生命理工学系 News
11月3日、4日にアメリカのスタンフォード大学で開催された「Stanford's Health Hackathon health++ 2018(スタンフォード ヘルスハッカソン ヘルス プラスプラス2018、以下スタンフォード ヘルスハッカソン)」において、生命理工学院 生命理工学系の藤田創さん(学士課程3年)の所属するチームBEETLE(ビートル)が、総合2位を受賞しました。
スタンフォード大学で行われる、エンジニア、起業家、デザイナー、健康医療従事者など多分野に横断した参加者が、健康医療分野における重要な課題に協力して取り組む開発コンテストです。今回は、健康医療における「Affordability(医療の低価格化)」をテーマとして開催され、最終的に19プロジェクトが提出されました。
スタンフォード ヘルスハッカソン冒頭のピッチプレゼンテーションにて、ブラジル出身のメンバーが自国で起こっている薬剤耐性菌の問題を提起し、それに賛同したメンバーが参画し、本プロジェクトは生まれました。
近年、多剤耐性菌が大きな問題となっています。特にヒトに対して病原性を有する耐性菌は、その種類の特定に時間を要し、適切な処置が迅速に行えていません。
藤田さんの所属するチームBEETLEは、多剤耐性菌のDNAの抽出および増幅を行うためのデバイスの開発と、耐性菌の種類を短時間で簡便に測定するためのシステムの構築を行いました。
チームBEETLEは、スタンフォード大学(米国)、ブラジル陸軍工兵軍研究所、トロント大学(カナダ)、マクマスター大学(カナダ)の生命科学、コンピューターサイエンス、電気工学を専攻する大学生および研究者の総計5名から構成されています。藤田さんは、バイオエンジニアおよびハードウェアエンジニアとして参画し、システムのデバイス開発とビジネスモデル構築を担当しました。
デザイン思考のパイオニアであるスタンフォード大学では、近年医療分野でのニーズ同定とソリューション開発にデザインを取り込んだ、バイオデザインという概念がトレンドになっています。私はこれまで、生物学に関する研究を行う傍ら、社会学がご専門の西田亮介先生に師事してきました。文理融合の視点が求められる今回のヘルスハッカソンでは、それらの経験が活きたと感じています。引き続き試作を重ね、実用化を目指していきたいと思います。
今年の7月に韓国の韓国科学技術院(KAIST)で行われたEntrepreneurship Camp(アントレプレナーシップ キャンプ)に参加した際も、今回と同様に多国籍のチームでプロダクトデザインに取り組みました。しかし、それぞれのメンバーの知識レベルの差による齟齬や、リーダーシップの不在により、チームが「空中分解」してしまいました。今回は同プログラムでの失敗を糧にして、チーム内での役割分担の明確化と、ニーズに基づくプロトタイピングを徹底しました。その結果、多様なバックグラウンドを持つメンバーの間での相乗効果が生まれたと感じています。やはりこうした経験は、アメリカ、とりわけスタンフォード大学だからこそ実現できるものだと思いますので、来年度以降のコンペティションへの東工大生の積極的な参画を願ってやみません。