融合理工学系 News

野原研究室 ―研究室紹介 #1―

翻訳学からコミュニケーションを考える

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2017.01.27

融合理工学系では、化学工学、機械工学、電気・通信工学、土木工学、生物工学、さらには環境政策・計画学、応用経済学、社会学、翻訳学、応用言語学までを包含した広い分野を融合し、異なる専門分野をもつ教員が相互の専門性と多様性を尊重しつつ、様々な学問領域を社会問題の解決という観点から結びつけた超域的教育を推進しています。

研究室紹介シリーズでは、ひとつの研究室にスポットを当てて研究テーマや研究成果を紹介。今回は、翻訳理論、科学技術コミュニケーション、科学とアートなどの研究を行う、野原研究室です。

教授 野原佳代子

地球環境共創コース・エンジニアリングデザインコース
研究室:大岡山キャンパス 西1号館 202号室
教授 野原佳代子別窓

構成員(2020現在):博士課程 3名、修士課程 12名、学部生 3名、特任講師 1名、研究員 1名、教務支援員 1名、事務支援員 1名

研究分野 翻訳学・言語学 / 科学技術コミュニケーション / デザイン教育 / サイエンス&アート
Webサイト 野原研究室別窓

研究室のアピールポイント

学生個々人が自ら気づき関心を持ったテーマで研究しています。海外インターンシップ枠、美大やデザイナー、メディア編集等とコラボの機会がたくさんあります。

また、通常のゼミに加え、美味しいお茶とこだわりのお菓子をいただく「お茶会」が時折開かれます。お茶を飲みながら、ああでもないこうでもないと科学やアート、ことばや人間を語る時間と空間こそ、本来の「大学」の姿だと考えています。肩の力を抜き談笑する中からも、相手の人柄や真意を汲み取る、自然形の“翻訳”能力が涵養されてくるかもしれません。

研究室のアピールポイント

研究室のアピールポイント

研究室のアピールポイント

研究テーマ

翻訳学

翻訳学

「翻訳」を研究対象とし、何らかの法則性や史実を見つけたりそこから人や文化について真理を探ったりする分野です。

翻訳は、単なることばの置き換えではなく、文化や歴史、状況、目的に即した記号変換です。例えば、観光マップのようなものは機能がはっきりしていて意味を特定しやすいですが、しかし人のコミュニケーションは普通もっと複雑であり、相手の意図を読み取りリアクションを想定するのは容易ではありません。こうした広い意味でのコミュニケーションプロセス全体を「翻訳」ととらえ、探索し理論づけていく分野です。言語もアイコンも、ヒトの服装も使うアロマも、「何も言わないこと」ですら、何らかの意味を持っています。

最近では、新しい機械翻訳システム、高齢者のコミュニケーション、ヒト×ロボットのコミュニケーション…など、翻訳学をベースとした新しい研究課題に学生たちとチームを作って取り組んでいます。

科学技術コミュニケーションと海外派遣

科学技術コミュニケーションと海外派遣

翻訳の理論をベースにした研究の一つに、科学技術コミュニケーションがあります。科学技術を理解することは、生活の質の向上や危機管理にもつながることから、高度技術文明社会のリテラシーの一つにもなっています。科学技術を伝え、その方法を考えるにあたって記号間翻訳は有力な手立てとなり、研究と社会、ビジネスの連携を考えることにもつながります。科学技術コミュニケーションの本場であるイギリスへ、学生を短期派遣する海外インターンシップ・プログラム(2単位)を2005年から手がけています。ロンドン科学博物館、英国王立研究所、POST(英国議会科学技術政策室)、気候変動を産学連携で研究するWalker Institute等の機関へ毎年10~15名の学生を派遣しています。

科学技術コミュニケーションと海外派遣

科学技術コミュニケーションと海外派遣

サイエンス×アート

サイエンス×アート

2009年から東工大サイエンス&アートLab Creative Flowプロジェクト別窓、その発展形として2017年よりDeep Modeプロジェクト別窓を行ってきました。テクノロジーと人の思い・感覚を、アート思考、記号間翻訳を通して出会わせる「つなぎめ」を担う。議論を作り世論を刺激する素敵なアーティスト、デザイナー、編集者、クリエイターたちと活動しています。STEAM(Science科学、Technology技術、Engineering工学、Mathematics数学、Arts 芸術)教育が少しずつ注目される中で、武蔵野美術大学、ロンドン芸術大学セントラル・セントマーティンズ校と連携して授業や共同研究、学生交流を行っています。学生たちのやわらかな発想で、多彩な研究論文が生まれています。

サイエンス×アート

サイエンス×アート

文理融合の必要性がとかくいわれる時代ですが、関係を築くには、真ん中にファシリテーターやキュレーターの存在が要ると考えます。異分野間コミュニケーションの「つなぎ」整備が不可欠であり、それを担う学問分野が「翻訳学」です。科学技術とアート間だけでなく、アナロジーとしては例えば技術移転に必要な国際的文脈をふまえたものごとの読み替えも、「翻訳」です。そうした立場から、東工大らしい翻訳研究を探求していく研究室でありたいと思います。

出版リスト

代表論文(抜粋)

  • [1] 野原 佳代子「ポピュラー小説の翻訳スタイルと語りのシフト」『物語研究』19. 2019.
  • [2] Kayoko Nohara, Michael Norton and Eriko Kawano, “Imparting Soft Skills and Creativity in University Engineering Education through a Concept Designing Short Course.” International Journal of Engineering Education, Vol.33, No.2(A), pp.538–547, 2017.
  • [3] 野原 佳代子, 仲矢 史雄, 中山 実「戦後の理科教材の翻訳と編纂に見られる早期科学リテラシー教育について」『翻訳研究への招待』vol.13, pp. 29-52, 5. 2015.
  • [4] 野原 佳代子, 川野 江里子「サイエンス&アート/デザインを利用した理工系人材のための創造性教育」『工学教育』vol.63-1, pp. 88-94, 1. 2015.
  • [5] 野原 佳代子「理工系学生の国際性とコミュニケーションデザイン力のためのサイエンスカフェ活動効果」『工学教育』vol.59-2, pp. 79-84, 3. 2011.

主な著書(抜粋)

  • [1] 眞田 治子・野原 佳代子(共編著)『大学生のための実用日本語表現ドリル』三省堂 2019.
  • [2] Kayoko Nohara. Translating Popular Fiction: Embracing Otherness in Japanese Translation. Peter Lang: Oxford. 2018.
  • [3] 三島 聡, 野原 佳代子 他『裁判員裁判の評議デザイン 市民の知が活きる裁判をめざして』日本評論社 9. 2015.
  • [4]野原 佳代子 『ディスカッションから学ぶ翻訳学 トランスレーション・スタディーズ入門』三省堂 2014.
  • [5]梶 雅範, 西條 美紀, 野原 佳代子『科学技術コミュニケーション入門』培風館 2009.

教員からのメッセージ

野原教授より

言語、翻訳、コミュニケーション、サイエンス&アート、メディアに興味のある人、お茶を飲みながら議論したい人、ジャズ好きな人、ノハラカフェに歓迎です。

教員からのメッセージ

お問い合わせ先

教授 野原佳代子
E-mail : nohara.k.aa@m.titech.ac.jp

更新日:2020.09.04

 ※ 2020年9月4日 本文の内容を一部更新しました。
※この内容は更新日時点の情報です。最新の研究内容については研究室サイト別窓をご覧ください。

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