生命理工学系 News

【創発的研究支援事業紹介】No. 2 藤枝俊宣 准教授

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2023.05.09

生命理工学院の教員が研究代表を務める研究課題が創発的研究支援事業に採択されました。創発的研究支援事業は、特定の課題や短期目標を設定せず、多様性と融合によって破壊的イノベーションにつながるシーズの創出を目指す「創発的研究」を推進するため、既存の枠組みにとらわれない自由で挑戦的・融合的な多様な研究を、研究者が研究に専念できる環境を確保しつつ長期的に支援する文部科学省の事業です。

採択された教員をクローズアップしてご紹介するシリーズ記事(全7回)を連載いたします。全7回のうち、第2回目は“バイオインテグレーション工学によるデジタル生体制御”の研究課題の研究代表を務める藤枝俊宣 准教授です。

藤枝俊宣 准教授

藤枝 俊宣 准教授

居室 B2-1022室
Tel/Fax 045-924-5712/045-924-5712

-まず、藤枝先生の研究テーマを聞かせて下さい。

私達のグループでは、高分子ナノ材料やバイオ・エレクトロニクスの先端技術を駆使して、未来型医療に向けた新しい医療機器の開発に取り組んでいます。具体的には、生体膜の薄さと同次元の高分子ナノシートの研究開発を中心に、デジタルファブリケーションやプリンテッドエレクトロニクスを取り入れることで生体組織と融合可能な医療・ヘルスケアデバイスの創製を目指しています。皮膚や臓器のような生体組織に対して極限まで追従可能なフレキシブルデバイスができれば、疾病に関わる生体情報の連続的な計測や、生体機能の局所的な制御が見込めるため、革新的な診断・治療技術の創出に繋がると期待されます。

-この研究を始めたきっかけを聞かせて下さい。

ロボティクス・再生医工学・情報通信技術の進展により、21世紀の医療では生体と人工物の融合(バイオインテグレーション)に基づく医療技術(例:ブレインマシンインターフェース, バイオエレクトロニック医薬)が実現しつつあります。これらの先進的な医療技術を実社会で安心・安全に利用するためには、生体特有の化学的・物理的・機械的性質に馴染む医療機器を開発し、階層的な生体構造とそのシステムを統合的に理解する必要があります。また、先端エレクトロニクスから構成されるウェアラブル・インプランタブルデバイスは、高度管理医療機器として医薬品医療機器等法(薬機法)により厳格に規制されており、社会実装に向けてはレギュラトリーサイエンスのもと開発戦略を吟味し、策定していく必要があります。このような背景のもと、私たちのグループではバイオデザイン思考に基づいて医療現場のニーズを抽出し明確化することで、それらのニーズからバックキャストされるシーズ技術として、ナノバイオ材料、デジタルファブリケーション、プリンテッドエレクトロニクスに着目しました。

-今回の創発的研究支援事業で取り組まれる具体的な研究内容を
 聞かせて下さい。

本創発的研究支援事業では、「バイオインテグレーション工学によるデジタル生体制御」という研究課題に取り組んでいます。藤枝研究室独自の技術である高分子ナノシートに生体接着技術・センシング技術・機械学習を組み合わせることで、生体物性に調和し、生体機能を計測・制御可能な「バイオインテグレーション工学」を実践します。具体的には、印刷技術(グラビアコート・インクジェット・スクリーン)を駆使して、生体物性と調和するナノシートを開発し、これにセンサ・発光素子・無線通信回路を付与することで生体貼付型の薄膜エレクトロニクスを開発します。現在までに3つのテーマが進行中です。テーマ①では生体接着性エレクトロニクスの開発と神経工学への実装、テーマ②ではバイオセンシングによる生体情報の定量化、そして、テーマ③ではオプトエレクトロニクスによる生体機能の改編・治療に取り組んでいます。生体貼付型デバイスの開発を推進することで、診断・治療から社会復帰後まで人々のQOL(生活の質)を保証する健康・医療管理システムに係る基盤技術の構築を目指します。

-今後の目標を聞かせて下さい。

本研究を推進することで、ヒトと機械の融合に向けた医療機器分野における破壊的イノベーションの創出を見据えています。私達のグループでは、先端医療機器を産業界に橋渡しするために、これまでに医療機器・素材メーカーと共同開発を展開してきた実績があります。本研究についても将来的には産業化を想定しています。近年、技術的進歩の著しいナノエレクトロニクス分野(例:低消費電力トランジスタ、有機薄膜エレクトロニクス),人工知能分野(例:機械学習,深層学習),光技術分野(例:光線力学療法,オプトジェネティクス)と本技術が融合すれば、心拍・脈波・脳波・血糖値などの生体情報をリアルタイムに管理できるウェアラブルデバイスや、生体機能の情報管理・制御が可能なインプランタブルデバイスの誕生が予想されます。さらに、これらの計測技術を通じて得られる生体情報が、各種データ解析手法にてデジタル化されれば、将来的には装着者ごとのテーラーメイドな診断・治療システムの構築や新たな医療インフラの創出にもつながると期待されます。

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