リベラルアーツ研究教育院 News
~三味線の魅力に触れる「Shamisenology(シャミセノロジー)」を開催~

リベラルアーツ研究教育院のコリーン・クリスティナ・シュムコー准教授(音楽学・三味線)は、2026年7月27日に三味線イベント「Shamisenology(シャミセノロジー)」の第2回目を開催しました。ゲストとして長唄三味線方の杵屋勝くに晶氏を迎え、三味線の歴史や仕組みをわかりやすく解説するほか、長唄三味線の演奏会や実際に三味線に触れる体験のコーナーも実施。日本の伝統楽器の三味線の魅力に触れる機会に学内から約30人が参加しました。

まず、シュムコー先生による「日本三大囃子」(京都の祇園囃子、東京の神田囃子、秋田の花輪囃子)についての簡単な説明がありました。祇園囃子は能管(のうかん)と締太鼓(しめだいこ)、鉦(かね)だけで構成され、メロディーをほとんど持たない打楽器主体の音楽。一方の神田囃子は、メロディーを奏でる篠笛(しのぶえ)と、大小2種類の太鼓を使い、江戸風の華やかな響きを特徴とします。シュムコー先生は、実際の演奏音源を流しながら、それぞれの楽器編成や雰囲気の違いをわかりやすく解説。ゲストの杵屋氏による長唄の実演も交えながら、江戸の祭り囃子と江戸三味線が同じ美意識を共有していることを紹介しました。

杵屋勝くに晶氏(右)に稽古をつけてもらっているメンバーによる演奏も披露されました

花輪囃子は、神田囃子と同じく大小2種類の太鼓と篠笛を使うことから、神田囃子の影響を受けたのではないかとされてきました。しかし花輪囃子には、他の二つにはない“三味線”が加わっています。祭り囃子はそもそも神社に奉納する神聖な音楽であるのに対し、三味線は歌舞伎や花街など俗世の楽器とされ、両者が組み合わさること自体が非常に珍しいとシュムコー先生は指摘します。
その背景として紹介されたのが、花輪がかつて鉱山の町として栄え、江戸や上方から商人が多く訪れたことで、都市の音楽文化が持ち込まれたのではないかという説です。記録がほとんど残っていないため確証はないとしながらも、先生自身のフィールドワークを通じて浮かび上がった仮説として語られました。
花輪囃子で使われる三味線そのものは、太棹(ふとざお)や駒(こま)、撥(ばち)まで津軽三味線と同じ仕様です。ところが実際に弾いてみると、津軽三味線特有の速く力強い奏法とはまったく異なる、どこか懐かしさを感じる弾き方だとシュムコー先生は語ります。会場では、同じ秋田の演奏者が同じ三味線で津軽民謡と花輪囃子を弾き分けた音源を聴き比べ、楽器は同じでもスタイルがまったく違うことを実演。楽器そのものは土地の伝統に根ざしながら、弾き方には江戸の記憶が刻まれているという、音楽に幾重にも重なる歴史の痕跡が紹介されました。

後半は、参加者が実際に三味線に触れる体験コーナーです。杵屋氏や学生スタッフのサポートのもと、構え方や弦の弾き方を一つずつ確認しながら、花輪囃子の代表曲「本囃子」の冒頭部分に挑戦。三味線を弾く参加者と太鼓を担当する参加者に分かれ、指使いやリズムを教わりながら、少しずつ音を重ねていきました。
初めて三味線に触れる参加者がほとんどでしたが、最後には息の合った演奏になり、会場は温かい拍手に包まれてイベントは終了しました。