リベラルアーツ研究教育院 News
在日米軍基地をめぐる米国側の政策決定過程が初めて明らかに
2020年6月、東京工業大学リベラルアーツ研究教育院の川名晋史准教授の研究成果が『基地の消長 1968-1973―日本本土の米軍基地「撤退」政策』(勁草書房、2020年)として発表されました。この研究成果がいま各種メディアで報じられ注目を集めています。
研究内容は、『琉球新報』(1面トップ、2020年6月26日付)他の新聞で取り上げられ、『朝日新聞』の書評サイト「好書好日」(2020年8月27日付)を始めとする数多くの書評欄で紹介され、高く評価されています。
在⽇⽶軍基地、とりわけ⽇本本⼟の基地をめぐる⽶国側の政策決定過程にフォーカスした学術研究は多くない。研究者にとってその障壁となっているのは基地に関する資料やデータの制約である。周知のように、⽶軍基地に関して公開される⼀次情報は少ない。ましてそれが⽶国内部の、とりわけ国防総省や軍部の意思決定、あるいは連邦議会の⾮公開聴 聞会等にかかわるものであればなおさらである。⽶国の公⽂書に関していえば、国務省関連、たとえば基地の問題をめぐる⼤使館と本省のやり取りなどは公開されているものも少なくない。
ところが、国防総省や軍部のものとなると事情は⼤きく異なる。たとえば、核兵器の所在地を⽰すような機密性の⾼い基地関連資料は、⽂書作成から30年以上が経過しても⾮公開のままである。仮に⼀旦公開されても、それが⽶国の安全保障に重⼤な影響を及ぼすと判断された資料は再び⾮公開となる。稀に重要な資料が⾒つかっても、それだけでは到底、前後の⽂脈がわからない。僅かな痕跡を辿りながら、気の遠くなるような歴史を紡いでいくより他にない。
本研究はそこに挑んでいる。ターゲットは基地政策のキープレイヤーである国防総省と軍部の認識である。繰り返せば、それはこれまでほとんど明らかにされてこなかった。本研究は⽶国⽴公⽂書館の史料を中⼼に、⽶国の外交・安全保障政策分野の⼀次史料を収めたデータベースや、すでに刊⾏された戦後⽇⽶関係の⼀次史料集の助けを得ながら、60年代後半から70年代初頭にかけての⽶国の基地政策の決定過程をつまびらかにしたものである。
本研究の具体的な発⾒(及び⼀部含意)は次である。
(川名晋史)