リベラルアーツ研究教育院 News
2018年12月1、2日に東京大学で開催された、情報処理学会じんもんこん(人文科学とコンピュータシンポジウム)2018において、社会理工学研究科価値システム専攻博士課程の平野充さんとリベラルアーツ研究教育院山元啓史教授による論文「低頻度ピッチクラスセットの2-gramパターンを用いたモーツァルトの交響曲と弦楽四重奏曲の比較分析」が学生奨励賞を受賞しました。平野さんは山元教授の指導の下、修士課程・博士課程を通して5年の月日をかけ、モーツァルトの交響曲と弦楽四重奏曲をデータ化し、ピッチクラスセットを使って計量分析を行ったところ、同じ楽曲であっても、両者のピッチクラス・パターンに微妙な差があることを発見しました。
モーツァルトは、すぐれた業績を残した偉大な作曲家です。その作曲家の同じ曲が、交響曲と弦楽四重奏曲の両方の形式で演奏されています。本当はモーツァルトは交響曲として作曲したのでしょうか、弦楽四重奏として作曲したのでしょうか。いろいろな解釈はあるかもしれませんが、実のところ、よくわかっていません。また、交響曲・弦楽四重奏の両者は質的にどう違うのでしょうか。プロの演奏家に問い合わせても、楽器編成が違うこと以上のことはよくわかっていません。
平野さんによる受賞論文のライトニングトーク
平野さんは、主観的な分析を一切交えず、楽譜から得られたデータにより、よく使われるピッチクラスセットのパターン、稀にしか使われないパターンに分け、よく使われるピッチクラスパターンを浮き立たせ、遷移パターンが交響曲と弦楽四重奏の間で有意に異なることを発見しました。この研究成果が同シンポジウムで認められ、今回の受賞となりました。
また、平野さんは、この研究をきっかけにもっと多くの音楽計量分析を行う科学者が今後増えることを期待し、学位取得後も音楽の計量分析を通して、楽曲の研究だけでなく、聞き方、楽しみ方を伝えていきたいと考えています。