刊行。東京の都心から横浜、町田、八王子、福生、川越、柏、木更津……を330キロにわたってつなぐこの国道が、さまざまな時代を彩ってきた文学、音楽、映画などの文化に関わっているだけではなく、沿道地域は、近代の経済拠点であり中世の城が築かれた場所でもあり、昔から人間の営みに大きな影響を与えていることに注目。16号線に関する膨大なエピソードを重ね、そのユニークな存在について解説しています。
柳瀬先生は特にこの地域が三つのプレートが重なる複雑な「地形」を形成し、人間が心地いいと感じる山や谷、湿原などの豊かな自然が存在していることが、この地域に多くの人を引きつけるきっかけとなり、結果的に文化だけではなく、街を形成しさまざまな産業を生み出すことに結び付いたという仮説を立て、そのひとつひとつを詳しく掘り下げています。さらに、ジャーナリスト時代に16号線沿いの郊外型商業施設などを取材した経験や、学生時代から携わっている三浦半島・小網代の谷の保全活動などのご自身の体験などが、この本を独自の文明論として際立たせています。
このような栄誉ある賞をいただき感謝いたします。
東工大で研究する者にとって、何よりの励みになります。国道16号線は、東工大のすずかけ台キャンパスの横を通っており、その意味で東工大も16号線エリアの「住民」です。引き続き、この道から何が生まれるのか、調査研究を続けていく所存です。
※当書はリベラルアーツ研究教育院図書室で借りることができます。