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リベラルアーツ研究教育院の山元啓史教授らの研究が、じんもんこん2017ベストポスター賞を受賞

『歌ことば「橘」「梅」「桜」における関連対の抽出』

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2017.12.28

12月9・10日に大阪市立大学杉本キャンパスで開かれた人文科学とコンピュータシンポジウム「じんもんこん2017」(主催・一般社団法人情報処理学会人文科学とコンピュータ研究会)において、リベラルアーツ研究教育院の山元啓史教授らの研究が、ベストポスター賞を受賞しました。

ライトニングトークスライド

ライトニングトークスライド

受賞対象となったのは『歌ことば「橘」「梅」「桜」における関連対の抽出』と題する発表で、平安時代以来日本の伝統的な和語で和歌に用いられる歌ことばを演劇で言う主役と脇役をそれぞれ主役語と脇役語と位置づけ、従来の辞書では、語釈と和歌で構成されていた辞書記述に、脇役語を加え、当時の主役語「橘」「梅」「桜」の使用方法や意味範囲を加えると用語の使われ方がわかりやすくなるというものです。
これを現代人の先入観からではなく、コンピュータによる機械的な技法によって客観的に和歌の中から注目すべき脇役語を選び出すことに成功しました。 たとえば、主役語「橘」(一般的に夏の花と考えられている)は「昔」「香」「匂ふ」「枕」「夢」などの脇役語が現れ、それらを繋ぐと「昔の人の香りが匂い、夢枕に懐かしさを思い出される」が想像できます。 この関係は、伊勢物語の第六十段でも有名な詠み人知らずの歌「五月待つ、花たち花の、香をかげば、昔の人の袖の、香ぞする」に近い関係であることがわかります。

研究説明するホドシチェク講師

研究説明するホドシチェク講師

この方法の原理は実は言語学によるものというよりも、コミュニティ分析(人と人がどのような関係においてなりたっているのかを分析する科学)と呼ばれる統計的方法論によります。 たとえば、主役級の俳優ブラッド・ピット、トム・クルーズ、ジョニー・デップらがほぼ共演することがない一方で、脇役級の俳優はいろいろや主役級の俳優と共演し、さまざまな役割を演じています。 単語も強い印象的な意味がある語もあれば、さほど印象的ではないが、さまざまな語と結びついて、一緒にメッセージを形成する語もあります。このような語は一般的には多義語と言われていますが、多義性は他の語と結びついてその役割がはっきりすることがわかりました。

山元教授らの研究グループは、この方法の開発を通じて、言語における多義性の分析を歴コンピュータ記述による通時言語学という観点から構築しようとしています。

受賞対象となった研究は、JSPS科研費 基盤研究(C)「和歌用語シソーラスの開発と用語空間記述に関する基礎研究」によるもので、この内容はJSPS「ひらめき☆ときめきサイエンス: 目で見てわかる今の日本語、昔の日本語」でも中学生にもわかりやすく説明されています。

賞状授与式
賞状授与式

受賞スピーチ
受賞スピーチ

共同研究者のホドシチェク講師(大阪大学)は東京工業大学で工学博士を得て、現在大阪大学言語文化研究科で研究されています。今回の受賞対象のポスターはホドシチェク講師が、言語のもつ多義性をわかりやすく伝えるために創意工夫した点が評価されました。

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