生命理工学系 News
アジア・欧州10大学の学生及び研究者を含むのべ84名が参加
本学が加盟しているASPIREリーグ※1の年次総会である「ASPIREフォーラム2019」を、7月8日から12日に東工大大岡山キャンパスで開催しました。ASPIREリーグは、アジア地域の理工系トップ大学のコンソーシアムで、アジアにおけるイノベーションハブを形成することを目的に、2009年に東工大主導により設立されました。本フォーラムはASPIREリーグの定例会として、議長校が主催することになっています。リーグ設立から10年目の節目として、議長校となる本学での開催となりました。
フォーラムは、ASPIREリーグ加盟大学から参加した学生及び副学長・シニアスタッフ・研究者に加え、近年ASPIREリーグと協力関係にある、欧州のコンソーシアムであるIDEAリーグ※2からも6名の学生を迎え、15ヵ国以上の国籍の総勢39名を迎えての開催となりました。本学からは、学生ワークショップに参加した5名の学生に加え、40名の教職員が参加し、のべ84名の参加となりました。
プログラムは、開催テーマについて理解を深め、議論する「学生ワークショップ」、各大学研究者が関連する研究成果について講演を行う「シンポジウム」、加盟大学の副学長及びシニアスタッフがリーグ活動報告や今後のリーグ活動について意見交換を行う「副学長会議」の3部で構成されています。今年のテーマである「Better Living: Innovations and Technologies to Improve Lives(ベターリビング:よりよい暮らしのための技術とイノベーション)」を通して、参加者による様々な議論や交流が行われました。
7月8日から12日まで開催された学生ワークショップは、テーマに関連した講義、研究施設へのサイトビジット、グループワークの3つの要素で構成されています。今年のワークショップの開催校となった本学からは、以下の5名の学生が参加しました。
各グループは、ワークショップのテーマをより具体的に議論するため、以下の命題から一つを選び、最終日の発表に向けて活動に取り組みました。
ワークショップの最初の講義では、本学の教員によって、上記3つの命題に関連するレクチャーが行われました。生命理工学院 生命理工学系の山田拓司准教授(生命理工学コース主担当)からは体内微生物の研究とその活用について、環境・社会理工学院 建築学系の安田幸一教授からは、バスルームデザインからみる産業デザインの歴史とあり方について、工学院 機械系の武田行生教授からは、人々とロボットの共存の在り方についての講演が行われました。講演の後、講師の研究室から博士後期課程の大学院生がチューターとして入り、環境・社会理工学院 融合理工学系の西條美紀教授のファシリテーションのもと3日間にわたって命題についてグループで議論を重ね、発表に臨みました。
サイトビジットではワークショップのテーマに基づいた最新の研究や技術に触れました。最初に訪問したNHK放送技術研究所では、8K技術や専用メガネを使用しない3D技術など、パナソニックセンター東京では、2020東京オリンピックを支える同社技術の展示や住空間とAIなどによる新たな生活環境の提案、産業技術総合研究所では、競技用義足の研究や、幼児・高齢者の家庭における事故を未然に防ぐための研究などを見学しました。
学生たちは、これらの講義や施設見学、また期間中に行われた「ASPIREシンポジウム(後述)」等で得た知見や自身の専門知識をもとに、選択した命題の実現のために、どのような技術やデザインを活用すべきか、グループディスカッションを重ねました。最終日には、そのグループワークの成果を新しいプロダクトの提案という形で、リーグ加盟大学の副学長・シニアスタッフの前で発表しました。
また、学生発表に先駆け、リーグ設立10周年を記念して清華大学のユアン・シー教授より記念講演がありました。ASPIREリーグの設立の趣旨、活動内容についての講演で、参加した学生たちは真剣に聞き入っていました。
グループ発表では、優れた発表を行ったグループに贈られる「Best Group Presentation Award(優秀グループ発表賞)」を、本学の大川さんが参加したチームが受賞しました。同グループは、「Design for Better Living(ベターリビング実現のためのデザイン)」をテーマに、ダイバーシティ社会に対応できる多様な機能を備えた、衛生的でデザイン性の高い仮設トイレについて提案しました。
ワークショップを振り返って、大川さんは、「参加者は、国籍、出身大学、研究分野など非常に多様性に富んでおり、グループワークの中でいろいろなアイデアが出ました。このワークショップで、異なるバックグラウンドを持つメンバーとの協力の大切さ、共同作業の面白さについて、改めて気付くことができました」と話しました。
個人に贈られる「Best Presentation Award(優秀発表者賞)」は、南洋理工大学のイエン・シエングリディットさん、シャルマーズ工科大学のウー・ペイユさんが受賞しました。二人は、「このワークショップは終始エキサイティングで、多様性に富んだ仲間たちから多くのことを学んだ。優秀発表者賞の受賞は、グループワークの成果です」と、約1週間を共に過ごした仲間への感謝の言葉を述べていました。
7月11日午前に開催されたシンポジウムでは、加盟大学の研究者がフォーラムのテーマに関連した技術や研究成果に関する講演を行いました。同シンポジウムには、リーグ加盟校の副学長、シニアスタッフ、学生ワークショップに参加している学生も出席しました。
本学からは、科学技術創成研究院の小池康晴教授が、「Brain Machine Interface(ブレイン・マシン・インターフェース)」というテーマで講演を行いました。人間の脳の機能をコンピュータを使って再現し、筋骨格モデルを基にしたデータ解析により、神経機構がどのように腕を制御しているかを明らかにする研究について紹介しました。
また、ASPIREリーグ研究グラントで2017年から、リーグ加盟大学の研究者と「持続可能なバイオ材料の創成を志向したタンパク質ケージの新しい精密機能化法」の共同研究を行っている生命理工学院 生命理工学系の上野隆史教授(生命理工学コース主担当)は、今までの研究交流の実績と研究成果について報告を行いました。
7月11日午後に行われた、各大学の副学長およびシニアスタッフが出席する「副学長会議」は、議長校である本学の水本哲弥理事・副学長(教育担当)による歓迎の挨拶で始まりました。各加盟大学の副学長が、各大学でのリーグ活動について報告し、今後の活動についてのディスカッションが行われました。また、今年で終了するASPIREグラントに代わり、新しく開始されるASPIRE League Partnership Seed Fund(ASPIREリーグ加盟大学間共同研究のスタートアップ支援)に応募のあった提案書の審査が行われました。これは、それぞれの加盟大学が所属研究者の経費を負担する、新しい共同研究スキームです。
また、来年のASPIREフォーラムの開催時期についても意見交換が行われ、加盟大学の授業日程を確認の上、2020年6月に開催される方向で承認されました。
議長の水本理事・副学長は、「本フォーラムで充実したディスカッションが行われたことに感謝し、2020年6月に皆様をまたお迎えすることを今から心待ちにしています」と話し、フォーラムを締めくくりました。
本学が発案し、2009年に設立された科学技術の発展と人材の開発を通してアジアにおけるイノベーションのハブを形成することを目的とした、アジア地域における理工系トップ大学のコンソーシアムです。加盟大学は、清華大学(中国)、香港科技大学(中国)、南洋理工大学(シンガポール)、韓国科学技術院(韓国)と東京工業大学の5大学。東工大は、設立当初より事務局を務めています。
デルフト工科大学(オランダ)、スイス連邦工科大学チューリッヒ校、アーヘン工科大学(ドイツ)、シャルマーズ工科大学(スウェーデン)、ミラノ工科大学(イタリア)のヨーロッパ理工系大学5大学で構成されたコンソーシアム。両リーグでは、2011年より各サマープログラムに学生の相互派遣を行っています。