生命理工学系 News
2025年2月12日午後、蔵前会館の手島精一記念会議室で、「インペリアルカレッジロンドンとの博士後期課程学生交流プログラム2023&2024参加報告会」を開催しました。
今回の報告会には、2023年、2024年に開催された「インペリアルカレッジロンドンとの博士後期課程学生交流プログラム」(以下、GFP)に参加した学生6名と田中雄二郎学長、若林則幸理事・副学長(教育担当)、関口秀俊執行役副学長(教育担当)、同プログラム主査の林宣宏副学長(国際戦略・連携担当)、同プログラムのワーキンググループから、リベラルアーツ研究教育院の猪原健弘教授、金子宏直准教授、小泉勇人准教授、2023年からコーチとして、同プログラムに参加している、環境・社会理工学院のSasipa Boonyubol 特任講師が出席しました。
報告会は、GFPのプログラム主査である林副学長の開会の挨拶で始まり、報告会の趣旨と出席者を紹介しました。続いて、プログラム開始からGFPの実施に携わってきた、金子准教授が、2018年にプログラムを開始するまでの経緯とプログラムの概要を説明しました。
東京科学大学(以下、Science Tokyo)のGFP参加者は、プログラム終了後、インペリアル・カレッジ・ロンドン(以下、インペリアル)の研究者に自らコンタクトを取り、受入を承諾された場合、1か月から3か月、インペリアルの研究室に滞在をすることができます。
2023年に東京で開催されたGFPに参加した、Science Tokyoの学生15名から、4名が2024年にインペリアルの研究室に滞在しました。今回の報告会には、そのうちの2名が出席し、自身の研究滞在について報告をしました。
工学院情報通信系博士後期課程2年の三島一晃さんは、2024年7月中旬から10月中旬までの3か月間、インペリアルの情報システム学部のiBUG (Intelligent Behavior Understanding Group)に滞在し、「表情と感情に基づいた顔画像生成モデル」の研究を行いました。
生命理工学院生命理工学系博士後期課程3年の今本南さんは、2024年1月中旬から4月中旬までの3か月間、インペリアルの生命科学部の研究室に滞在し、「東アフリカ産シクリッドの食性適応」研究を行いました。
発表の後、田中学長から、留学資金の捻出方法について質問があり、2人とも、本学学生の留学支援を行っているTazaki財団の奨学金やScience Tokyoの博士課程学生向けプログラム「総合知と癒しの次世代フロントランナー育成プログラム (Science Tokyo SPRING)」の支援金を活用したと説明しました。
インペリアルでの受入教員決定までのプロセスについての質問に、今本さんは、「インペリアルのホームページで研究者を探して、メールやオンラインミーティングで意見交換や調整を行った。思ったよりもスムーズに受入教員を見つけることができた。」と答えていました。また、三島さんは、「自分が受け入れてもらった 「iBUG」は、情報システム研究分野ではとても有名な研究室で、そこで受入れてもらえたのは本当に幸運だった」と話しました。
学生に質問をする田中学長(右)と若林理事(左)
質問に答える三島さん(左)と今本さん(右)
2024年秋にロンドンで開催されたGFPには、インペリアルから15名、Science Tokyoから13名が参加しました。5チームに分かれて、「Good Health and Well-being」というテーマに関連した課題とその解決案について、グループワークを行い、最終日に発表しました。今回の報告会には、同プログラムに参加した本学学生4名が登壇し、それぞれのチームで取り組んだプロジェクトについて発表をしました。
「Innovation/Creativity賞」を受賞したチーム1からは、環境・社会理工学院社会・人間科学系博士後期課程2年の鈴木ミユキさん、生命理工学院生命理工学系博士後期課程1年のAres Arradさんが登壇しました。2人は、チームで取り組んだプロジェクト、「光触媒を活用して、水に含まれるバクテリアや菌を消滅させ、水系感染症を撲滅する装置」について発表しました。Arradさんは、同チームのメンバーたちが、プログラム終了後も、同装置の事業化に向けて研究を続けていると話しました。また、鈴木さんは、「英語に不安があったけれど、他のメンバーに信頼され、発表の役割を与えてもらったプロジェクトが賞を受賞したときは本当に嬉しかった」と話しました。
「Collaboration」賞を受賞したチーム2からは、環境・社会理工学院社会・人間科学系博士後期課程3年のWishnu Agung Baroto さんが登壇し、チームで取り組んだプロジェクト「健康状態を感知する機能を備えたスマートトイレ」について発表しました。また、「様々な国籍や研究分野、スキルを持った学生5名が協働するGFPはとてもユニークなプログラム。たった1週間の短いプログラムだったけど、私の人生に大きなインパクトを残しました」と話しました。
参加当時、情報理工学院数理・計算科学系博士後期課程3年生だった、竹井悠人さんが最後の発表者として登壇し、チーム4で取り組んだプロジェクト「ブロックチェーンを活用した医療データ共有プラットフォーム」について発表をしました。また、発表の最後には、このプログラムに参加して得た反省や気づきについて触れ、「5日間という短期間でプロジェクトをまとめることの難しさを学んだ。特に、グループディスカッションをスムーズに進めるためには、時にはメンバーとの対立を恐れずに、反対意見を唱える勇気も必要だと思った」と話しました。
学生の発表後、プログラムで出会った参加者と今も交流を続けているという学生たちの声に、林副学長は、「今後のキャリアでもGFPで得たネットワークや経験を積極的に活用してほしい」と話しました。
報告会の最後には、田中学長が総評として、「今回の発表は医療分野に関連した発表が多かった。新大学の設立により、今後は、「コンバージェンス・サイエンス」(理工学、医歯学、情報学、社会科学を融合した領域)の分野での研究機会が拡がるので、是非活用してほしい」と話しました。
また、若林理事・副学長は、閉会の挨拶として、「東京科学大学にとって重要なパートナーであるインペリアルと長年に亘ってこのようなプログラムを開催していることを喜ばしく思う。このプログラムを通して得た、様々なバックグラウンドを持つ学生たちとの協働経験は、今後、多様化する社会で働く際に必ず役に立つと思う。今後も継続してほしい。」と話しました。
GFP2025は本年秋に東京での開催を予定されており、インペリアルと本学との学生交流がさらに深まることが期待されています。
インペリアルカレッジロンドンとの博士後期課程学生交流プログラムとは
「インペリアルカレッジロンドンとの博士後期課程学生交流プログラム」は、インペリアルのGlobal Fellows Programmeと本学リベラルアーツ研究教育院の開講する博士文系教養科目を基に設計され、2018年に共同実施を開始した、1週間のトレーニング型国際交流プログラムです。
国連が提言する持続可能な発展に向けた世界を変える17の目標SDGs(Sustainable Development Goals)から幾つかの目標をプログラムテーマとし、東京科学大生とインペリアル生による混合グループでのディスカッションや、フィールドトリップ、ポスター発表等を通して、研究者としてのリーダーシップ、学際性・コミュニケーション力を身に付けること、多分野の研究者との協働、専門外の視点の獲得、異文化交流、ネットワーク構築等を目指します。1週間のプログラム最終日にはグループでのポスタープレゼンテーションを行い、プログラムテーマに関する、優れた提案を示すことができたチームが表彰されます。
また、希望者は、1ヵ月~3ヵ月間程度インペリアルに滞在し、希望する研究室で研究活動をすることが可能です。(受入研究室は各自で探す必要があります。)
プログラム主査 からのメッセージ
林宣宏副学長(国際戦略・連携担当、生命理工学コース主担当)
Science Tokyoは、インペリアルと連携し、2018年度より「「インペリアルカレッジロンドンとの博士後期課程学生交流プログラム」を実施しています。
Science Tokyoでは「『科学の進歩』と『人々の幸せ』とを探求し、社会とともに新たな価値を創造する」をMission に掲げていますが、そのためには、専門分野における研究・専門能力に加えて、物事を総合的・国際的に捉え、新たな知見や価値をステークホルダーと共に創造するために必要な教養やコミュニケーション能力を身につけることが不可欠です。
GFPは、専門分野の垣根を越えて、異なる背景や文化を持つインペリアルとScience Tokyoの博士課程の学生が、国境や研究分野を超えて、世界規模の課題について考える合宿型の国際交流プログラムです。国際社会に認められて活躍するのに必要な知識や能力を効果的に修得するとともに、国際的なセンスを身につけることができて、さらに将来の国際連携につながるネットワーキングを得ることができる貴重な機会です。
Science Tokyoの学生だからこそ得られる、この恵まれた実りある機会を逸しないために、少しでも多くの博士課程の学生がこのプログラムに参加することを期待しています!