リベラルアーツ研究教育院 News
リベラルアーツ研究教育院の伊藤亜紗教授が、「障害当事者がもつ身体感覚の質的解明および利他的なケアのあり方をめぐる研究」で、「第19回日本学術振興会賞」を受賞。併せて「日本学士院学術奨励賞」も受賞しました。
伊藤亜紗教授は、美学から出発し、これまで一貫して身体と言語の関係を追究してきました。とくに障害者やスポーツ選手に積極的にインタビューを行い、言葉を通して身体を当事者の身体感覚に即して捉え直そうとしたことは、伊藤氏の重要な学術的貢献です。障害を欠落と捉えるのではなく、異なる身体を通して世界を新たな眼で見つめ直そうとする伊藤教授の研究手法は、斬新かつ独自のものであり、伊藤氏が単独で切り拓いたジャンルとも言えます。障害者に関連する一連の著作は、直接に福祉を目的としていないとはいえ、障害者の世界への新たなアクセスを読者に可能にしています。その著作が多くの学問分野、さらには一般読者に大きなインパクトを与え、幅広い福祉の増進に資していることが高く評価され、このたびの受賞につながりました。
今後は「未来の人類研究センター」のセンター長として、他の学問領域と共同研究を推し進め、成果を海外に積極的に発信することで、新たな国際的展開を生み出し、同分野における若手研究者のリーダーとして、我が国を牽引するうえで中心人物となることが期待されます。
このような栄誉ある賞をいただき光栄です。受賞理由に「研究手法は、斬新かつ独自のものであり、伊藤氏が単独で切り拓いたジャンル」とお褒めの言葉をいただき、たいへん感激いたしました。しかし、わたしの研究は、自分ひとりで行ったというより、関わってくださった大勢の方々によって育てていただいたものだと感じています。インタビューに応じてくださった障害や病気の当事者の方々、未来の人類研究センターでともに議論をしてくれたリベラルアーツ研究教育院の同僚や理工系の研究者のみなさん、研究室の学生たちに、心から感謝もうしあげます。これからも、異分野や異文化との偶然の出会いに導かれながら、研究の向かう先についていきたいと思います。
日本学術振興会賞は、日本の学術研究の水準を世界のトップレベルにおいて発展させるために、創造性に富み優れた研究を進めている若手研究者を見い出し、早い段階から顕彰してその研究意欲を高め、独創的、先駆的な研究を支援することを目的に 2004 年に創設された賞です。
受賞対象者は、人文・社会科学及び自然科学の全分野において、原則 45 歳未満で博士又は博士と同等以上の学術研究能力を有する者のうち、論文等の研究業績により学術上特に優れた成果をあげている研究者となっています。
日本学術振興会賞受賞者のうち 6 人以内には日本学士院学術奨励賞が併せて授与されます。日本学士院学術奨励賞は、若手研究者を顕彰して今後の研究を奨励することを目的として、2004 年に創設されました。なお、今回東京工業大学からほかに、物質理工学院 材料系の三宮工准教授と地球生命研究所の関根康人教授が「第 19 回日本学術振興会賞」を受賞しました。
日本学術振興会