融合理工学系 News

大友順一郎研究室 -研究室紹介 #16-

循環と共生に根ざしたエネルギー変換化学とシステムデザインの探求

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2021.05.21

研究室紹介シリーズでは、ひとつの研究室にスポットを当てて研究テーマや研究成果を紹介します。今回は、エネルギー変換化学とエネルギーシステムデザインの立場から、エネルギー技術の基礎研究からシステムの創成に至る、要素技術とシステム全体の融合的な研究を行う、大友順一郎研究室です。

大友順一郎 教授

エネルギーコース
研究室:大岡山キャンパス 北2号館 424号室
教授 大友順一郎別窓

構成(2021年5月21日現在):
修士課程 3名、博士課程 6名、研究補助員 1名
特別研究学生)

研究分野 反応工学 / 電気化学 / 固体イオニクス / エネルギーシステム設計
研究キーワード エネルギー変換化学 / 電解合成 / 燃料電池 / 水素エネルギー貯蔵 / エネルギーシステム評価 / 統合エネルギー工学
Webサイト 大友順一郎研究室別窓

研究室のアピールポイント

大友研究室では、新エネルギー技術の基礎研究から社会導入までを考えて研究を行っています。エネルギー変換システムの研究は、科学的な新規な事象の探求や解明と共に、グローバルな気候変動問題解決に対する社会的な要請がモチベーションになっています。私たちは、エネルギー変換に関わる化学反応や材料開発、それらの基礎的な事象に基づいたエネルギーシステムの統合化までを目指しています。固体中のイオンや電子の伝導に関わる材料開発や、界面イオン輸送と化学反応の観測を通じて、高効率な燃料電池や電解セルのような新しいエネルギーデバイス開発とシステムの提案、さらに社会導入にむけた低炭素技術の評価研究を行っています。気候変動問題の解決や、エネルギーの供給源のリスクを分散してエネルギーを持続的に供給するためには、物質の循環、技術やコミュニティの共生・共存を前提とした多様なエネルギーシステムの構築が重要です。学生の皆さんには、自由な発想で未来のエネルギーシステムについて楽しく闊達に取り組んでもらいたいと思います。

  • 研究のポイント:
  1. ・材料・反応・システムまでミクロな現象からマクロなシステムまでつなげて捉えます。
  2. ・再生可能エネルギーに基づくエネルギーと物質循環について考えます。
  3. ・技術と経済の融合的な視点から将来のエネルギーシステムについてアプローチします。
  4. ・基礎研究から技術進化・社会導入まで幅広い視点でエネルギー問題を探求します。

研究テーマ

材料・反応設計から新たなエネルギーシステムの創成を目指して

(1)新規イオン伝導体の合成とイオン・電子輸送現象の観測

固体中のイオンや電子の伝導に関わる材料開発や、薄膜合成による界面でのイオン輸送現象の解明を行っています。プロトンや酸化物イオンの高いイオン伝導度を有する材料開発や界面での輸送現象の解明を進めています。高いイオン伝導度を有する固体電解質は、燃料電池などのエネルギー変換デバイスに加え、水素を生成する触媒材料への応用を進めています。

新規イオン伝導体の合成とイオン・電子輸送現象の観測

(2)高効率燃料電池・電解セルの開発

高いプロトン伝導率を有する新規電解質材料を合成し、イオン、電子、ホール伝導性を制御することで、極めて高効率な燃料電池・電解セルの設計が可能になります。異なるイオン・電子輸送特性を有する電解質を組み合わせた積層薄膜型燃料電池により世界トップレベルの発電セルおよび電解セルの開発にチャレンジしています。

高効率燃料電池・電解セルの開発

(3)電気化学促進効果を利用した窒素・二酸化炭素還元

再生可能エネルギーを利用した電気化学促進効果による窒素と水からのアンモニア電解合成反応の検討や二酸化炭素還元への応用展開を進めています。通常の電荷移動反応に加え、触媒作用の電気化学的促進(Electrochemical Promotion of Catalysis)の効果を応用した新しい電気化学反応器の開発を進めています。また、分光法を用いた同位体分析やオペランド分光解析手法の開発も進めています。

電気化学促進効果を利用した窒素・二酸化炭素還元

(4)ケミカルルーピングによる水素生成反応と炭素循環利用

金属酸化物キャリア粒子の酸化還元反応に基づくケミカルループ法を用いた水素生成反応や二酸化炭素の活性化による炭素の循環利用の検討を行っています。また、空気電池型のシステムへの応用など、エネルギー貯蔵型の新しいエネルギー変換・貯蔵システムの開発にもチャレンジしています。

ケミカルルーピングによる水素生成反応と炭素循環利用

(5)エネルギーシステムの技術及び経済性評価

将来のエネルギー変換システムの考案や様々なエネルギーが社会普及を目指して、システム設計と経済性評価を融合した手法を開発しています。先進技術と社会を結びつけるシナリオを描き、社会導入に際する技術的課題を明示することで、材料開発やエネルギーシステム開発に向けた道筋を提案しています。

エネルギーシステムの技術及び経済性評価

研究成果/研究詳細

以上紹介した研究テーマの詳しい内容や成果についてもっと詳しく知りたい場合は、研究室のホームページや以下に示す投稿論文を参照してください(ダウンロードする場合は学内からアクセスしてください)。

研究室のホームページ:
http://www.tse.ens.titech.ac.jp/~otomolab/index.html別窓

研究成果・詳細

(1)新規イオン伝導体の合成とイオン・電子輸送現象の観測

  1. ・新規プロトン伝導材料(プロトン輸率が非常に高い材料合成に成功した事例です。)
    http://dx.doi.org/10.1016/j.jssc.2017.01.011別窓
    https://doi.org/10.1016/j.ssi.2017.04.009別窓
  2. ・無機リチウムイオン伝導体(ガラスセラミックスの構造最適化で伝導度を向上させた事例です。国内自動車メーカーとの共同研究です。)
    https://doi.org/10.1016/j.ssi.2021.115583別窓

(2)高効率燃料電池の開発

  1. ・原理的に世界最高レベルの発電効率を実現できるプロトン伝導性セラミック燃料電池(PCFC)の設計とセル作製について報告しています。
    https://doi.org/10.1016/j.ssi.2019.04.015別窓
  2. ・高効率発電を実現する積層型の新型PCFCの研究です(パルスレーザー堆積法によるセル化の事例です)。
    https://doi.org/10.2109/jcersj2.20204別窓

(3)エネルギーキャリアの電解合成

  1. ・PCFCを用いたアンモニア電解合成(触媒作用による電気化学的促進(Electrochemical Promotion of Catalysis: EPOC)の効果により非常に速いアンモニア生成速度について報告した事例です。)
    https://doi.org/10.1039/D0SE01385D別窓

(4)ケミカルループ法によるエネルギー変換システム

  1. ・ケミカルループ法によるメタン熱分解による水素生成と炭素固定に加え、二酸化炭素活性化(CO合成)について検討した研究です。
    https://doi.org/10.1016/j.cej.2020.128012別窓
  2. ・ケミカルループ法に用いる高性能酸素キャリア合成の研究です(酸化物イオン伝導を利用した酸素キャリア材料開発の事例です)。
    https://doi.org/10.1016/j.cej.2017.06.089別窓

(5)エネルギー変換技術の技術・経済性評価(技術と経済の融合研究)

  1. ・固体酸化物形燃料電池(SOFC)のコンバイドサイクルの発電性能と発電コストの解析事例です。
    http://dx.doi.org/10.1016/j.ijhydene.2017.06.031別窓

出版リスト

代表論文(最新の原著論文より:2021年5月21日時点)

  1. [1] Chien-I Li, Hiroki Matsuo, and Junichiro Otomo
    "Kinetic and Deuterium Isotope Analyses of Ammonia Electrochemical Synthesis”
    RSC Advances, 11(29)(2021) 17891–17900.  DOI:10.1039/d1ra00190f別窓
  2. [2] Hiroki Matsuo, Kenta Nakane, Yoshio Matsuzaki, Junichiro Otomo,
    "Effect of Lanthanum Tungstate Hole-Blocking Layer for Improvement of Energy Efficiency in Anode-Supported Protonic Ceramic Fuel Cells"
    Journal of the Ceramic Society of Japan, 129(3)(2021)147–153. DOI:10.2109/jcersj2.20204別窓
  3. [3] Shu Hikima, Martin Keller, Hiroki Matsuo, Yoshio Matsuzaki, Junichiro Otomo
    "Carbon-dioxide activation by methane with iron-doped barium zirconate in chemical looping cracking system”
    Chemical Engineering Journal, 417(2021)128012. DOI:10.1016/j.cej.2020.128012別窓
  4. [4] Chien-I Li, Hiroki Matsuo and Junichiro Otomo
    "Effective electrode design and reaction mechanism for electrochemical promotion of ammonia synthesis using Fe-based electrode catalysts”
    Sustainable Energy & Fuels, 5(1)(2021) 188–198. DOI:10.1039/D0SE01385D
  5. [5] Shutong Lu, Fumihiko Kosaka, Shinya Shiotani, Hirofumi Tsukasaki, Shigeo Mori, and Junichiro Otomo
    "Optimization of lithium ion conductivity of Li2S-P2S5 glass ceramics by microstructural control of crystallization kinetics”
    Solid State Ionics 362(2021)115583. DOI : 10.1016/j.ssi.2021.115583別窓

主な著作:

  1. [1] 最近の化学工学67 「進化する燃料電池・二次電池 -反応・構造・製造技術の基礎と未来社会を支える電池技術-」大友順一郎(分担・共著・取りまとめ)三恵社 2019年2月15日発行
  2. [2] 「電気化学・インピーダンス測定のデータ解析手法と事例集」大友順一郎(分担・共著)6章 第4節 p.359-371, 技術情報協会 2018年12月27日発行
  3. [3] "Energy Technology Roadmaps of Japan -Future Energy Systems Based on Feasible Technologies Beyond 2030-“ " Fuel Cell Combined Heat and Power Systems in Residential Sector” Junichiro Otomo (分担・共著), Part VII, pp.491-506, Springer Japan. 2016年6月30日発行
  4. [4] シリーズ<環境の世界>第2巻「環境システム学の創る世界」大友順一郎(分担・共著・取りまとめ)朝倉書店 2011年3月25日発行

教員からのメッセージ

  • 大友 順一郎 教授より

自由な発想で研究を楽しんでください。また、研究での失敗は、次のチャレンジの礎となります。枠にとらわれず、常識や既存の知識を疑って試してみることが必要であり、それが新しい原理やシステムの創造につながることがあります。学理の融合は様々な分野の学問を自分で体系化するので簡単ではありませんが、一見自分の専門とかけ離れている分野でも、長い目で見ればそれぞれがつながり、やがてその経験や知識が生きてくることを実感できるでしょう。学生の皆さんには、分野を問わず興味があることを是非積極的に学んでほしいと思います。

お問い合わせ先

教授 大友順一郎

E-mail : otomo@tse.ens.titech.ac.jp

この内容は掲載日時点の情報です。最新の研究内容については研究室サイト別窓をご覧ください。

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