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国境を超えた人の移動と多文化共創
研究室紹介シリーズでは、ひとつの研究室にスポットを当てて研究テーマや研究成果を紹介します。今回は、留学生政策、移民政策、国際教育、開発経済などの研究を行う、佐藤由利子研究室です。
研究分野 | 留学生政策 / 移民政策 / 国際教育 / 開発経済 |
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研究キーワード | 留学生 / 高度人材 / 国際教育 / 多文化共創 |
Webサイト | 佐藤由利子研究室 |
人口減少に直面する日本社会にとって、外国人の受け入れは重要な課題です。異なる文化背景を持つ人と互いの強みを活かして協働し、相乗効果を得る(=多文化共創)ためには、どうすればよいのでしょうか?日本を理解し、日本人と他の外国人の橋渡し役となる留学生は、多文化共創実現のためのキーパーソンと言えます。
佐藤研では、留学生などの国際的人の移動が社会や組織にもたらす変化と、多文化共創を促進する社会環境について研究を行っています。
留学生は、留学先、就職先、定着先をどのように決定しているのでしょうか?図は彼らの選択に影響する要因を分析するモデルを示しています。
このモデルでは、留学生はまず、留学費用、言語習得にかかる時間、ビザ、家族の意向などの制約条件を考慮して対象国を絞り、その上で、①能力向上・発揮機会、②就労機会、③社会環境などの希望を最大限に満たす国を選択すると想定し、さらに母国と留学先国の政策的、制度的、経済的、文化的要因も、決定に影響すると捉えています。
出典: | 佐藤由利子(2016)「留学生の頭脳循環の特徴と課題-ドイツ留学生の進路選択に係る影響要因の分析と日本への示唆-」、『大学論集』、第48集、177-192頁。 |
英語が主要な国際言語となり、英語力が労働市場で高く評価される昨今、留学生獲得の優位性は、英語圏諸国の方が高い状況にあります。他方、留学生教育のコスト(日本語などの言語教育、英語による授業、生活相談などのコストに大別、時間や労力などの機会費用を含む)は非英語圏、特に英語力水準が低い国の方が高いと考えられます。
また、留学生を含む若者は、情報、刺激、雇用機会の多い大都市に集まりがちで、地方での留学生獲得は不利な状況にあります。この結果、ニューヨーク、ロンドンといった英語圏の大都市にグローバル人材が集積し、知識基盤経済が発展するのに対し、非英語圏の地方都市ではグローバル人材が集まらず、教育と産業の国際化が遅れ、経済衰退、雇用減少という悪循環が生じやすいと考えられます。地方都市でグローバル人材を獲得し、企業の国際化、経済活性化という好循環を創りだすためには、政策的支援や工夫が必要です。
出典: | 佐藤由利子(2014)「教育の国際化における地域間格差の是正策-韓国と日本の比較から-」 、『大学論集』、第45集、33-48頁。 |
佐藤由利子(2018)「韓国と日本の地方私立大学における留学生の誘致,支援の状況とコストの分担」 、『大学論集』、第50集、177-192頁。 |
佐藤研では、留学生と日本人学生が互いに協力し、国際教育、開発経済、統計、移民政策、歴史など様々な視点から学際的な研究を行っています。
※この内容は掲載日時点の情報です。最新の研究内容については研究室サイトをご覧ください。