融合理工学系 News
技術・経済と環境・社会に役立てる融合研究を目指して
研究室紹介シリーズでは、ひとつの研究室にスポットを当てて研究テーマや研究成果を紹介します。今回は、技術・経済と環境・社会の2軸で融合研究を展開している、時松研究室です。
地球環境共創コース(主担当)、エネルギーコース(副担当)
研究室:すずかけ台キャンパス G5棟 604号室
准教授 時松宏治
構成(2021年4月現在):学士 1名・修士 5名・博士 2名。
過去8年間在籍総数のべ 学士3・修士19・博士6。男18・女7。日本人10・留学生15(インドネシア 5、タイ・中国・イラン 2、マレーシア・モンゴル・サウジアラビア・エジプト各1)。短期受入等20+(EJUST, Campus Asia, TAIST, ACAP, YSEP, JSPSなど)
研究分野 | 経済性工学 / エネルギーシステム工学 / ライフサイクルアセスメント(LCA) / 資源環境経済学 |
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研究キーワード | 環境 / エネルギー / 技術 / 社会 / システム / 経済 / 持続可能な発展 |
Webサイト | 時松研究室 |
大学教員として初経歴を歩み出して9年目に突入。経産省の研究機関とシンクタンクを経た、4つ目の現職で在籍期間の最長記録を更新中。学生さんの自己実現研究室、と名付けようと思う今日この頃。学生さんは将来のビジョンや目標を持って研究室を探し、私達の研究室を見つけ、2~5年過ごします。社会的課題を自ら見出し、研究テーマを私に、これ出来るか?と持ち込んできます。そうした彼ら彼女らは次世代のリーダー。私は持ち得る経験や技能、人脈、リソースを総動員し、研究・教育・就職にサーブ。時には私の力不足も。リーダーは社会を切り拓くべく、国内外の産学官各界に活躍の場を求めて羽ばたきます。私の大事な役割は、そうしたリーダーのために、後進のリーダーを選出し、リーダー同士の自由闊達で切磋琢磨の場として研究室を提供すること。私の理想はRusso, G., “In search of the super-mentor”, Nature 447, 881 (13 June 2007, https://www.nature.com/articles/nj7146-881a)。
研究とは芸術のように、知的好奇心に駆り立てられ、楽しく、創造的、自由な活動で本来あって欲しい。若い人が感性豊かに問題を発見し、彼ら彼女らでなければ出来ない研究テーマに取り組む。これこそが大学の本源。このご時勢、「古き良き時代」の本源追求は心底容易ではありません。
「無いものは無い」研究室。あるのは学生さんの若き情熱、高い志とモチベーション、それを形にしようとする私の学生煩悩、蓄積してきた研究手法とノウハウ、エフォートだけ。研究室に実験装置が無い分、研究テーマは自由。大型予算が無い分、おカネに自由、でも、やりくりに苦労が絶えません(笑)。学生さんのテーマが読めるような予算獲りに、頭をひねっています。研究室外に色々なリソースを求めて共同研究を行っています。
教員から研究テーマを特に与えることはなく、上記の研究分野や研究キーワードを軸に学生さん自ら研究テーマを設定しています。コアタイムもなく、オフィスに来るのもゼミ以外は自由。そのゼミも今ではzoom online。研究室ウェブの卒業生testimonialに、自律が身に付く、と散見。これゆえ、単位取得と卒業肩書を与えて欲しい学生さんには、全く向かないようです。自分が持っている問題意識を研究に落とし込める、という利点があり、そうした学生さんには本研究室はピッタリ、との研究室在籍生コメントです。
融合理工学系と地球環境共創コースには、プロジェクトデザイン&マネジメントという科目があります。私達の研究室では、プロジェクトとは学生さん自身が見出した研究テーマ。それを修論や博論として成立するよう一緒にデザインし、修士2年博士3年の年限で修了するようマネジメントする。プロジェクトリーダーは学生さん、私はその責任者。打合せの日時を毎週調整し、2週間に一回程度は学生さんからの進捗報告を受け、どうやって問題を解決しようか?次どうしようか?いつ迄に何やる?この学会発表や論文執筆を目指してみる?とコミュニケーションをし続けて修了を迎えます。学生さんとのコミュニケーションが全て。学生さんとの研究は正に手作り、一期一会、唯一無二。
これまで学生さんと共に築き上げた具体的な研究テーマについては、出版リストの論文タイトルをご覧ください。環境・社会、技術・経済、という2軸で、学生さんの研究キーワードをマッピングしました。教員の価値観で狭めず、敢えて多様な視点と価値観を広く受け容れるようにしています。技術と社会の方に重心がやや寄っていますが、環境や経済の側面も多く見られます。定年まで残された14年余りで、マッピングが曼陀羅図になり、壮大な世界観と宇宙が描かれることを楽しみにしています。
本学の環境報告書 2018年では、当時活躍中の博士学生を紹介しました(http://www.gsmc.titech.ac.jp/kankyouhoukoku/2018/mokuji/kankyohoukoku2018-2.pdf)。今回は、融合理工学系らしく分野融合させている、島田佑太朗君を紹介します。
彼は修士課程から本学へ。地球環境共創コース初の早期修了、現在エネルギーコースの博士課程1.5年経過、今春からJSPS-DC研究員。彼のコアは機械熱工学で、機械いじりで学部時代に受賞した程のエンジニア。産業技術総合研究所との共同研究機会を得て、バンコクの地下水流れを利用した地中熱ヒートポンプが研究対象。地中熱ヒートポンプとは、エアコンの室外機が地下数~数十メートルにある空調システム、とご理解下さい。バンコクのチュラロンコン大学や地質博物館での実機建物の実験設備で、彼は実験データ取得を行いました。彼の目覚ましい活躍は、修士課程時代に、タイ国政府鉱物資源局で招待講演を行う、で端的に表されています。
彼の融合スタイルは、この図の通りです。ヒートポンプという機械熱工学から、地下に向かっては、地中・地下水という理学(水文学)。地上に向かっては、建物空調という建築熱環境、さらにはヒートアイランドのような都市・街区熱環境まで、研究展開を模索しています。こうした広い視野を持った上で、経済性工学やライフサイクルアセスメントの評価技法を駆使して、地中熱ヒートポンプの技術評価を行おうとしています。
学生さんは、自らの志から目標設定をし、研究成果を挙げています。過去平均すると、査読付き論文を、修士課程でも一人1本、博士課程だと3本程度、執筆しています。T2R2に表示される時松以外の筆頭論文は、全て学生さんによるものです。Energy, Applied Energyなどトップジャーナルも10本近くあります。
人を学生さんと読み替えて下さい。学生さんと接していると、私の頭の中を過ぎる名言です。
(山本五十六)「やってみせ、言って聞かせて、させてみせ、ほめてやらねば、人は動かじ。」
(武田信玄)「人は石垣、人は城、人は堀、情けは味方、仇は敵なり」
(詠み人知らず)「学生の、学生による、学生のための研究室」
本稿が読みやすいと思われたら、それは全て学生さんのお蔭。彼・彼女ら(奥津朋巳、島田佑太朗、廣瀬梨乃)の的確なアドバイス、草稿へのコメントに心から感謝。
※この内容は掲載日時点の情報です。最新の研究内容については研究室サイトをご覧ください。
※2022年5月27日 10:20 受賞記事のリンクを追加しました。
※2022年4月27日 16:00 研究室所属学生の受賞記事のリンクを追加しました。