融合理工学系 News
理論化学・計算化学によりエネルギー問題の解決に挑戦
研究室紹介シリーズでは、ひとつの研究室にスポットを当てて研究テーマや研究成果を紹介します。今回は、2023年4月に開設された量子力学に基づく原子・分子サイズのシミュレーションから反応器のシミュレーションまで、様々な手法を用いて触媒・電池・燃料電池での化学現象の解明に挑みエネルギー問題の解決に関する研究を行う、石川研究室です。
研究分野 | 理論化学 / 計算化学 / 触媒化学 / 機械学習 |
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研究キーワード | 計算機シミュレーション / エネルギー問題 / 化学反応 / インフォマティクス |
Webサイト | 石川研究室 |
当研究室は計算機を用いたシミュレーションが主な活動内容であり、ソフトウェアを用いた計算やコーディングを学ぶことができます。
当研究室では、理論化学・計算化学によりエネルギー問題の解決に挑戦します。具体的には、シュレディンガー方程式に基づき原子・分子レベルでの構造や反応性を解析、またその情報を用いて反応速度論や流体力学などのマクロスケールな手法も用います。これらのアプローチにより、触媒・電池・燃料電池などの内部で起こっている現象を詳しく解析し、優れた材料の発見などを通じてエネルギー問題の解決に貢献します。
原子・分子の構造や運動は量子力学の基礎方程式であるシュレーディンガー方程式に支配されています。したがって、この方程式を理論的に解くことができれば原子・分子の振る舞いが予測できることになります。このような考えに基づく理論・計算手法を量子化学、第一原理計算、ab initio計算手法と呼びます。当研究室ではこのようなab initio計算を用いて、エネルギー・環境問題に関連が深い触媒・電池・燃料電池を対象とした研究を行っています。
触媒反応は物質の変換が目的であり、そのためには転化率(原料がどのくらい反応したか)や選択率(どの程度の割合で目的生成物が得られるか)が重要な指標になります。これらの量を理論計算のみから予測することができれば、多数の実験を行う必要がなくなり、人的・環境負荷が軽減されます。本研究室では第一原理計算により各素反応の速度論的パラメーターを算出し、これらを用いて多数の素反応からなる速度論的方程式を解く「微視的反応速度論」に注力しています。
微視的反応速度論などにより各化合物の反応速度が求められると、物質や熱の流れを考慮することで化学反応が起こる場である反応器全体をシミュレーションすることが可能になります。このような計算は数値流体力学と呼ばれ、そこで化学反応を取り扱うことで現実的なシミュレーションが可能になります。
第一原理計算や反応速度論を用いることにより、与えられた材料が高いパフォーマンスを示すことを説明することは可能ですが、それらの知識を使って新規の材料を提案することは容易ではありません。これらを可能にするための1つの手法として、機械学習があります。当研究室では主に触媒や電池、燃料電池をターゲットとして、理論シミュレーションによりデータを生成し、それらの結果を回帰やクラスタリングにより解析したり、ニューラル・ネットワークによる新規材料の提案を行っています。
当研究室で研究対象としている計算機シミュレーションは、今後ますます重要視されてくる分野と考えます。この分野の進展をリードするような成果を、当研究室で一緒に創出していければと思っています。
※この内容は掲載日時点の情報です。最新の研究内容については研究室サイトをご覧ください。